表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

9.デビルキングの再臨 前編

 ACR基地。

 司令室には光一が一人、椅子に座っていた。

 他には誰もいない。

 足音が聞こえてくる。

 光一は入り口のガラス扉の方を見る。

 その先には恭子の姿があり、こちらへと歩いてきていた。

 恭子は扉の前で立ち止まるが、センサーが切れていて自動では扉が開かない。

 だが、トンネル効果の応用でその扉をスルッと透過してこちら側に入ってくる。

「すご!」

 驚く光一。

「今の手品どうやったの?」

「手品じゃないよ。量子トンネルの原理を使ったのよ」

「トンネル効果? 科学はもうそこまで来てるの?」

「そう言うこと」

「それよりさ、アリスはこの間、前から言いたかったことがあったんだけどって言ってたけど、あれって何?」

「ああ。あれは……カッコいいんだから合コンにでも行ってくればって言いたかったの」

「え? そうなの?」

(てっきり告白されるのかと思ってたけど。俺のは片想いなのか……?)

 恭子はスマホを取り出し、メッセージアプリを確認する。

「ええ? どうしよう?」

「どうしたの?」

「今、リーニアで知り合いの男の子からデートに誘われたんだけどさ」

「リーニアって?」

「ロシアのSNS企業が作ったメッセージ通話アプリだよ。無料で使えるんだ。日本語にも対応してるよ。最近の子達はこれで連絡を取り合ってるみたい」

「ふーん。……それで、行くの?」

「うーん、乗り気じゃないんだよね」

「じゃあ断れば?」

「ちょっと考えてみる」

 恭子は椅子に座り、スマホを眺める。

 ティントゥン、とアプリの通知音が鳴る。

「うぉおいそれはラインの通知音! 権利はどうした!?」

 光一のツッコミに対して、「メタいこと言わないの」と、さらに恭子が言い放つ。

「それにリーニアだってロシア語でラインって意味でしょ!?」

「作者は遊ぶの好きだからね」

 メタ発言をされてしまった。

 その時、レーダーが反応をする。

 光一はレーダーをチェックすると、小窓から宇宙を見渡した。

 宇宙船が別の宇宙船に追跡されている。

「アリス、ちょっと来てくれ」

「うん?」

 恭子が小窓を覗く。

「宇宙人同士の仲間割れでしょ」

「助けに行く?」

「いや、私たちの仕事は地球の安全を守ること。他のことに手を割くわけにはいかないわ」

 恭子は席に戻ろうとするが。

「アリス!」

「うん?」

 小窓を覗くと、その宇宙船が地球へと落下していく。

「全員で行きたいところだけど、私たち二人だけだね」

「基地は自動に切り替えるから急行しよう」

「そうだね」

 光一は基地を自動運用に切り替え、恭子と共に地上に移動する。

 宇宙船が落下したのは、北海道の草原付近だった。

 草原に出現した二人は二手に分かれて探索をする。

 しばらく歩くと、恭子は怪我を負った女性と遭遇した。

「大丈夫ですか?」

 女性は古代エジプト語で言う。

「悪い人に襲われてて」

 たまたま古代エジプト語の翻訳ツールをインストールしていた恭子は、瞬時に意味を理解し発声言語を切り替えた。

「あなたは私が守ります。話を聞かせてください」

「ありがとうございます」

「私はヴァルシア星のアリス。あなたは?」

「エネシア。エジプトの地底小国ガイアコットのプルトン王の妻ですわ。この星はなんと言うのですか?」

「地球ですけど……今、エジプトって言いましたよね?」

「ええ」

「エジプトはこの地球の一つの国家です」

「地球?」

「銀河系太陽系第三惑星地球。宇宙ネームではガイアです」

「ガイア!? 本当ですか!?」

「ええ」

「帰って来れたのね……」

「どういうことですか」

「実は——」

 エネシアは、自分の身に起きた出来事を詳細に説明した。

「時空の狭間にですか」

「そうなんです。それで、どうにかガイアを探して旅立ったんですけど、途中でデビルキングに見つかってしまって」

「デビルキング?」

 聞き慣れない名前だった。

「私の母星を荒らし回った宇宙の嫌われ者よ。それと、私の一人息子も時空の狭間で……」

「そうだったですね。それは辛い思いをしましたね」

 恭子は無線に手を伸ばす。

「柳田、応答して」

「こちら柳田。用件を」

「こっちに来て欲しい」

 光一が空間転移で出現した。

「何かあったのか?」

「実はエネシアという人を保護して」

 光一はエネシアを見る。

(この人、どこかで会ったような……)

