第17話 聖なる僧侶からのアドバイス
「いやー、今日は暑いな! 新しいグループの結成祝いに炭酸でも買おうぜ!」と、中村なかむらは勢いよくコンビニに入りながら言った。
「賛成! 俺はLサイズのコーラにするわ、もう喉カラカラで……」
飲み物の棚の前に立っていた水沢みずさわが、俺の方を振り返った。
「なあ宇佐美うさみ、お前は何飲む? 缶のブラックコーヒー? それともウーロン茶? お前のオーラからして、炭酸飲料が好きってタイプじゃないよな?」
確かに、俺はいつも無糖のブラックコーヒーかストレートティーを選んでいた。しかしなぜか、彼ら3人が一緒に笑い合っているのを見ていると……少しずつ彼らに合わせるための、ちょうどいい機会のような気がしたのだ。この新しい友達の輪に溶け込みたかった。
「あ、あー……いや……今日は炭酸にするよ。お前ら3人と同じやつで」
水沢は少し目を丸くして俺の答えに驚いたようだったが、すぐに満面の笑みを浮かべ、俺の肩をポンと叩いた。
「よし! じゃあLサイズのコーラ4つな! 俺が払うから、お前らは好きなお菓子持っていけよ!」
「水沢最高!」林はやしと中村が声を揃えて叫んだ。
10分後、俺たち4人は俺のアパートのドアの前に到着した。俺は鍵を回し、ドアを押し開けた。
「どうぞ入って。ちょっと狭いけどごめんな、一人暮らし用のアパートだから」
しかし、3人の男子たちはすぐに中に入るのではなく、玄関の入り口で立ち尽くしてしまった。
「おい、おい……宇佐美!?」中村は少し口を開けたまま、驚いた様子だった。「なんで床がこんなにピカピカなんだよ? 部屋中から爽やかな柑橘系の香りがするし!」
「本当だ! 机の上もめちゃくちゃ綺麗で、ホコリ一つないぞ! マジかよ……お前のアパートと比べたら、俺の部屋なんて不法投棄のゴミ捨て場みたいだぜ!」林も頭を抱えながら相槌を打った。
「宇佐美、お前一人暮らしなんだよな? ここまで綺麗に部屋を保てるなんて、ほんとすげーわ」水沢は、脱いだ靴でカーペットを汚してしまうのではないかと恐れるように、とても慎重に足を踏み入れた。
「お、お前ら大げさだな……ただ定期的に掃き掃除とモップがけをしてるだけだぞ」
「適当に座っててくれ。キッチンからお皿とコップを取ってくるから」
俺たち4人はリビングのカーペットの上に円になって座り、それぞれのコーラの缶を開け、数種類のポテトチップスをお皿に開けた。
会話はとても自然に弾んだ。隣のクラスの数学の先生がいかに厳しいか、山のように出された歴史の課題、そして最近流行っている最新ゲームの話。気まずさなど微塵もなく、まるで中学時代からの友達であるかのようだった。
やがて、水沢がコーラの缶を置き、再び真剣な眼差しで俺を見つめた。
「さて、宇佐美。約束通り、俺たちはお前からの聖なる僧侶のアドバイスを聞く準備ができてるぜ」
中村と林は即座にポテトチップスを噛むのをやめた。彼らは身を乗り出し、まるで塾の先生からテストの解答のヒントを待つ生徒のように俺を見つめた。
(よし……あの口うるさいギャル姫の正体をバラすことなく、理にかなったアドバイスをしなきゃな。もし本当はうるさいやつなんだって言ったとしても、こいつらは絶対に信じないだろうし、白川しらかわさんの変装がバレてしまう)
「コホン。あのな……俺の観察によると、お前ら3人はクラスで目立ちすぎてるんだよ。人気者で、よく大声で笑ってて、そのオーラが……ちょっとエネルギッシュすぎる」
「それで? それが悪いことなのか?」林が不思議そうに尋ねた。
「悪いってわけじゃないけど、白川さんに近づくには、そういう野蛮なアプローチは向いてないんだよ」
「白川さんって、上品で落ち着いてるだろ。お前らが大声と溢れんばかりのエネルギーで群がって行ったら、彼女は圧倒されて反射的に防御壁を張っちゃうんだよ。だから、お前らに対応する時の笑顔が、社交辞令の貴族のスマイルみたいになるんだ」
3人の男子は真剣な表情で顔を見合わせた。
「あー、つまり……俺たちはうるさすぎるってことか?」
「その通り。俺からのアドバイスとしては、ゆっくり始めることだ。コンサートでアイドルを応援するみたいに近づくな。普通の声のトーンで、落ち着いて話しかけるんだ。あまり騒ぎ立てるな」
「それから、あまりプライベートなことを聞いたり、過剰に気を引こうとしたりしないことだ。手の届かない神聖なアイドルとしてじゃなく、ただの普通のクラスメイトとして接するんだよ。もしお前らがリラックスして、騒がしくない態度を見せることができれば……きっと彼女も少しずつ心を開いて挨拶してくれるようになるはずだ」
俺が話し終えると、リビングルームは突然静寂に包まれた。
水沢、中村、林の3人は深く頭を下げていた。彼らはそれぞれ何かブツブツとつぶやいており、その声が重なり合って何を言っているのかは聞き取れなかった。
「ンンンブブブ……なるほど、そういうことだったのか……」
「落ち着き……普通の人として接する……」
「ムムム……俺たちのエネルギーが爆発しすぎてたってわけか……」
(え……? 俺のアドバイス、変だったか? それとも、俺が適当に言ってるだけだってバレたか?)
