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6.超機械合体

 ACR科学研究センター。

 ここは、最新鋭の科学技術の開発研究を行う防衛組織ACRの施設である。

 ここでは量子もつれを利用した時間跳躍の研究開発が行われていた。

 小型物体ではすでに過去や未来への転送が成立し、再現性が確認されていた。

 しかし、人間や超機械生命体を時間跳躍させるのは、まだ再現性を獲得できていない。

 恭子と光一は、鈴間の指示で施設を訪れていた。

 小型物体の時間跳躍を眼前で見せつけられ二人は驚いている。

「これが全ての物質で再現性が出せたらノーベル賞ものだよね」

「当然その技術を悪用しようとするものも出てきそう」

 雑談をしながら行われている実験を面白そうに見学している。

「お二方、実験は面白いですかな?」

 そう訊ねるのは、施設長の荻田おぎた 鉄平てっぺいだ。

「ええ、実に興味深い実験だらけです」

 と、光一。

「ところで、この品を日本支部の局長に届けていただけませんかな?」

 荻田は風呂敷に包まれた荷物を光一に渡す。

「これは?」

「口ではとても言えないものだ。重要なものだから、必ず局長に届けてほしい」

(どこのドラクエだ)

「わかりました」

 光一は、「高木さん、行こうか」と、恭子を連れて防衛基地に移動する。

 亜空間を航行中、恭子は言った。

「この亜空間航行って煩わしいよね。外との時間の流れは違うけど、体感では長く感じるんだよね」

「確かにそうだね」

 空間転移は外部から見た場合は一瞬だが、主観で見ると亜空間に入り、そこから行きたい座標に進路を向けて到着したら脱出という流れになっている。そのため、空間転移は相当なエネルギーを使う上、遠すぎると座標が固定できず、行くことができないのだ。

「もうすぐだね」

 二人は目標座標に到達し、現実空間に現出した。

 そこはACR基地の局長室の前である。

「失礼します!」

 二人は局長室に入る。

「何か用かな?」

 局長が訊く。

「荷物を預かってきました」

「どうもありがとう。適当に置いて戻っていいよ」

 光一は風呂敷包を置く。

 二人は廊下に出た。

「柳田もこの後オフだよね」

「そうだけど」

「それじゃあ、なんか食べに行こうよ」

「それって食事デ——」

「ノンノンノン、社交辞令よ」

 光一は言いかけたところでかき消されてしまう。

(はあ。好きって言いたいのに言えない)

 光一は恭子の顔を見ながら思った。

「それじゃあ、私服に着替えてくるから」

 恭子はそう言って、基地の女子更衣室に向かう。

 更衣室に入ると、怪しい物体が落っこちていた。

「何これ?」

 恭子は拾う。

 卵のような形をした黒い物体。

 恭子はそれを持って司令室へ行く。

「隊長、こんなものが更衣室にありました」

「なんだろうね」

 その時、卵にヒビが入り、雛鳥のような姿をした小動物が誕生した。

「鳥?」

 その鳥は、鈴間を見ると、親だと思い込んだのか、肩の上に飛び乗った。

「可愛い子だな。よしよし」

 小鳥をあやす鈴間。

「隊長、ちゃんと世話してくださいね」

「わかってるって」

 恭子は廊下に出る。

「うわああああ!」

 司令室から悲鳴が聞こえる。

 中に戻ると、小鳥だったものが怪物になっており、鈴間を飲み込みかけていた。

「隊長!」

 恭子は拳銃で怪物を狙撃すると、そいつは驚いて鈴間を吐き出して暴れ始めた。

「なんなんだこいつ!?」

 恭子は怪物を捕まえ、ダストシュートに押し込み、扉を閉めてロックし、ハッチを開けて宇宙空間に放り出す。

「焦ったわ」

 恭子は安堵して更衣室に戻る。

 服を着替え、地上へ移動する支度をする。

 更衣室を出ると、着替えを済ませた光一と会った。

「ああ、アリスか」

「ねえ、柳田」

「うん?」

「柳田って彼女いるの?」

「は?」

 恭子の意外な言葉に、素っ頓狂な声を上げる光一。

「前から言おうと思ってたんだけど、私ね……」

 その時、基地内に緊急指令が流れた。

 それによると、地球に巨大生物が現れ、暴れて回っているとのことだ。

「行こう」

 恭子と光一は空間転移で地球へ移動する。

 問題の巨大生物は先ほどの化け物と同一のものだった。

「そんなことって」

 恭子は感嘆の表情をしている。

 光一は、頭の中で先ほどの恭子の言葉を反芻はんすうさせる。

(私ね……の先が気になるな)

 街中で暴れる巨大生物は、周囲を焼き尽くし、焦げた建造物をむしゃむしゃと頬張っている。

「なんだあいつ。物体を食べるのか?」

「とりあえず止めましょう」

「ああ」

 二人は超機械生命体を召喚した。

 アストライアとガイアスター見参。

 接近する二人。

 巨大生物は迫り来る二人に飛び蹴りを叩き込んだ。

「きゃあ!」

「うわあ!」

 すごい力だ。

 二人は勢いよく吹っ飛び、地面に転がる。

 今までの敵よりも、途轍もない力の持ち主だ。

「俺の鉄壁のアーマーでも吹っ飛ばされるのか」

 アストライアが恭子に語りかける。

『私とガイアスターは合体ができるはずだ』

(合体……?)

