39.アリスと輝須。親子と夫婦の再会
地球に帰ってくる恭子。
柳田時間漂流保護事務所に入ると、輝須の姿があった。
「久しぶりだな、恭子」
「兄さん、どうしてここに?」
「警察官の君に相談したいことがあってな」
「相談? いや、そうじゃなくて、私がなんでここにいるって?」
「アリスさんのお兄さんが調べてくれたんだよ」
「ああ、輝須さんが」
「それで、君にこの子の情報を調べてほしいんだ」
と、赤ちゃんが写った古い写真を輝須が取り出した。
「この子は?」
「相田 美智子。18年前に行方不明になったんだ。生きて高校に通っていれば三年生かな」
「美智子?」
どこかで聞いたことがある名前だった。
「わかった。すぐに調べるわ」
恭子は事務所を出ると、新宿北交番に足を運んだ。
「ああ、アリスさん。今日はどうしたんですか?」
「18年前に相田 美智子って赤ん坊が行方不明になってるの。差し支えない範囲で構わないわ。調べてくれる?」
「相田 美智子だね」
春人が交番のパソコンで行方不明者リストを調べる。
「2008年、相田 美智子……。あ、出た!」
「見せて!」
春人が恭子にパソコンの画面を向ける。
「登録時の住所は近いわね。現住所もわかるかしら?」
「免許証からわかると思うけど、個人情報だからなあ」
「未来で拾う美智子さんがお礼をしてくれるわよ、きっと」
「美智子さんは関係ないよね?」
「そこをなんとか。行方不明の子を捜したいの」
恭子には確信があった。
今川 美智子と行方不明の赤ちゃん相田 美智子に何らかの繋がりがある、と。
「そんなこと言われても……」
恭子はACR手帳を見せる。
「ACR!?」
「職場は失っても籍は残ってるのよ」
「君はACRの職員なの!?」
「うん。日本支部のね」
「ACRといや、怪獣から宇宙人、超常現象まで幅広く扱う組織……。そういうことなら、わかったよ」
春人はパソコンの向きを変え、キーボードを叩く。
「事情はわからないけど、ここを訪ねてみて」
春人は恭子に相田夫妻の現住所をメモした紙を渡した。
恭子は時空転移装置に相田夫妻の現住所の座標を入力して転移した。
亜空間に入る直前、春人が消える恭子に驚いていた。
恭子は相田夫妻の家の前に現れる。
インターホンを押す恭子。
「はい」
中から女性が出てくる。
「ACRの高木です」
「ACR?」
「18年前にいなくなった美智子ちゃんについて調べてます」
「え、本当ですか!? ACRが来たってことは、超常現象として扱われることになったんですか!?」
「その可能性が考えられます」
恭子は美智子の写真を取り出した。
「こちらはいつ頃の写真でしょうか?」
「いなくなった当日のものです。写真を撮ったあと、ちょっと目を離してる隙にいなくなってしまって」
「当時の服に、美智子ちゃんの名前を書きませんでしたか?」
「ええ、書きました」
やはり、今川 美智子と関連がありそうだ。
「実は私、美智子ちゃんに会ってるんですよ」
「え? そうなんですか? どこにいるんですか?」
「とある警察官の方が発見されましてね。その警察官が18年もの間、大切に育てたそうです」
「美智子に会わせてくれませんか?」
「同一人物か裏付けを済ませたら連絡しますので、少しお待ちしていただけると助かります」
「わかりました。待ってます」
恭子は女性に頭を下げる。
女性は家の中へ戻った。
恭子は柳田の事務所に戻る。
「柳田、美智子さんいる?」
「今川さんなら買い物に行ってるよ。貸したお金が野口英世だったんで、とても驚いてたよ。50年後では北里柴三郎が一般的で野口英世や夏目漱石は出回ってないみたいだね」
「どこに買い物へ行ったかわかる?」
「コンビニへ行くって言ってたかな。柴三郎は持ってたけど、50年後の柴三郎じゃ、お札の番号も現代では存在しないだろうし、俺のお札と取り替えたよ」
「どこのコンビニ?」
「すぐそこのシックスイレブン」
恭子は事務所を出る際に、「了解。そのお札使っちゃダメよ!」と言い残してコンビニへ向かう。
コンビニに着き、恭子は美智子を見つけた。
「美智子さん」
「アリスさん?」
振り返る美智子。
「美智子さん、これに見覚えある?」
恭子は美智子に18年前の写真を見せる。
「赤ん坊? あれ? この服、私が着てたのと同じ?」
「美智子さん、あなたの本当のご両親を見つけたわ」
「どこで?」
「この時代で。あなたは今から18年前、時空乱流に飲まれて2058年に飛ばされて、そこで春人さんに拾われたのよ。そして18年過ごし、再び時空を移動して元の時代の18年後に帰ってきた。そう考えると全て辻褄が合うのよ」
「え……それじゃあ、私は未来人じゃなかったんですか?」
「そうなるわ。あなた、前に言ってたでしょ。服に名前が書かれてたって。それと相田さんっていう女性が書いたっていう名前の証言を照らし合わせると、あなたは2008年生まれってことになるわ」
「……私、帰ってきてたんですね。お母さんに会いたいです」
「行きましょう」
恭子は美智子を連れて空間転移を行うと、相田家の前に着いた。
インターホンを押すと、女性が出てくる。
「ああ、ACRの」
「美智子さんを連れてきました」
美智子が女性の前に出る。
「お母さん……なの?」
自分に似た女性を見て、目に涙を浮かべる美智子。
「まさか、美智子?」
「お母さん!」
美智子は女性に抱きつく。
「おかえり、美智子」
「ただいま」
かくて、二人の親子が時空を超えた再会を果たした。
一方、50年後の未来でも、春人の家に一人の高齢女性が訪れる。
「ただいま、春人さん」
「おかえり、美智子さん。今、彼女はちょうど旅立ったよ。って、君は本人だったね」
「春人さん」
美智子と春人がハグをする。
「これからはずっと一緒にいられるわ」
「なんだか変な気分だよ。18年前、君が仕事で単身赴任したと思ったら、赤ん坊の君が現れて、18年間君を育てただなんて」
「育ててくれてありがとう、お義父さん。愛してる」
かくて、二人の夫婦が時空を……くどいな。