突然、水沢が顔を上げた。その目は、地面を掘り返して金塊の入った箱をたった今見つけた人のように、キラキラと輝いていた。
「宇佐美! お前、マジで天才だな!!」
「そうか! 上品なお姫様が、俺たちみたいな野蛮人の騒ぎを好むわけがないよな! 俺たちは落ち着きと威厳を備えた紳士にならなきゃいけないんだ!」
「ありがとう、宇佐美! お前のアドバイスで本当に目が覚めたよ! これが上手くいくかどうかはともかく、めちゃくちゃ理にかなった素晴らしいアドバイスだ!」林が突然俺の両手を掴み、興奮気味に上下に激しく振って握手をした。
彼らのあまりにも大げさな反応を見て、俺は引きつった笑顔を作るしかなかった。
(まあ、お前らが満足してくれたならよかったよ……許してくれよ、みんな。俺の生存のために、お前らを騙すしかなかったんだ。本当の白川さんは、お前らの100倍は野蛮なやつなんだよ。あははは……)
「あ、なあ宇佐美、ゲーム機持ってるって言ってたよな? 遊ぼうぜ! カーレースで水沢をボコボコにしてやりたくてウズウズしてるんだ!」
「ああ、ちょうどいいタイミングだな」俺はテレビ台の引き出しを開けるために振り返りながら言った。「コントローラーなら4つあるぞ。順番待ちしなくても、4人同時に遊べる」
「マジで!? コントローラー4つも!?」
俺たちはレースゲームを起動した。普段は白川さんの口うるさいおしゃべりしか聞こえない俺のリビングルームが、その日の夕方は、悔しがる叫び声、勝利の笑い声、そして男子高校生の友情ならではの馬鹿げた罵り声で満たされた。
「おい林! 後ろからぶつけるなよ、ズルいぞ!」
「あはは! 俺のバナナの皮トラップをくらえ、水沢!」
「ああっ、くそっ! 車が滑って崖に落ちた!」
「お前ら全員どけ、1位は俺のもんだ!」
俺たちは夢中で遊び続けた。レースゲームから格闘ゲーム、そしてスポーツゲームへと移っていった。
この部屋にはもう、人気男子と陰キャ男子のカーストなんて存在しなかった。ただ純粋に青春を謳歌している、4人の男子高校生がいるだけだった。
時間は本当にあっという間に過ぎ去った。壁掛け時計を見ると、針はすでに夜の8時を指していた。買ってきたお菓子をすべて平らげた後でも、俺たちのお腹は鳴り始めていた。
「うわ、やばい、もう夜の8時か……」
「じゃあ、俺たちそろそろ帰るわ、宇佐美。今日はありがとな、お前のアパート、最高に居心地よかったぜ!」
「ああ、せっかくの週末を台無しにして騒がしくしちゃって悪かったな。ゴミ片付けるの手伝うよ」中村が言い、散らかったコーラの缶を拾い集め始めた。
「あ……いや大丈夫だ、そこに置いといてくれ。後で俺が捨てるから」
「宇佐美、明日の学校の昼休み、俺たちの席で一緒に弁当食おうぜ! もう一人で隅っこにいるなよ!」
「あ……う、うん。わかった」
「よし! じゃあまた明日な、友よ!」水沢はアパートの廊下から満面の笑みで手を振った。
「気をつけて帰れよ、3人とも!!」
アパートのドアが再び閉まった後、俺はリビングに戻り、カーペットの上に無造作に転がっている空っぽの皿と4つのゲームコントローラーをちらりと見た。
男友達、か……。




