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13 人が人に対し人を殺すためだけに進化させ続けた兵器

シンの武器の性能について詳しく分かります

「ではでは~、俺達との再会と新しい仲間に、乾杯~!」


『乾杯~!』


「はぁ………乾杯」


メレクが音頭を取り、三人娘と悪魔達がそれに続き、シンが小さく溜め息を吐きながらもエールの入ったコップを上げた。


カコンッと小気味の良い音を立てたコップを口元に持っていき、エールを飲む。


口に広がるのはエール独特の甘味と大麦の香ばしさ。僅かに感じるハーブの爽やかな風味がエールの旨みの後に来る事で後味をスッキリと締めている。


細かい泡が浮くコップを置いたシンは、プチ宴会の様な状態となっているテーブルと久しぶりの食事に興奮気味の悪魔達を眺めながら数時間前の事を思い出していた。


――――数時間前――――


「相棒、金を貸してくれ」


と、メレクがシンに軽い口調で頼む


「いくらだ?」


「十五万G」


シンは何に使うのだとか、急にどうしたのだとか、そんな事は一切問わずにいくら必要なのかを訊く。

二人の付き合いの長さと信頼度が窺えるやり取りであった。


シンが金貨十四枚と半金貨一枚、銀貨五枚をメレクの手元に開いた宝物殿から出したのを見たメレクは、カロメウェとサビロス、ロフォカレ、ロワリュアレ、リガウロスを連れて水精の庭の建物前にある芝生が生い茂る庭へと窓から飛び降りた。


カロメウェとロワリュアレは作業をしていたのを「まあまあ、また直ぐに戻ってこれるからさ~♪」と言うメレクに半ば強引に引きずられて行ったが。


ともあれ水精の庭の前に着地した六人がメレクに連れられて入ったのは目の前にある建物。すなわち水精の庭である。


ロフォカレが言っていた三人娘の仲間入りを祝う晩餐会を全員で行いたい。しかし水精の庭に宿泊してから未だに外に出ていないため、美味い食事や飲み物を出す店など知るはずもなく、必然的に水精の庭で行うことになる。

だが見ず知らずの人物が数日前に宿泊した客と料理を囲んで祝杯をあげるのは奇妙に映るだろう。


そこでメレクが考えた筋書きは、


シンは家族である自分たちと諸事情により旅の途中で別れ、バルガドで合流する予定だったが、その最中に違法奴隷商から三人娘を救い出し仲間に勧誘する。三人娘はこれを快諾、見事家族の一員として迎えられることになった。そして要塞都市バルガドに到着し、水精の庭でメレク達六人を待っていた。

そしてメレク達は偶然にも水精の庭に宿泊することにし、夕食時に部屋から出たらシン達とばったり遭遇。事情を聞いたメレク達も三人娘を温かく迎え入れ、祝いの席を設けることになった


というものである。

そしてその筋書きを実行するためにメレクはシンから十五万Gを借りた。シン達の場合は三万五千G、割引なしでも五万Gであったのに何故十五万Gも用意したのか? その理由はメレクが感じた違和感にあった。

それというのもあのレベルの四人部屋、三食風呂付で五泊五万Gというのは余りにも安すぎはしないか? という違和感だ。一泊一万G、一人当たり二千五百Gである。

風呂や洗濯に使う水道代、料理に使う材料費に宿の維持費を考えると本当に儲けているのか心配になるほどに安すぎる。


そこでメレクが導いた推測がいくつかあるが、考え得る可能性として最も高かったのが「ダムルが最初に提示した五万Gという値段が割引価格だったのではないか?」という推測だ。

故に、メレクは一人当たり二千五百Gで考えるのならば五泊七万五千Gで事足りるところを倍である十五万Gもシンから借りたのだ。


こうして、青日の午後十時にメレク達は三人部屋を二つ、二泊で三万(・・)Gを支払って宿泊することに成功した。



そう、三万Gだ。一泊一人当たり二千五百Gである。つまりメレクの推測は外れていたのだ。

実はこの水精の庭、ある特殊な事情から宿泊料金が格安になっている。それはアリアの能力が関係することであり、要塞都市バルガドにおいては誰もが知っていて、しかし宿泊できる者は少ないという不思議な宿屋を形成するに至った事情であるのだが、ともかくこうして無事にメレク達はシン達と合流。

