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学校一のギャル姫と、コインランドリーで助けたことをきっかけに友だちになった  作者: ミハリ
第2章 学校一のギャル姫との日々は、波乱の連続になりそうです
15/22

第15話 ふざけるな! 俺はコミュ強じゃない!

 頭の痛くなるような授業の数々を終え、ついに授業終了を告げるチャイムが高校の廊下中に響き渡った。


 1年A組の生徒たちは教科書を片付け、教室から飛び出し始めた。部室に向かう者もいれば、帰る準備をする者もいる。


 俺はまだ自分の席に座っていた。時折、水沢、中村なかむら、林はやしというクラスの3人の人気男子たちが、こちらに視線を投げかけながら先に教室を出ていくのをちらりと横目で見ていた。


 彼らがドアの向こうに消えたのを確認すると、俺は急いでズボンのポケットからスマホを取り出し、【MINE】のチャットアプリを開いた。


【白川しらかわさん。ごめん……今日は一緒に帰れそうにない。すごく重要な急用ができた。先に帰っててくれないか?】


 10秒も経たないうちに、メッセージに「既読」がついた。


【はあああ!? なにそれ!? (T⌓T)】

【やーだー! せっかく……駅前のコンビニで抹茶アイス食べながら一緒に帰ろうって妄想してたのに!】

(MINEスタンプ:怒って机をひっくり返す白ウサギ)


 まあ、面倒な反応が返ってくることは予想通りだったが……。


【これは絶対なんだ。この学校での俺の生存に関わる問題なんだよ】

【ただの言い訳でしょ! 宇佐美うさみくん、こっそり一人でゲームセンターに行こうとしてるんでしょ!? ひどい! ケチ! 陰キャおじいちゃん!】

【私怒ったからね! 拗ねた! もうメッセージ返さないからね! べーっ! (`ε´)】

(MINEスタンプ:頬を膨らませてそっぽを向く白クマ)

(MINEスタンプ:空き缶を蹴っ飛ばすウサギ)

(MINEスタンプ:口から火を噴く猫)


 怒りのスタンプの連打で、スマホが十数回も振動した。このまま放っておけば、この偽ギャル姫は明日の朝まで間違いなく拗ねたままだろう……それは非常に面倒くさい。機嫌を直す方法を考えなければ。


【わかった、わかった。その代わり……今度の日曜日は、俺がお前の家に遊びに行くってのはどうだ? そこでゲームか何かして遊ぼう】


 突然、スパムのようなスタンプの連打が止まった。


【ほんと!? やったあああ! ヾ(≧▽≦)o】

【約束だからね、宇佐美くん! もし嘘ついて来なかったら、あの可愛い寝顔の写真、学校の掲示板にばら撒くからね!】

(MINEスタンプ:ポンポンを持って踊るクマ)


 拗ねていたのは1分も持たなかった。


 本当にわかりやすい女子だ。俺はサムズアップのスタンプを返し、スマホをポケットにしまった。


 さあ、いよいよこの学校での俺の生存問題に向き合う時だ。


 石のように重く感じる足取りで廊下を歩き、1階に降りて、旧校舎の裏手へと向かった。


 半分開いた屋内運動場の鉄扉の奥から、木製の床に擦れるスニーカーのキュッという音と、バスケットボールの弾む音が聞こえ始めた。


 俺は深呼吸をして、中へと足を踏み入れた。


 中に入ると、コートは静かだった。そこにはうちのクラスの男子3人しかいなかった。水沢さんがバスケットボールをドリブルし、中村 潮なかむらしおと林 健二はやしけんじは観客席に座ってミネラルウォーターを飲んでいた。


「あ、宇佐美! やっと来たな」


 俺の姿に気づくと、水沢さんが気さくに声をかけてきた。彼はバスケットボールを中村さんの方へ投げると、手の甲で額の汗を拭いながら俺の方へ歩み寄ってきた。


「お、待たせて悪かったな」と、俺はこわばった声で言った。


「気にするな、俺たちもちょっと遊んでただけだしな」と、中村さんと一緒に近づいてきた林さんが言った。林さんはスポーツドリンクのボトルを俺に差し出した。「ほら、まずは飲めよ。すごく緊張してるみたいだからな、宇佐美」


「あ、い、いや結構だ。ありがとう。喉は渇いてないから」


 4人の間に、一気に気まずい空気が漂った。


 俺が雑談を得意とするタイプではないからだ。ましてや、彼らのようなクラスのエリート層との会話なんて。俺の人生において、クラスメイトとの一番長い会話といえば、消しゴムを借りることくらいだった。


 水沢さんが突然小さく咳払いをして、沈黙を破った。彼の眼差しは、昼間に教室で俺を呼び止めた時のように、急に真剣なものへと変わった。


「さて、宇佐美……単刀直入に言うぞ」


(終わった。白川さんとの秘密がバレたに違いない。こいつら、俺を尋問して、いじめて、それから川に投げ捨てるつもりだ!)


 中村さんが一歩前に出て、俺をまっすぐに見つめた。


「宇佐美……正直に答えてくれ。白川さんとは、一体どういう関係なんだ?」


「!!!!!」


 全身の血の気が引くのを感じた。彼らは本当に知っている! どこから漏れたのかはわからないが、俺たちの偽装は失敗に終わったのだ!


