第二十三歩 毒刃と雷刃
《アレストデュエル》
《3》
《2》
《1》
《Well, kill or be killed!》
おいまてこら、物騒な文章出すな。実際そうなんだが!
「チッ、アーク!アル!殺るしかねぇぞ」
「そのようだなぁ」
「ハッ、最初っからそのつもりだぁ!!死ねやぁ!」
そういい、アークと呼ばれた奴が片手剣で突進してくる。盾も一応持っているな。大戦斧を取り出して、間合いに入る瞬間に当たるように「ダウンスイング」を繰り出す。
奴はもちろんガードするだろう。しかし、このアーツは。
「がァッ!!」
鈍い金属音が響きわたる。このアーツ、ガードしていても吹き飛ばしが発生する。つまり奴は吹っ飛んだ。少しよろめきつつも即座に追撃を始める。
「させるかよぉ!!《ファイアプリz「忘れて貰っては困る」ぐぁっ!!」
ガイが魔法を使おうとするが、ソウが投擲したナイフが右手に刺さる。
「てめぇっ!こんな・・・こと・・・し・・・て・・・」
「少し静かにしてるといい。安心しろ、ただの睡眠毒だ・・・まず一人」
悠々と近づき、湾曲したナイフで首を刈り取った。様々なボーナスアタックが発生し、ガイのHPは消し飛ぶように減り、光の粒子となって消滅していった。
「・・・ゆっくり寝てろ、永遠に」
アルは動くことが出来なかった。あまりにもアッサリと一人やられたので反応が出来なかったのだ。
次に来たのは恐怖。アルはあのナイフに毒が塗られていることを把握する。しかしさっきの投擲は恐ろしく正確だった。少なくとも毒を喰らった瞬間、ガイと同じ末路を辿ると理解した。その瞬間、液体が入ったガラス瓶が飛んでくる。が、間一髪避けることができ、足元で割れた。
「・・・次は、お前だな」
蛇に睨まれた蛙とは、きっと今の状態のことだろう。身体が動かない。だが隙を見せたら終わる・・・とにかく自分に出来ることは、この化け物から目を離さないことだった。そして速くアークが加勢してくれることを祈るのみだった。
シオンは大戦斧をしまい、小狼牙剣を取り出す。アークも流石に立ち直っておりシオンに憎悪を向けた。
「てんめぇぇぇぇぇえええ!!」
「うるせぇ!耳がキンキン響くじゃろ!」
剣と剣がぶつかる。アークの方が力が強くシオンは少し押される。ただアークの力はシオンとさほど違わないがそれのみである。シオンはその力を利用し、後ろに飛び退いた。
「おるぁ!《スラッシュ》!!」
「ぬるい!!」
あまりにも直線的な縦切りだ。アーツにも欠点がある。どうしても動作中は他の動作を受け付けないのだ。それもシオンはショーとのどつきあいでわかっていた。なので地味に通常攻撃も有効になると。最小限の動きで避けることによりチャンスが増える。
「なッ・・・」
「《プルファング》」
「ガッ!ぎああああ!!」
アークの肩にノコギリのような刃の剣を降り下ろし、それをノコギリのごとく引く。鮮血の代わりにダメージエフェクトが多段に発生する。
このゲームはそれぞれのアーツに必ずと言っていいほどクセが存在している。少なくともPvPに関してはただ強い技、強い魔法をぶっぱするだけでは勝てない。実際『ダウンスイング』だって出始めと後に大きく隙が出来る。だから片手剣より少し長いリーチを活かし、射程ギリギリを狙った訳である。『プルファング』も初撃を外すと面倒になる。
つまり、アーツと通常攻撃の使い分け、アーツ自体の使い分け、いかにして攻撃を当てるかも結構重要なのだ。
「やりやがったなぁ!!」
「ッ!?」