「この方、古代エジプト語を話すのよ。あなた、心得は?」

「俺は日本語オンリーだ」

「じゃあ通訳するね」

 光一はエネシアに言う。

「エネシアさん、俺は柳田 光一。こちらの方とこの星で防衛隊をやってる」

「それは頼もしいわ」

「追っ手は何者なんですか?」

「デビルキングという者です」

「デビルキング?」

(なんだ、なんかどこで誰かがそれを口にしていたような……どこで聞いたんだっけな)

「とにかく、安全なところへ行きましょう」

 三人は基地へと移動した。

「ここが我々の防衛隊の基地です。自由に過ごしていてください」

 恭子が光一に言う。

「ここは私が見てるから、あなたは地球でデビルキングを捜索して」

「わかった」

 光一は地球へと転移する。

 先ほどの草原付近を捜索する。

 捜索をしばらく続けるが、怪しいものは見つからない。

「何もないな」

「本当だな」

「うん。……?」

 謎の声に振り返る光一。

 フードの黒衣デビルキングが立っている。

「誰だ!?」

「貴様の体をちょうだいするぞ」

「あ? 何を言って……」

 デビルキングは光一の体に重なりその内側に入り込んだ。

(体が!)

 デビル光一が空間転移で防衛隊基地に侵入する。

(くそ、なんなんだこれは!? 体が勝手に! まさか、俺は乗っ取られたのか!?)

 デビル光一はまっすぐ恭子のいる元へ向かう。

 扉を開け、部屋に入る。

「おかえり、柳田」

「ああ、ただいま」

(逃げろアリス! これは俺だけど俺じゃない!)

「それで首尾は?」

「異常は見られなかったよ」

「そっか」

 デビル光一はエネシアがいることに気づく。

「エネシア?」

「知り合いなの?」

「あ、いや……」

 デビル光一の言動に恭子は怪訝な顔をする。

「アリス、ちょっとお使いを頼まれてくれないか?」

「どうすればいい?」

「うん。地上で松輪サバの丸得を買ってきてほしい」

「なんでサバ?」

「いいから」

「わかったわよ」

 恭子はそう言って、空間転移をした。

「ふっ」

 含み笑いをし、エネシアを見るデビル光一。

「見つけたぞ、エネシア」

 デビル光一は古代エジプト語で告げた。

「……!?」

 怯えるエネシアは、彼のその正体に気づいた。

 デビル光一はエネシアに襲いかかる。

「今度こそ貴様を殺す!」

 だが、恭子が部屋に突入してきて、デビル光一の腰に蹴りを入れた。

「ぐっ!」

 デビル光一が体を曲げる。

「お前、柳田じゃないな? 何者だ?」

 振り返るデビル光一。

「俺か? デビルキングとでも名乗っておこうか」

「貴様がデビルキングか。柳田はどこにやった?」

「ここにいるだろう?」

「違う。お前は偽物だ」

「そうじゃない。この体を乗っ取ったのだ」

「なに!?」

 デビル光一は恭子の鳩尾に拳をねじ込む。

「ぐっ!」

 恭子は激痛で倒れ、意識を失う。

「邪魔者はいなくなった。消えてもらおう」

 デビル光一はエネシアの首を掴むと、その金属の骨を怪力で折り曲げて生命活動を止めた。

 ベッドに倒れるエネシア。

 デビル光一は扉を開け、部屋を出ていく。



 恭子は意識を取り戻すと、基地に増設された牢屋の壁に固定されていた。

「目が覚めたか」

 鈴間が牢屋の外で言う。

「これはなんですか?」

「うん。私が帰ってきた時に医務室で女性の遺体を発見してな。そこにお前が倒れていた。不本意ながら容疑者であるお前を拘束させてもらった」

「違う! 犯人は生命体の体を乗っ取ることができるデビルキングです!」

「デビルキング? その話は本当か?」

「柳田が乗っ取られて、その状態で殺したんです!」

「なに?」

 牢屋を開けて拘束を解く鈴間。

「無礼を赦してくれ」

「それはいいですけど……」

「女性は何者だったんだ?」

「デビルキングに追われてたみたいです」

「となると、デビルキングを捕まえるのと、柳田の救出だな」

 後半へ続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