第二十二歩 罪には罰を、闇には光を
朧というPCはスカウト・罠師の偵察と妨害によるサポートタイプになっている。
ソロには不向きではないか?と思われるが、スカウトには隠密関係のスキルがあり、罠師には敵を誘き出すための罠があるので暗殺プレイを主体としているのでソロの時には動きかたを変えればいい。
私はそう考えていた。なのでよほどのことが無い限り一人でやっていこうと思っていた。
だからだろうか。
今、かなり不味い状況になっている。
「君可愛いね〜どう?僕たちとパーティー組まない?」
「ちょ〜〜ど一人分空いてるんだよ。このゲームについて教えてあげるからさぁ」
「ククッそうだな。可愛子ちゃんが一人じゃ危ねぇぞぉ?」
どの口が言っているんだ。危ないのは貴方たちだろうに。こんなのと関わっている暇など無い。早く外を歩きたくて仕方ないのに。適当に断ろう。
「・・・お断りします。今急いでいるので」
「あんだと?このアーク様の誘いを断るってかぁ!?」
「まあまあ、落ち着けよアーク。で、何て言ったのかな?」
「ごめんなぁ、上手く聞き取れなかったよ」
うざい、心底うざい。
でも、何故だ。
他愛もないことのはずなのに。
・・・凄く、恐怖を感じた。
頭に痛みが走る。心臓にじわりとした痛みも出始めた。
何で、何で。こんなことで。一刻も早く逃げなければ。
「・・・急ぎの用があるのでお断りします、では」
足早に立ち去ろうとするが、回り込まれる。
しつこい。痛みもまだ続いている。
「いいから来いよッ!」
「ぅぐ・・・」
強引に、強く、腕を掴まれる。
嫌だ。
なんだ、この感じは。
なんで、なんで、こんなに寒気がするの。
なんで、こんなに冷や汗が出るの。
なんで、恐怖に駆られているの。
身体が動かない。段々と目が開いていくことが解る。
前にもこんなことがあったような。こんな風にかなり強く腕を掴まれたことが。
更に頭の痛みが激しくなる。割れそうだ。吐きそうだ。
もう前の三人が何を言っているのかすら解らない。
腕を引っ張られる。ダメ、上手く抵抗出来ない。
また、またあんなことに・・・。
・・・あんなことって何?
解らない。けど身体の全てが恐怖を感じ、拒否をしている。
瞬間、脳裏にある風景が映る。
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
黒い煙と燃え盛る大火。
軋むかと思う程掴まれた腕。
目の前が様々な赤で染められていた。
嫌。
なに、これ。
こんなの、知らない!
やめて、やめてぇ!
やめてよぉ・・・。
あぁ
誰か
お願いします。
助けて、助けて下さい――――――
「な〜にやっとんじゃ。馬鹿者どもめ」
その声を聞いてハッとした。
その方を見ると。
私には、光が見えた。
温かく、それでいて強い、光が。
――――――――――――――――――――――
俺はとりあえず、ソウの出店へと到着していた。当の本人はいるようなので早速ポーションの補給をすることにした。
「・・・で?」
「おっ?」
「毒はどうだった・・・」
「・・・えろい」
「・・・ん?」
ソウは困惑している。当たり前だ、説明無しだと俺もそうなる。多分、恐らく、きっと。
「えぐい」
「うん」
「ろくでもない」
「・・・うん」
「いやらしい」
「(´・Д・`)」
「頭3文字でえろい、あんな死に方はしたくないのぅ」
「・・・」
ありゃ、黙ってもうた。むしろ俯いてしまった。・・・好きなことを否定したかも知れん。言い過ぎたか、謝らんと。
「あー、その、言い過t「やった」・・・お?」
「・・・やったぞ。とうとう俺の毒はその域に達したかぁ!えぐい!ろくでもない!いやらしい!大変結構!むしろ褒め言葉だ!」
「oh・・・」
あぁ、そうか。
お前もベクトルが違うが。
ショーと同じ。
そっち側か。
話が始まるまえにある武器を取り出して殴った。スパンといい音が鳴り響いた。
「おちつけぃ」
「・・・すまん、だが何故ハリセン?」
「ツッコミ用じゃ」
ハリセン
元々道具のハリセンの更に耐久を上げた結果、武器扱いになったもの。武器としては貧弱を高跳びするとレベル。
スキル・ギャグ補正:相手に確定で1ダメージを与える。
完全にお遊びアイテムだが、まぁこうゆうものもたまにはいいだろう。とりあえずしまう。
「・・・また今度、フィールドワークを頼む」
「りょーかい、なのじゃ。とりあえずポーションいいか?」
「・・・ほら、手伝って貰ったからタダで」
「マジか」
おお、金欠だから感謝感謝。これなら次も付き合っていいかな。
