クラスメイトの王子さま
――すると、そんなある日のことだった。
「…………ん?」
大通りを歩いていると、少し遠くにとても困った様子の男の子が目に留まる。艶やかな黒髪に澄んだ瞳、そして透き通った肌の眉目秀麗の男の子で。そして、その子には確かに見覚えが……もしかして、宮里くん? こんな遠くで会うなんて、何とも奇遇で……いや、まだ会ってはいないか。目も合ってないわけだし。
さて、彼は宮里慧那くん――僕の通う公立校、聖陽高校の二年D組のクラスメイトで、そして見蕩れるほどに秀麗な男の子なのだけど……何やら、宮里くん自身もご存知ないであろう女の子達に囲まれてるようで。……もしかして、いわゆる逆ナン? そして、繰り返しになるけど宮里くんはとても困っているご様子。なので、クラスメイトとしてここは助けに――
……でも、僕がいきなり行ったら変だよね? 同じクラスなってから二ヶ月くらい経つのに、挨拶すらほとんどすら交わしたことない間柄の僕が行ってもきっと怪訝に思われてしまうだけで。……いや、でも、かと言って放っておくこともできないし……うん、大丈夫……だよね? だって、今の僕は――
「――お、お待たせ! 宮里くん!」
「……えっ?」
おずおずと駆け寄り声をかけると、果たしてポカンとしたお表情の宮里くん。まあ、そうなるよね。どこの誰かも知らない《《女の子》》に、勝手に待ち合わせをしていたことにされたのだから。……いや、女の子に見えているのかは分からないけど。女装姿の痛々しい男だとバレているかもしれないけど……それでもこの際、僕だとバレていなければそれでいい。ともあれ、少しの間の後――
「……なーんだ、彼女いるんじゃん? じゃあ先に言ってよ。行こ、みんな」
「……あっ、うん」
興が冷めたようにそう言って、さっと背を向け去っていくリーダー格っぽい女の子。そして、戸惑った様子で彼女に付いていく他の子達。僕なんかが出ていったところでどうなることかと思ったけど、それでもどうにか上手くいったみたいで……ふぅ、よかった。……いや、安心してる場合じゃない。
「……そ、その、僕……いえ、私はこれで」
ボソボソとそう口にしつつ、さっと背を向け去っていく僕。我ながらあまりにも声が小さく、聞こえているかどうかも分からないけど……ともあれ、万が一にもバレる前に――
「――待って」
瞬間、僕の足がピタリと止まる。……やっぱり、バレた? でも、かと言って今ここで逃げ出すわけにもいかない。おずおずと振り向いてみると、そんな僕をじっと見つめる宮里くん。そして――
「……お前、蒼良だろ?」




