リフレイン
「……ねえ、奏天。どうかしたの?」
「……へっ? あっ、どうもしてないよ! いや、むしろいっつもどうかしてるよ!」
「……いや、そんな反応に困ること言われても」
その日の夜のこと。
ダイニングテーブルにて、向かいから心配そうに問いかける母さん。視線を移すと、母さんの隣に座る父さんも同じような表情を……しまった、ぼおっとしちゃってたかも。ちなみに、理由はもちろん――
「……もしかして、奏天。また――」
「へっ? あっ、ううん違うよ! その、そういうのでは全然ないから、ほんとに心配しないで」
「……そっか。うん、それならいいんだけど」
先ほど以上に心配そうに尋ねる母さんに、慌てて否定を意を伝える僕。そして、隣では果たして父さんも同じような……ふぅ、あぶないあぶない。全然違うのに、余計な心配をかけさせてしまうところだった。
ちなみに、両親が何を心配してくれているかは確信に近い精度で察せられて。可愛いものが好きなことを僕が家の外では隠していることも、隠すようになった主な理由も、母さんも父さんも知っているから。
だけど、幸い二人が懸念しているであろう事態は一切なくて。結果的に、僕が女装をしていることをクラスメイトの知るところになったわけだけど……だけど、お相手の反応は覚悟していたものとは真逆と言って差し支えなくて。なんと、気持ち悪いと言われるどころか、可愛いと褒めてくれさえして。
――それから、数時間後。
自室にて、うつ伏せで枕をぎゅっとする。今日の分の勉強も終わり、後はゆっくりと睡眠に入るだけなのだけど……うん、眠れる気がしない。尤も、そんな日は今日に限らないけども……でも、今日はとりわけ眠れる気がしない。というのも――
『……めっちゃ似合ってるよ、蒼良。マジで可愛い』
もう、幾度も響く宮里くんの言葉。そしてその度に顔が、心が熱くなる。気持ち悪がられて当然だと思っていたのに……それが、まさか可愛いだなんて予想できるはずもなくて、未だに信じられない気持ちもあって……うん、夢じゃないかな?
「……明日も、会えるんだよね……」
そう、ポツリと呟く。本当に恥ずかしいし、どんな顔して会えばいいかも分からない。尤も、宮里くんはクラスのみならず学年……いや、校内全域において評判の美少年――即ち学園の王子さまと言えよう存在で、地味で陰キャラでコミュ障の僕と関わることなんて、きっとこれからもほぼないと思う。それに、宮里くんの評判に傷をつけないためにも、なるべく僕が関わってはいけないのも分かってる。なのに……それでも、ちょっとだけでもお話しができたらいいな、なんて烏滸がましいことを思ってしまう自分もいて。