「ど、どういう関係って?」


「お、俺は白川さんとは何の関係もないぞ。き、教室で話したことすらないし。そ、それは絶対に何かの誤解で……」


「嘘つくなよ、宇佐美!」林さんが少し声を荒げてすぐに口を挟んだ。「昼の休み時間に! 俺たち、この目でしっかり見たんだぞ!」


「な、何を見たって言うんだ!?」


「白川さんだ……彼女、後ろの席の方を振り返って、お前をまっすぐ見つめて、とびっきりの甘〜い笑顔を向けてたんだよ! しかも遠くから何か囁いてるみたいだったし!」と、水沢さんが強調するように言った。


(このバカギャル姫め! 教室でむやみに合図を送るなって言っただろうが!)


「そ、それは……絶対に見間違いだ! 彼女はきっと、俺の後ろの窓の外の景色を見てたんだよ! そ、そうだ! たまたま可愛いハトが飛んでたんだ!」


 しかし、3人の反応は俺の予想を全く裏切るものだった。


 学校のアイドルと親しくしていることを咎めて怒ったり、胸ぐらを掴んだりするどころか、彼ら3人は顔を見合わせ、そして同時に重いため息をついたのだ。


「ほらな、言っただろ。宇佐美って本当にすごいよな? メンタルが鋼でできてるんだぜ」


「ああ。あんな美しい笑顔で見つめられても、ただのハトの景色だと思い込んでるんだからな。ヒマラヤの聖なる僧侶みたいなオーラがあるよ」


 俺は何度もまばたきをした。は? 聖なる僧侶? 鋼? こいつら、一体何の話をしてるんだ?


「え……ち、ちょっと待ってくれ。お前ら、本当は何の話をしてるんだ?」俺は混乱して尋ねた。警戒心は次第に薄れ、代わりに巨大な疑問が湧き上がってきた。


 水沢さんは深いため息をつき、哀願するような目つきで俺の両肩を掴んだ。


「あのな、宇佐美。白川さんって……すごく完璧だろ。可愛くて、頭が良くて、おしゃれで、言葉遣いもすごく上品で。でも、その完璧さのせいで、絶対に手の届かない『高嶺の花』みたいに感じないか!?」


「そうなんだよ!」中村さんも興奮気味に相槌を打った。「俺たちクラスの男子が近づこうとしたり、ちょっと挨拶したりするたびに、あのオーラがさ! 返事はしてくれるんだけど、めちゃくちゃ丁寧な敬語なんだよ! 笑顔も、社交辞令の貴族のスマイル! あのせいで俺たち、萎縮しちゃって、すごく気まずくて引いちゃうんだ!」


「彼女と軽口叩くなんて、自分たちが汚らわしくて不釣り合いな気がするんだよ! 何か間違ったこと言って、幻滅されるのが怖いんだ!」と、林さんも続けた。


 俺は少し口を開けたまま、この3人の人気男子たちを見つめていた。


(待て、待て。高嶺の花? 貴族のスマイル? お前らが言ってるのは白川 円香しらかわまどかのことだよな? のり塩味のポテチを口の周りにつけながら食べて、俺をからかうためにわざと露出の多い服を着る、あの口うるさいギャル姫のことだよな!? お前ら、あいつの猫かぶりに完全に騙されてるぞ!!)


 当然だが、それを声に出して言う勇気はなかった。


「そ、それで……それが俺と何の関係があるんだ?」


「宇佐美、お前は違うからだよ!」水沢さんは目を輝かせて言った。「お前はクラスで唯一、白川さんのあの神聖なオーラに全く影響されてない男だ! お前は後ろで静かに座っていられるし、今日の昼間みたいに白川さんがお前に向かってあの必殺の笑顔を放った時でさえ、お前は無表情で黙ってただけじゃないか!」


「そうだよ! お前は鋼のメンタルを持ってるか、ギャル姫レベルの女子を前にしても冷静でいられる特別なトリックを知ってるに違いない!」


 突然、何の合図もなく、水沢さんは俺の目の前で90度に腰を曲げた。


「頼む、宇佐美! お願いだ! その秘密を教えてくれ! あのクールな姫君と、気まずくならずに話す方法を教えてくれ!」


 リーダーが頭を下げるのを見て、中村さんと林さんも同じように90度に腰を曲げ、俺のお腹の前に頭を差し出した。


「お願いします、宇佐美先生! 白川さんと話す方法を教えてください!」中村さんと林さんが同時に叫び、その声が屋内バスケコート全体に響き渡った。


(なんだこれは……こいつら、どうしちゃったんだ?)


 尋問、いじめ、そして俺の平穏な高校生活の崩壊に対する恐怖は、まるで最初から存在しなかったかのように消え去った。しかし、今俺の目の前に立ちはだかっているこの新たな問題は……はるかに、はるかに馬鹿げていて、厄介なものに思えた。


「はぁ……」


 まだ5月になったばかりだというのに……どうやら、俺の人生は平穏という言葉からますます遠ざかっていくようだ。

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