現在の晩餐会状態に移行した。


「うぉおおお!! 何だこれ!? 何だこれ!? めっちゃくちゃウマいぞーーー!!!」


「いやぁ、素晴らしい風味と旨みですなぁ! 手が止まりませぬぞ!」


「ふむ、美味いな。久しぶりの食事がこれとは幸先が良い」


「おいし~い! こんな料理があるんだねぇー」


「うまうま~」


「あら、本当。良い腕してるわねぇ。料理もお酒も美味しいわ」


メレクが目を輝かせて感動の雄叫びを上げ、ロフォカレが一つ一つ味わいながらも食べ進め、カロメウェが様々な果実水を楽しみ、ロワリュアレが小さな口ではむはむと小動物の様に食べ進め、リガウロスはモグモグと食べる手を一切止めずに料理を口へと持っていき、サビロスは料理と飲み物を上品に口に運び、皆で晩餐を楽しんでいる。


そんな中シンは一気に増えたメンバーに、退屈はしなさそうだが面倒臭いことが増えそうだな、という怠惰な思考を巡らせていた。


贅沢な話である。

退屈で退屈で、暇で暇で仕方がなかったから屋敷から出たというのに、退屈から逃れたら今度は面倒臭くなりそうだなどと。

しかしそんなどうしようもない男なのだから仕方がない。

我ながら呆れたものだと、そんな事を考えながらも


「…? おにぃ、食べないの? お料理冷めちゃうよ?」


と、なぜかシンの膝の上に座って料理をつついているロワリュアレの不思議そうな視線を受けて


「いや、何でもない」


と言いつつどこか苦笑じみた笑みを口元に浮かべ、今回も素晴らしい味と香りを放つ料理に舌鼓を打つのであった。




翌日の朝、時刻で言えば赤日の午前9時を少し過ぎた頃、シンはダムルと向かい合い、シンが持ち込んだ一枚の紙が置かれたテーブルを囲んでいた。

シンが持ち込んだ紙…否、紙に描かれている図面をダムルは真剣な眼差しで見つめていた。


「どうだ? これを製作することはできそうか?」


とシンがダムルに問えば、


「分からん。作ろうと思えば作ることは可能だろう。だがな、そもそもこれは何のための器具なんだ? それが分かればもう少し良い物が作れそうな気がするんだがな。」


という答えが返ってきた。

作ろうと思えば作れる。だがこんな筒のような形をしていて、しかし筒の中身は膜のような壁が何重にも張られているような奇妙な図面。管としては使い道がなく、水筒にしては小さすぎる。何より中に膜を張る意味が分からない。さらに付け加えるのならば、金属で製作する意味があるのかどうかも疑わしい代物だ。

しかもこれを量産できるかとなどとシンは訊いてきた。一体何に使う物なのか、ドワーフとして使用方法とその用途に興味が沸くのは当然の事であった。


「気になるか? これが一体何なのか。」


「そりゃあ気になるだろう。こんな奇妙な図面を見せられたのは初めてだ。ドワーフとして興味を示さない訳にはいかない。」


気のせいか、どことなくダムルの銅色の眼が輝いているように見える。

そんなダムルの様子を見たシンは、もう少し良い物が作れそうというダムルの言葉と、かつては街一番の鍛冶師と言われていたという実績を考えて、両足の太ももに備え付けられた革製で紅い色のホルスターから銀に輝く銃身と、黒いグリップを持つ大口径拳銃をダムルに見せる。


ゴトリと、重く硬質な音を立ててテーブルに乗せられた銃を見て、ダムルは首を傾げる。


「そいつは……何だ? 随分と奇妙な形をしているが……何かの道具か?」


「いいや、こいつは立派な武器さ。単純な事を可能な限り突き詰めて、人を殺すことに特化した………そんな武器だ」


そんなシンの言葉を聞いたダムルは顔を顰めつつも疑問を問う


「こいつが武器? 刃も付いてなければ魔力を貯蓄されてるわけでも、大してデカくもないこれがか? それに人を殺すことに特化したってのはどういうこった?」


そう言いつつダムルはテーブルに置かれた銃に手を伸ばそうとするも、シンが素早く銃を取った


「おっと、素人が予備知識無しでこれに触るのは自殺行為だぞ。言っただろう、人を殺すことに特化していると。もっとも、俺が持つこれは対アンデッドに特化した特別仕様だがな。」