『そうだ。二人が合体をすることでパワーが何倍にも跳ね上がるんだ』

(そんなことできるの?)

『やってみろ。感覚は実践で掴め』

「柳田、合体よ」

「合体?」

「うん」

「なんだかわからないけど面白そうだ」

 アストライアとガイアスターは体を変形させることを試みる。

 すると、ガイアスターの体が上半身に変形し、アストライアが下半身にトランスフォームする。

 そして、二つの体がドッキングして新たな戦士が誕生した。

「「超機械合体、ガイアストライア!」」

 二人の声が同時に放たれた。

 合体戦士は自分の体を改める。

((合体した?))

 理解が追いつかないが、とりあえず巨大生物に接近する。

 強力な一撃を巨大生物に叩き込み、遠くへ吹っ飛ばした。

「「パワーが上がってる!?」」

 ガイアストライアは巨大生物に追い討ちをかける。

「「は!」」

 回し蹴りが炸裂し、巨大生物は真横に吹っ飛んだ。

 巨大生物は倒れもがいている。

「だあ!」

 ガイアストライアは高くジャンプすると、落下の衝撃と重量を合わせた強力な飛び蹴りを立ち上がった巨大生物にお見舞いする。

「ぐええええ!」

 悲鳴を上げた巨大生物は、衝撃のあまりにその生命活動を止めて倒れてしまう。

 ガイアストライアは分裂し、元の二体に戻った。

「今のは?」

 と、アストライアは疑問符を浮かべる。

「わかんないけど、俺たちにこんな機能があったなんてな」

 そこに、悪魔のような姿をかたどった自律行動をする巨人が現れた。

「お前は?」

 と、ガイアスター。

「俺の名はデビルマスター。超機械生命体だ」

「デビルマスター?」

「アストライアよ、貴様の戦いに敗れ、5000年の眠りに落ちた俺の積年の恨みを返させてもらう」

「誰よあんた? 私はあんたのことなんか知らないわ」

「ふんっ! ロボット生命体とはつくづく貧弱な体だな」

 デビルマスターはガイアスターの手首を掴む。

「お前の体、利用させてもらう」

「え?」

 デビルマスターはガイアスターの体を頭上に放り投げた。

「なんだ? 体が勝手に!」

 ガイアスターの体が下半身に変形する。

 デビルマスターも自身の体を上半身にトランスフォーム。

 二つの体がドッキングする。

「「強制機械合体、デビルガイアスター!」」

「強制…機械合体……?」

 アストライアは首を傾げる。

「「さあ、死ぬがいい」」

 デビルガイアスターが、痛恨の一撃を浴びせてくる。

「きゃあ!」

 アストライアはその強力なパンチを避けきれず、吹っ飛ばされてしまう。

「何が起きてるの?」

『強制機械合体。どんな超機械生命体でも、強制的に合体して能力と主導権を奪う禁忌の技だ』

「「トドメを刺してやるよ、アストライア」」

 デビルマスターの声に混じってガイアスターの声も聞こえる。

「柳田!」

 デビルガイアスターは跳躍し、落下と体重を利用した強力なキックをアストライアの胸部に叩き込んだ。

「ぐわああああ!」

 アストライアは倒れて地面を滑走する。

「くっ……」

 大ダメージを受け、胸部に鋭い痛みが走っている。

 アストライアは横たわったまま広げた右手をデビルガイアスターに突き出し、ヴァルシアブラストを放った。

 刹那、デビルガイアスターは分裂し、下半身だったガイアスターが元の姿に変形し、迫り来る必殺の光線をくらい押し飛ばされてしまう。

「うおわああああ!」

 なんとか光線から避け、地面に着地をする。

 ガイアスターもダメージを受け、地面に倒れ伏してしまう。

「フハハハハ」

 笑いながら元の姿に戻ったデビルマスターが地上に降り立つ。

「どうだアストライア? この俺の進化は。どうせ死ぬ身だ。せいぜいそこで苦しみながら果てろ」

 デビルマスターは徐に飛翔して去っていった。

 二人の超機械生命体は、元の姿に戻った。

「柳田、大丈夫?」

 恭子が倒れている光一の元に歩く。

「アリ……ス……」

 光一は覚束ない足取りで立ち上がる。

「厄介なものが現れたわね」

ガイアスターおれのからだもしばらく動きそうにもないや」

 初めての敗北だった。

 あんな怪物がいるなんて。

 二人は戦いに勝つことはできるのだろうか……。


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