という訳でとうとうというかやっとというか、ウォクエリスへと向かうことにした。出る門は南門だ。ソウも 南区に用事があるということなので一緒に向かうことに。ちなみにアーネはリアル事情で今日はいないとのこと。
「やっとこさこのゲームの真髄が出来るの」
「・・・ランダムイベントがかなり多い。気を付けろ」
「う、うむ」
そんなことを話ながら歩く。しかし次に聞こえてきた声で高いテンションが下がることになる。
「あんだと?このアーク様の誘いを断るってかぁ!」
何処かで聞いたような、聞かなかったような声。少なくとも嫌悪感が出るような怒鳴り声が聞こえた。どうやらそこの路地の中のようだ。流石に気になって覗きこむ。周りのプレイヤーも俺らと同じように集まってきて覗きこんだ。どうやら男プレイヤー三人が女プレイヤー一人を囲んでいる模様。隣でソウがウィンドウを開き、何かを確認している。
「え、ソウか?」
「ホントだ、『毒の宴』だ」
「最近マイルームに籠っているって聞いてんだけど」
え?ソウって有名なのか?そう考えているとその本人から声がかかる。
「・・・あいつら、通報数が多すぎる。恐らく何回か警告されているはずだ」
「・・・知っとるのか?」
「プレイヤーリストからプロフィールを引っ張り出しただけだ。しかもあと一回の通報で指名手配入りだな」
指名手配。ある一定以上の通報数や警告回数を越えると発生する。非常に高い懸賞金がかけられる上、NPCからも狙われる状態。常に何者かに付け狙われる上に、それ用の旅団も存在している。おまけにキルされると一定期間アカウントの凍結。下手すりゃアカウントの抹消である。
運営曰く、「自由も結構、ヤンチャも結構。しかし問題児にはこの運営容赦せん!ただ、此方で事務的に処理すんのも面白くないのでこうした。でも余程悪質なことをしたらオモチャに飽きた子供のごとく電源を切らせてもらう」とのこと。おっかねぇんじゃが・・・。
「・・・周りの奴らに聞くが通報いいか?」
「私たちも迷惑受けたから・・・」
「パーティーの花が嫌がらせ受けてゲーム止めちまったし」
「「「ギルティ!」」」
「・・・わかった。通報するがその前に奴等をPvPに持ち込みたい。そうすれば逃げられなくなる。戦うのは俺とシオンだ。そこの人、バトルに持ち込めたら通報よろしく」
「わ、わかったわ」
ソウはこう言うときは頭が回るようだ。という訳であいつらを上手く挑発しなければならなくなった。ここは俺の出番か。
「では行くか」
「・・・ああ」
ある程度近づいて、始めるか。
「な〜にやっとんじゃ。馬鹿者どもめ」
「んあぁ?なんだ?」
「悪いが取り込み中だ。お引き取り願おう」
「あっ!!てめぇ!!あんときの!」
ん?・・・あー、あーあー!聞いたことがあると思ったらあのときのナンパ野郎か!うわマジか、こんな縁はいらんがな!
・・・これ煽るのに使えるな。よっしゃ!
「おや、お主は・・・誰じゃったかのう?」
わざとったらしく惚けていってみる。
「ッ!!テメッ!ざけんなよぉ!オメーのせいで俺様は恥かかされたんだよ!忘れたとは言わせねぇぞ!」
「・・・ほうほう!いつかのチンピラか!いやーすっかり忘れておったわ!・・・当たり前じゃろ、名前も名乗らんし迷惑極まりない行動するしおまけにナンパの質は最低じゃったからのう。わっちにとっては覚えることに値せん」
「なっ・・・ぐっ・・・うっせぇ!てめぇも変な喋り方しやがって!キモイんだよ!」
おっと痛いところついてくるなぁ!でもなぁ・・・。
「そのキモイ奴に言い負かされたのは誰じゃったかのう?少なくとも、わっちの前でギャンギャンうるさく鳴いておる奴じゃったなあ、ククッ」
あっ青筋たった。そろそろぶちギレるだろうな。そしてこのゲームで暴力的解決をするためにはアレしかない。
「こ、こ、こんのクソアマァァアアア!!殺す!殺してやる!!PvPデスマッチで殺してやるよぉ!!いくぞお前ら!!」
「いいぜ!お前の恥は知らねぇがムカつくからやっちまうか!」
「ごめんなぁ、でも君が悪いんだぜぇ?キィヒヒ!」
「・・・因縁あり?」
「あんまり聞くでない、とにかく準備は出来たぞ」
「あぁ・・・戦闘は久々だな」
「・・・えっ」
《カスタム PvP 2vs3 デスマッチ》
《双方の参加を承認》
「・・・そろそろ頼む!」
ソウが手を挙げて合図を出した。
その瞬間、警告音が鳴り響いた。
「な、なんだぁ!?」
「う、うっせぇな!」
「ぐっ!」
《warning!warning!warning!》
《指名手配プレイヤーとのPvPを確認》
《アレストデュエルを開始します》
さて、試し切りといこうか。