そんな事を言いながらシンは銃から弾倉を抜き、スライドを手前に引いて薬室から飛び出た弾丸を空中でキャッチする。

銃から全ての弾丸を抜いたところでシンは銃身部分を持ち、グリップ部分をダムルに向けて差し出した。


恐る恐るといった風に手を伸ばしたダムルがグリップ部分を握り、シンが手を放すと、ダムルは慌てて両手で銃を持った。


「な、何だこりゃ!? 重すぎるだろこんなの! お前、こんなの足に付けてたのか!?」


ダムルが驚いた顔をしながらシンを見るも、当の本人はそれがどうしたという感じで


「そんな事よりも、それを調べてみたいのではなかったのか? 持つだけで良いというなら別にそれでも構わんのだが」


シンがからかう様にそう言うと、


「馬鹿な事言うな。どんな構造で武器として成り立ってるのか芯まで調べ尽してやる」


とダムルがその太い指を器用に動かし、銃を弄り始めた。



余談だが、中世における西洋剣とは鍛造、つまり日本刀と同じように熱した鉄を叩いて造られたもので、両刃の物が多く精錬技術もまだそこまで発達していなかったために、武器としての強度を得るには相当量の鉄を使わなければならず、初期のロングソードは1.5~3㎏ほどの重さであったという。

その後製鉄技術の向上や鋼の登場により重い物でも2.5㎏程度であった。

日本刀の場合は鉱山などから採掘した不純物の多い鉄鉱石ではなく、川から採れる砂鉄を集めてたたら吹きという独自の製鉄技術で精製された玉鋼と呼ばれる鉄の中でも特に純度の高い鉄だけを使用して作られるために少ない量でも強度を得られたとされる。故に重さは800~1800g、基本的には1㎏前後であった。

現代を代表する武器、銃の中でも比較的携帯が楽な拳銃。その中でも連射できる自動拳銃で現在シンが持っている銃に最も近いのはデザートイーグルと呼ばれる対猛獣用(・・・・)の大口径拳銃であろう。

最も知られているのは「デザートイーグル Mark XIX .50AE」という改良が重ねられたタイプで、シンが持つ銃と性能の差は以下のとおりである


デザートイーグル               

口径   50口径 銃口の直径12.7mm

装弾数  7発

全長   269mm

重量   2053g

銃口初速 460m/s

有効射程 80m

弾頭   フルメタルジャケット弾(鉛を合金でコーティングしたもの)


シンの銃

口径   62口径 銃口の直径16mm

装弾数  6発

全長   302mm

重量   5200g

銃口初速 1840m/s

有効射程 570m

弾頭   純銀製神化祝福儀礼弾(対アンデッド弾)



シンの銃がいかにぶっ壊れ性能であり、どれだけ重いかご理解頂けたであろうか。

もはや人が撃てるような代物では無くなってしまっているのである。

鍛冶師として多くの武器を手掛けてきたダムルも精々2㎏程度だろうと片手で持とうとしたが、予想よりも二倍以上も重かったために面くらい、普段であれば何てことはない5㎏の塊を両手で支えたのだ。


「ふむ、なるほど。ここをこうして押せば………やはりこうなるか。するとここは……いや、違うな。ここはどうだ? ……ここも違うか。ここをこうすれば………そうか、そのためにこれがあるのか。ならばここも…………」


こんな様子でダムルが銃を調べ終えるまでにそれから二時間の時を要し、午前十一時になった頃にダムルがふと周りを見ると、対面に座っていた筈のシンがいなくなっている。


いつの間にいなくなったんだ? と思いつつも何気なく空を見上げて固まった。それはそうだろう、本人にとっては大して時間が経っていないと思っていたのに蓋を開けてみれば太陽が高く昇ってしまっているのだから。

ダムルは自分の頭の中が真っ白になっていき、何も考えられなくなるその直前で我に返り、それと同時に全力で走り始めた。


向かう先、目指す到着地点は厨房。

そう、宿泊客約三十人に出すための昼食の仕込みをしなければならない。

昼食の受け付けは正午から。つまりそれまでに三十人分の食事を用意しなければならないのだ。


間に合うのか? 今日は昨日の夜に仕込んでいたシチューを仕上げてトーストと一緒に出す他に、ダートポークのバルガド焼きを出す予定だった。

シチューとトーストは大丈夫だろう。正午までには十分間に合う。だがダートポークは間に合うか? 下拵(したごしら)えもまだだったはずだ。

ああ、アリアに知られたら怒られるなぁこれは。とにかくできるだけ早く正確に調理を始めなければ………



と、そんなことを考えながらも全力で厨房へとやってきたダムルが扉を開けると、そこにいたのは黒い髪に紅い眼をもつ幼女だった。


突然のことにまたダムルは呆けるが、すぐ我に返って「ここは子供の入る所じゃあない」と追い出そうするも、当の幼女はダムルを見てニッコリと笑うと、厨房の奥へと小走りで向かい出す。


