買い物 2
現在、僕は買い物袋を肩に掛けて龍燈さんと手を繋いで歩いている。・・・そう、手を繋いでだ。さっき、龍燈さんに「手を繋いで温めてください」と言われたとき、僕は”寒くない?と言ったところは足の方なんだけどな”と言う思いと手を繋いで買い物にいった場合起こりうる騒動を思い浮かべ、必死に説得したが、「じゃあ・・・腕を組んでください。」と言われ、結局手を繋いで歩くことになった。
「ふふ、龍海さんと手を繋いでの買い物。楽しいです。・・・周りから見たら恋人同士に見えるのでしょうか。・・・・・いずれ本当にそうなりたいですね。」
龍燈さんがなにか言っていたが僕は反応することができなかった。何故か。それは・・・龍燈さんの握っている手に集中していたからだ。彼女の手はとてもしなやかで、小さくて、少し力を込めたら砕けてしまいそうな感じがした。別にこれは龍燈さんの手が脆いというわけでも、僕が馬鹿力なわけでもない。ただ、ガラス細工のような雰囲気ということだ。
そんな事をつらつらと考えていながら龍燈さんと歩いていたら、前からスマホを見ながらイヤホンをつけ音楽を周りにまで聞こえるほど流している男が自転車に乗って爆走してきた。龍燈さんも僕もその男には気がついていたが進行方向からずれていたため気にしないでいたのだが、その自転車が急にバランスを崩し僕たちのいる方。つまり、龍燈さんの方に向かってきた。
「危ないっ!!」
通行人の誰かが叫び、龍燈さんは驚いて固まってしまった。
ドンッ
SIDE龍燈 彩
今日は龍海さんとお出かけです!!自分でも気に入っている服を褒めてもらったうえ、一緒に手を繋いで歩いています!はぁ、ここは天国でしょうか。気のせいか、昨日通った道が薔薇で囲われているかのように思えます。・・・しかし、龍海さんに話しかけても、返してくれません。ずっと、「慎重に。慎重に。」と小声で言っています。・・・・・何に慎重になるのでしょうか?ハッ!もしかしたら私との関係ですか!?私との関係なら、もっと積極的になってもいいんですよ。
そんな事を考えていたら、80mくらい先にスマホを見ながら、イヤホンをつけ自転車を物凄いスピードで走らせている人がいます。危ないですが、避けなくてはいけないほど進行方向にいないので別にいいでしょう。それより、龍海さんの手!男の人とは思えないほど瑞々しくハリがあります。あぁ、ずっと握っていたいです。
「危ない!!」
・・・えっ!?気がつけば目の前に先程の自転車が迫っていました。今ならまだ避けられますが、体が恐怖で動きません。・・・もう少し幸せな時間を過ごしていたかったです。
ポスッ。
え?
ドンッ!!
恐る恐る目を開けると、私は龍海さんの胸に引き寄せられ、抱かれていて、自転車は私がいたすぐ後ろのガードレールにぶつかって壊れています。
「た、た、龍海さん。」
私が震えながら龍海さんの名前を呼ぶと
「・・・間に合って良かった。龍燈さん、怪我はない?」
と、あのとき怪我をした男の子の治療をしたときと同じほほ笑みで聞いてきてくれました。
SIDE滝野瀬 龍海
自転車が龍燈さんにぶつかりそうになったとき、僕は間一髪のところで彼女の握っていた手を引き胸に抱き寄せた。・・・手を握っていたのだからもう少し早く助けられたのではないかって?僕も少し驚いて固まってしまってそれで助けるのが遅くなってしまったのだ。龍燈さんには怖い思いをさせちゃったかな。
「た、た、龍海さん。」
龍燈さんの方を見ると少し震えている。・・・何故か頬も少し赤くなっている。
「・・・間に合って良かった。龍燈さん、怪我はない?」
僕が聞くと、龍燈さんは目に液体を溜め
「怖かったです。私、もう、死んじゃうのかなって。幸せな時間は、もう終わりなのかなって。」
そして、堤防が決壊してしまったのか目からポロポロと真珠のような液体を流し始め、僕に抱きついてきた。僕は彼女を離すことはできず、公衆の面前でただ、彼女の背中を擦っていた。
「・・・龍海。君は一体何をしているんだい?」
聞き覚えのある声に振り向くと、自転車暴走男を踏んづけた青年がいた。
「響。丁度いいや。龍燈さんが落ち着くまで客間を貸してくれない?」
できれば会うのは避けたかったけど、背に腹は代えられない。
「いいけど・・・ちゃんと理由を話してよ。あぁ、この男の事は周りの人から事情聞いてあるから今から警察に突き出してくるよ。道路交通法で罰金とか払うんじゃないかな?」
僕は響に「ありがとう」と言ってから彼に客間まで案内してもらい、「ここであまりいちゃつかないように」と余計な言葉をもらってから龍燈さんをソファに横に寝かせた。そして、離れようとしたら龍燈さんに手を掴まれていることに気づき離れることができなくなってしまった。
僕が正座で龍燈さんの傍に座ってからどのくらいが経っただろうか。龍燈さんは恐怖と泣きつかれたことによって寝てしまっている。なのに、手を握る力はかなり強く、解くことができない。そんな中、2人だけの空間の静寂を打ち破るものが突如現れた。
「たっだいま~!響〜。いないの〜?あれ?この靴は・・・龍海のだ!!」
そんな声が聞こえた数秒後、ドタドタという音を廊下に残して声の持ち主が現れた。
「龍海!!・・・誰その女!!!」
相変わらずの言動にため息をつきながらも答えた。
「彼女は龍燈さん。・・・開口一番が「誰その女!!」はないんじゃないかな。奏。」
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梟 森。