『プルファング』の隙をつかれ、袈裟斬りを喰らってしまう。流石に痛い!そう何度も貰う訳にはいかない。呪符に『移動低下』を乗せておく。瞬時に小狼牙剣をしまい、アイアンガントレットを装備する。呪符を張り付けておく。そのまま距離をとると直ぐに突進を仕掛ける。
「『スラッシュ』!!いい加減死ねぇ!」
「黙るのはお前じゃ!!」
単調な縦切りをまたも紙一重で避け、ぶん殴る。ついでに追撃に顔をビンタして呪符も直貼りしておく・・・シュール。
「王手!仕舞いじゃよ」
「んだとぉ!?」
「後はさっさと潰すだけじゃよ」
「体が、重ッ!?テメェ!!」
「喜べ、わっちの新武器の巻き藁になれるんじゃ・・・歯を食いしばれ」
そう言いつつ、雷刀「始雷」とガントレットを入れ換える。実はショーとの戦いでは出していない武器だ。あのときは戦闘訓練ということもあったので鉄刀で戦っていたのだ。なので初御披露目である。
「体が鈍い・・・!テメェ何しやがった!?」
「強いて言うなら、呪符師に接近を許す方が悪い。少しは頭を冷やせ」
「ぐっ、『バッシュ』!」
「鈍すぎる!!『十字閃』!」
その瞬間、雷刀「始雷」に迸っていた雷が更に強くなる。その光は『十字閃』というアーツに馴染み、俺の体が勝手に動いた。
「『十字雷閃』」
それは横切りの後、雷を乗せた縦の一閃が降り下ろされると同時に落雷が落ちた。それは一切の躊躇無くアークを飲み込んだ。
「ちっくしょおおおおおお!!」
眩しい光と雷鳴とともにアークは光の粒子となり、消滅していった。
その頃あちらはその様子を見ていた。片方は少し驚愕の表情を、もう片方は最早心のうちを隠しきれないでいた。
「・・・眩しいな」
「な、あ、な、な・・・あ?」
そしてソウがアルに向き直る。アルはその動作だけでも体を震わせる。
「・・・さて、お前に勝ち目はもう無さそうだが」
「わ、悪かった!許してくれ!も、もうしねぇから!」
「・・・」
ソウは、深くため息をつく。
「・・・そう思ってるならそれでいい」
「え、え?」
アッサリと受け入れられた上っ面の謝罪。助かったとアルはそう思う。しかし。
「・・・え?」
アルの目に写ったものは、自らの体から発生している毒のエフェクトである。おかしい、奴は自分に一切触れていない、攻撃されてもいない、はたまた奴がおかしい行動をしたわけでもない。次第に体が痺れるような感覚に襲われ、動かなくなる。
「・・・うん、やはり気化すると効果が弱くなるな」
「な、な、にを・・!」
「簡単だ。とある毒を気化剤に溶かし込んでお前の足元に投げた。ビリトホーネットアーミーの麻痺毒を使った物だ。それでもかなり時間がかかったな。それにしてもアーミーでこの時間か、
ナイトやジェネラルだとどんなものになるか・・・ククク・・・と、いかんな。では死ぬがいい」
「な!?な、んで!」
その狼狽えているアルの様子を見たソウは言う。
「・・・知らないのか、アレストバトルはどちらかが全滅しなければ終了しない。これはお前らみたいな奴等を降参によって逃がさないようにだ」
「あ、う、がぁ・・・」
「本当に反省しているならそれでいいだろう。でもこの戦闘はお前を殺さんと終わらない、というわけだ」
そのまま悠然と近づく。アルはもう抵抗すら出来ない。当たり前である。何故ならトッププレイヤーの一角、「毒の宴」「毒牙の暗殺者」と呼ばれるソウなのだから。
そのままアルは、首を湾曲したナイフで切断した。
その光の粒子が消え去ったとき雌雄を決した。そしてこの戦いは指名手配になったとき、どんな末路を辿るのか。それをまざまざと見せつけた。それはやがて掲示板などを伝い、広まるだろう。シオンというPCの名と共に。そのことがこれから先、シオンにどんな影響が出るか。それはまだ、先の話である。