ダムルは


「おい! こら!」


と言いながら幼女を追いかけた先で見たものは、大量の肉に囲まれながら赤や緑、茶色の粉を切り分けられた肉にもみ込み、片っ端から積み上げられていく様と、密閉性の高い扉のせいで感じなかったシチューの匂い、トーストが切り分けられていく様子だった。


さらに肉と粉をかなり手際よく混ぜ、もみ込んでいるのはこれまた黒い髪に紅い眼を持つ長身の男、シンだ。

シチューの匂いのする鍋をかき回しているのはローブを頭から被った怪しげな人物、サビロスで、パンをほぼ同じ厚さで器用に切っているのはディアーチェだ。


そして両手で粉の入ったボウルを持っていた幼女、ロワリュアレはシンの前にボウルを置くと、シンが顔を上げてダムルを見る。


「何だ、もう銃の構造を把握したのか? 言うだけあって早いな」


と言いつつ手は止めないシンにダムルは


「あ~、え~、とりあえず、これは一体どういうこった?」


という困惑した質問しか口に出せず、混乱しているダムルの耳に次に入ってきたのは愛する妻の涼しげで爽やかな声だった。


「あなたがシンさんの持ち物に夢中になってしまって手が離せないからと、わざわざ昼食の用意を手伝ってくださっているんですよ。ありがたいですねぇ、あなた?」


愛する妻の涼しげで爽やかな、凍えるような声にダムルが固まる。


「お客様にお金を払って宿泊して頂いているのに、そのお客様の手を煩わせるなんて、一体何を考えているんですか? 怒りますよ?」


そんな妻に「もう怒ってるだろう」なんて言えるほど神経が太くないダムルは


「すまん。お客人たちの手を煩わせた事、謝罪する」


そう言って頭を下げた。

そんなダムルと一緒にアリアも頭を下げるが、二人を見たシンは特に気にした風も無く、


「何故頭を下げる? 謝罪は受け取るが、ダムルが時間を忘れたのは俺がダムルに銃を見せたからだ。ならばダムルの代わりに俺がダムルの仕事を行うのが筋というものだろう。気にするな」


と言い、ロワリュアレも無邪気に笑み、サビロスやディアーチェも微笑んでいる。最も、サビロスは妖しげな笑みが口元に浮かんでいるのが見えるだけだが。


そんな四人にダムルはもう一度


「すまん」


とだけ言うと手を洗ってエプロンを付け、厨房に入った。




ちなみに、「バルガド焼き」とは要塞都市バルガドの名物料理であり、辛油(しんゆ)と呼ばれる唐辛子に似た香辛料から作られる辛い油を作る際にできた香辛料の残りカス。

辛味成分がほとんど抜け、僅かに辛味を残すだけとなったその香辛料、ダーチェを粉々に砕いてすりつぶすことで粉状にしたものと、グリーンポップという魔物から採取できるグリーンポップビーンズという小さいボールの様な種子を乾燥させ、同じく粉状にしたものをダーチェとビーンズを5:1で混合し、混合粉10に対し胡椒1で混ぜたものを豚肉にもみ込んで焼いたもので、ピリ辛で豚肉の臭みが全くなく、豚肉の臭みが苦手な人におすすめな料理である。



こうしてアリア監修で進行された調理にダムルも加わり、無事に昼食を提供することができたのであった。


ちなみにアリア監修だったのは流石に安全面からシン達だけで行うのは了承しかねるのと、単純にアリアは料理ができないからである。




昼食の提供が終わってロワリュアレとサビロス、ディアーチェが部屋に戻った後、再びシンとダムルは銃と図面が置かれたテーブルを前に向かい合っていた。


「結論から言うと、構造自体は理解した。だがこれが武器だという意味が分からん」


それはそうだ。弾が抜かれた銃など、実際にその威力を見ない限りいくら調べても武器だとは思えないだろう。

なにせ銃本体がすることと言えば、『引き金を引くことで小さな突起部分が薬室内にせり出す』。ただこれだけのことなのだから。


そもそも銃から弾丸を撃ち出すのに必要な動作は、弾丸の底にある雷管ブライマーをある程度の強さで押すという動作だけなのだ。


他の機構は火薬の衝撃を逃がしたり、圧力によって弾丸を前へと押し出すためのものだったり、安全面を考慮したものばかりなのである。


故に、銃というものがどんな武器であるかという知識を持たない者が銃の構造を理解できたとしても、『引き金を引くと小さな突起がせり出す』、『銃上部にある部品スライドが前後する』という別段気にかけることもなく、殺傷性が高いとも言えない動きをするだけの金属の塊を鈍器のような使用方法以外で『武器』と断定するのは不可能に近いだろう。


