表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改訂 【 塀の上、綱渡りのハッカーズ 】  作者: 風風風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/93

D幕 本編 19

 深夜、オフィスから人影が消えた後、久保のデスクにだけ明かりが灯っていた。


 彼が眺めている大型モニターには、複雑な相場状況が映し出されている。

 それは単なるチャートではない。配下たちが各顧客に対してどのようなスタンスで商談を進めているか、その「買い」と「売り」の比率を示す数表だ。


 久保の指が、キーボードの上で止まる。


 画面上の「買い」に傾いた数値を凝視し、小さく息を吐く。次の瞬間、久保は端末を操作し、リーダーたちへ短い通知を送る。

『明日、朝日岡には売りを提案させろ。○○〇には……様子を見ろ』

 具体的な意図は語らない。

 リーダーたちはその指示の背景にある「何か」を推測することも、問い返すことも許されない。ただ、久保の脳内にある複雑なパズルに従い、配下たちは現場で顧客への推奨方針を修正するだけだ。


 久保は、積み上げられた未開封の書類の山を無造作に脇へ押した。

 コーヒーカップの中身はとうに冷え切っている。彼が夜な夜なこのオフィスで苦渋の表情を浮かべながら何を修正し、何に心血を注いでいるのか。その全容を知る者はいない。


 彼にとって、これは単なる売買の管理ではない。

 何かを成し遂げるための、終わりの見えない調整作業だ。その視線は、モニターに映る数字の先にある、もっと大きな「何か」を見据えているようにも見える。


 時計の針が三時を回る。

 久保は重い溜息をつき、椅子に深く背を預けた。明日の朝、市場が開けば、また新たな注文が舞い込む。彼が抱えるこの苦吟の正体が白日の下にさらされる時は来るのか?

 その時、この塔に住む者たちの運命がどう転ぶのか――それはまだ、霧の中に隠されている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