第100話 謎の贈り物
2025年3月21日(金)
卒業式の翌日、美久は一人でアパートに帰った。
玄関前に、大きな段ボール箱が置かれていた。
「何これ?」
宅配便の伝票はない。差出人の記載もない。
重い。かなり重い。
中を開けて、美久は息を呑んだ。
現金。
札束が、きれいに並べられている。
「え...え...?」
震える手で数えてみる。
500万円。
猫カフェの開店資金として、十分すぎる額だった。
箱の底に、和紙に書かれたメッセージがあった。
古い筆で、丁寧に書かれた文字。
『夢の実現のために。 あなたの愛情に応えて。 愛を込めて - 町のみんなより』
さらに、小さなものが2つ。
祢古町の地図のコピー。最初にもらったもの。
そして、小さな鈴。祖母からもらった鈴と、まったく同じデザイン。
「まさか...」
美久の頭が、情報を処理しきれない。
これは何?
誰が?
どうやって?
でも、心の奥では分かっていた。
祢古町のみんなからの贈り物。
地下に避難した、愛すべき仲間たちからの支援。
「でも、どうやって...」
科学的には説明できない。
でも、愛情の力なら説明できる。
種族を越えた絆の力なら。
美久は、現金を抱きしめて泣いた。
一人じゃない。
支えてくれる仲間がいる。
夢を実現する責任がある。
みんなの想いに応えなければ。
■両親への報告
2025年3月22日(土)
美久は、両親に電話をかけた。
「猫カフェ、開くことにした」
「え?でも、資金は?」
「...奨学金の返済免除になったの」
嘘だった。
でも、本当のことは言えない。
「祢古町の猫人間からの送金です」なんて。
「そう...それなら...」
両親も、美久の決意を感じ取ったのか、反対しなかった。
「でも、失敗したら就職活動を再開しなさい」
「分かった」
美久は約束した。
でも、心の中では誓っていた。
絶対に成功させる。
みんなの想いを無駄にするわけにはいかない。
■夢での確認
2025年3月22日(土)深夜
その夜、美久は特別な夢を見た。
地下の大広間に、祢古町のみんなが集まっている。
「美久お姉ちゃん、箱は届いた?」
子猫が嬉しそうに聞く。
「あれ、みんなが?」
美久が聞き返すと、黒猫が答えた。
「...さあ、どうかな」
意味深な笑み。
「でも、君を応援したい気持ちは本物だよ」
「どうやって現金を?」
「愛情には、物理法則を越える力がある」
ミユキが神秘的に微笑む。
「細かいことは気にしないで」
「大切なのは、その想いに応えること」
茶トラ青年も頷く。
「みんなの夢を背負って、頑張って」
美久は、夢の中でみんなに抱きついた。
温かい。本当に温かい。
これは夢なのか、現実なのか。
もう、どちらでもよかった。
大切なのは、この絆だから。




