第5話 サービスよ
「A君は、まだ、下っ端の下っ端だぜ。そのA君でも、言ったような待遇だ」
「……」
「そのA君の仕事ぶりを、ちょっと見てみよう」
「……」
「出勤した彼は、タイムカードを刻印させた後は、直属の上司と二言、三言しゃべった後、昭和中期からあるようなその古ぼけた社屋を出た」
「……」
「場外馬券売り場からの帰り道と同様に、慎重に尾行を洗った後は、これも古びたアパートの1階の部屋に入った。しっかり、教育通りの動きをしてる。感心、感心。てか、これが当然だがな」
「……」
「アパートを挟んで、表通り沿いには、どこの町にもあるような個人経営の不動産屋がある。大抵、パートのおばちゃんが、退屈そうに雑誌をめくるか、スマホをいじってる」
「……」
「店内に仕掛けられた隠し集音器やカメラのモニターが、A君が入った部屋にある」
「……」
「この不動産屋が紹介した部屋の一つが、A君の一つ上のクラスの俺の部下」
「……」
「つまり、仮にその人物をB君とすると、B君の行確(行動確認)なり、人物鑑定をしようとした警察が、この不動産屋に来て、B君のことを尋ねたりすれば、A君の報告によって、すぐに俺の耳に入る訳。部下がマークされてるっていうことは、赤信号だからね」
「……」
「その時点で、俺らは雲か霧かと、痕跡を消して、行方を晦ます」
「……」
「木を隠すなら森の中。人を隠すなら町の中って訳さ」
「……」
「A君の部屋にも、当然同様の仕掛けが施されてる。だから、A君も安全」
「……」
「B君の仕事の話をしてやろう」
「……」
「B君はね、A君よりクラスが上な分、少しだけ重要な仕事をしてる。俺らの顧客の御守係。儲けた顧客の要望に応じて、遊びの手配をしたり、ウラ口座を作る相談になってやったり」
「……」
「ん? 馬券とは、別の仕事ね。馬券の話はあとでね」
「……」
「『顧客が儲かってるのか?』って? そう、俺らが儲けさせてるの。顧客は、合法的に儲けてると思ってる。だって、違法性を疑わせるもの、少ししかないから」
「……」
「『少しあるじゃない』だって? それは、暗黙の了解っていうか、顧客は、そのリスクと儲けを天秤にかけて、俺らと取引して訳。ごく普通の商取引だと思ってるしね」
「……」
「もっと聞きたい? ブックマーク次第。これは、サービス」
©2026 [風風風]. All rights reserved.