だがダムルがその結論に至ることはシンも予想できていた。いや、構造が理解できただけでも十二分に腕と知識がある事の証左といえるだろう。

例えシンが魔術を応用した武器を見せられたとしても、その構造を把握、理解するのに二時間では足りないと言い切る自身が彼にはあるのだから。


「まぁ、そうだろうな。この武器は実際に見てもらった方が威力が伝わりやすいだろう。」


「なんだ? 実際に見せてくれるのか?」


「残念ながらこいつは音が大きすぎてな。使い勝手が悪いんだ。音が外に漏れない環境を用意できるのなら話は別だが「用意できるぞ」……何?」


「用意できると言ったんだ。音が外に漏れない環境をな。」


そう言ってニヤリと笑うダムルを見たシンは


「ダムル……お前、笑うと完全に悪人顔だな」


と、本人が地味に気にしている事を的確に抉ってくるのだった。

勿論、この後ダムルがシンの頭をしばいたのは語るまでもない。






黒ずんだ床、煤のようなものが付いた壁、僅かに残る温かさと染みついた汗の匂い。

シンと同じくらいの高さはありそうなドーム状の物体に、至る所に置いてある袋。袋の周りには小さな砂のような粒が転がっており、袋の中に入っているのが砂か石なのであろうかと推測させる。


魔法の恩恵なのだろうか。宿の部屋や廊下にも取り付けられていた白い石のようなものが発行し、部屋全体を明るく照らしている。

二十畳はありそうなその広い部屋を見て、シンはポツリと言葉を漏らす。


「まさか、宿の地下に鍛冶工房があるとはな………」


「驚いたか? 別に宿屋だけで生計立ててる訳じゃないんだよ」


そう。現在シンとダムルがいるのは水精の庭の地下にあるダムル専用の鍛冶工房である。


地下にあるため、槌を打つ音や炉に入れた火が燃え盛る音などが外に漏れることもない快適な鍛冶スペースなのだ。


「さて、早速見せてもらおうか。その武器の武器たる所を。」


「そう急くな。何か的になりそうな物はあるか? 無ければ無いでも構わんが」


そうシンが言うと、ダムルは部屋の奥から盾を一枚持ってきて、部屋の壁に掛けた。


「これで良いか?」


「ああ、壊れるかもしれんが構わないか?」


「構わないさ。どうせまた作り直すつもりだった物だからな」


ならば遠慮なく、とシンは銃に弾倉を入れ、スライドを引いて薬室に弾丸を送り込む。

ジャキッという音を立てて送弾を完了した銃をシンは右手一本で構え、ダムルを見て注意喚起をする


「手で耳を抑えておけ。失神する可能性もいくらかあるからな。」


そう言われたダムルは両手の指で耳の穴を塞ぎ、一つ頷いた。

数拍置いてシンが引き金を引く。

爆音。蒼い閃光。小さな衝撃波。

それらを一瞬で体験したダムルはしばしの間放心していたが、何とか我に返り的にされた盾を見て愕然とする。


革をベースにして金属で補強され、前面は薄い金属で覆うことで金属としての強さをもちつつ金属製の盾よりも軽いというハイブリッドな物であったそれは、中央に拳大の大穴が空いており、穴の周りもまるで何かに食い破られたかのようにボロボロになっていたのだ。


それを見たダムルは信じられないといった表情を隠さずにシンを見た。

それを見たシンは


「分かったか? これが小さな金属の欠片を飛ばすことを可能な限り突き詰め、人が人に対し人を殺すためだけに進化させ続けた兵器だ。」


と、その口元に皮肉気な、寂しげな、愉快気な笑みを浮かべながらそう言ったのだった。



アリアさん……不器用キャラですがベッドメイキングやお洗濯はできるというご都合設定となっております(´・ω・`)


あとメレクが五泊ではなく二泊分にしたのは金が不足するという事態を考慮しての安全マージンを取ったからです。

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