権力の振るい方
ミオの振るった刀が男の腕を斬り飛ばす。
すると即座に距離を取り、刀に付着した血を舌ですくい取った。
「んぁぁ~、キリがないしぃ……!」
琉星を先に行かせてから三十分。
足止めは継続しているが、血の消費が激しいことに変わりない。
そろそろ血を奪うこと自体もしんどくなってきた。
「貴様、自分のやっていることが何を意味しているのか分かっているのか?貴様は日本国大臣という権力者に逆らうという、決定的な大罪を犯しているんだぞ?」
苦手なタイプの男が、前に進み出て来た。
権力こそが絶対であり、身分の上下による関係性を徹底的に重視する、堅苦しくてつまらない存在。
こんな奴を眼中に入れていては、折角彼の手で洗われた心が汚されてしまう。
「その台詞、いい加減聞き飽きたね。どいつもこいつも、口を開けば権力、権力、権力……身分が上であることがそんなに大事?人間を従わさせ、使うことが名誉?そんな正義、クソ食らえだ」
「クソ、だと……!?」
男の顔が歪む。
そこへ畳み掛けるように、彼から学んだ信条を突き付けた。
「そうさ、権力は振りかざす為にあるんじゃない……誰かに差し伸べ救う為にあるべきだ!現に、私はその信条に救われてここに居るッ!彼の隣で懸命に生きているッ!この現実に、何よりよりの事実に、間違いなんて万に一つも無いんだからッ!!」
世界とは身分の差を重視することで、縦社会の秩序を保っている。
実際、力が無い者では他人を引っ張るどころか、自分を生かすことすらも出来ないだろう。そんな者達が先頭に立ったところで、世界を発展させるなんて夢もまた夢だ。
だからこそ、力を持った者が、力を持たない者達を引っ張る、という形が大切になってくる。
だが、それを自己優位に捉えて、自らを神と勘違いする者達が現れた。
その結果が、楽土だ。
世界から除外された者は、権力者に従うしか道はない……そんな歪んだ思想こそが、心の弱い者達を壊していることを、彼らは考えもしないのだろう。
だからこそ、理解出来る筈がない。
何故自分が、鳴継琉星という人物を慕い、共に戦おうとするのかが。
「詭弁だ」
「分かって貰わなくても結構。ただ、私はあんたらの考え方が気に入らない。言葉で理解し合えないならば、この楽土の、野蛮な、乱暴なやり方で、ケリをつけようよ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、権力者へ向けて反逆の刃を突きつける。
プライドに障ったのか、男は顔を歪めてこちらを睨み始めた。
「貴様ァ……ッ!」
「ロリっ子戦隷士、ナメるなぁ?」
両者が同時に床を蹴る。
二つの刃が交わり、激しい火花が飛び散った。
その瞬間。
巨大な地響きが、地下の建物を大きく揺らした。
「どわわわわわわぁッ!?なになに!?」
建物に亀裂が走り、瓦礫が天井から降ってくる。
総督会の者達が慌てふためく中、入り口付近から声が響いてきた。
「おい!ロリッ子戦隷士!こっちに来るんじゃ!」
そちらを見れば、壁に手を突いて大声を出す、燕の姿があった。
どうやら脱出するように促しているらしいが、ここが崩れているということは、この奥は更に危険な状況になっているに違いない。
「他人からその名前は呼ばれたくない!ていうか、お兄様が!」
慌てて奥へと身体を向けると、背後に瞬間移動してきた燕に肩を掴まれた。
「いいから早く来い!お主はあやつに救われた命を無駄にするつもりか!?」
「ぐ、く……っ!お兄、様……!」




