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超機械生命体アストライア  作者: 獅子王子(元桂ヒナギク)


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26.光一の心

 ある日のことだ。

 ACRの司令室で、光一がボーッとしていた。

「どうしたんだ、あいつ?」

 と、隊員の一人が別の同僚に訊ねる。

「僕が知るわけないじゃないですか」

 隊員は光一に声をかけた。

「おい、柳田」

 反応しない。

「ダメだ」

 隊員は諦めた。

 訓練の時も一人参加せず光一は隅っこの方で上の空だった。

「はあ……」

 息を吐く。

 光一は恭子の言葉が気になっていた。

 養子。

 5000年前の王子。

 アルテウス。

 まだ心の整理ができていないのだ。

 そこに恭子が割って入る。

「いつまでうじうじしてんのよ、みっともない。男でしょ?」

「はあ……」

 ため息。

 その時、恭子の通信機に連絡が入る。

 超広域銀河警察惑星ポリシアからの通信だ。

 添付されていたPDFファイルを私物のコンピュータで開く。

『ガイアコット』

『アルテウス』

『精神転移』

 最後に一行。

『閲覧権限不足』

 開けないファイルがあった。

(なにこのファイル?)

 一方、ポリシアの捜査官室では。

「電子頭脳紛失事件は?」

「未解決です」

 捜査官室を沈黙が支配した。

「……嫌な予感がする」

 と、捜査員が沈黙を破った。



 その日の夜。

 光一は帰宅する。

 育ての親の写真を見る。

「実の息子じゃないってか……。俺は……誰なんだ」

 その瞬間、テレビで緊急速報が流れる。

 火星で正体不明の機械生命体目撃。

「……火星?」

 画面にノイズ。

 ダークアストライアの影が一瞬だけ映り込む。

「なんだこれ?」

 光一はニュースの映像に見入った。

 映像と共にニュースキャスターが概要を話す。

『今朝未明、火星で巨大な生命体が目撃されました。その生命体はアストライアに酷似しており、体の色は黒でした。その後、アストライアと戦闘になり、黒いその巨人はアストライアに倒されたとのことです』

 火星での戦闘の一部が映像で流れる。

『現地の日本火星報道部によると、戦闘になる前に何らかの事故が発生していた模様です』

 映像がニューススタジオに切り替わる。

小此木おこのぎキャスター、その事故とは一体?』

『どうやら火星政府庁総長の影のボディガードと言われたエルザーレ研究員が起こした事件のようです』

『そのエルザーレ研究員は何をしたのですか?』

『エルザーレ研究員は——』

 小此木というニュースキャスターが事件の流れを説明する。

『——その後、何者かの手によって、エルザーレの中に入った人工機械生命体はエルザーレとして最期を迎えたとのことです』

「高木さん、大活躍じゃねえか」

 光一はクスッと笑う。

 元気の出た光一は、自分の生い立ちなどどうでもよくなってきた。

 その時だった。

 スマホが鳴る。

「ん?」

 画面を見ると恭子の電話番号だった。

「噂をすれば」

 通話マークをタップしてスマホを耳に当てた。

『もしもし?』

「ただいま、電話に出ることができまーん。発信音の後にメッセージお入れください。ピー」

『何ふざけてんのよ?……ちょっとは元気が出たみたいね。あ……それよりも、ニュース見た?』

「見た見た。火星で大暴れしてたらしいな」

『大暴れって何よ! 人聞き悪い!』

「いや、ニュースの映像だけだと完全に怪獣映画だったぞ」

『……あれ編集の仕方が悪いのよ』

 光一は少々黙り込んだがすぐに口を開いた。

「高木さん」

『なに?』

「ありがとな」

『……何よ急に』

「いや、なんとなく」

『気持ち悪い』

「ひでえ」

 通話が切れる。

 光一は携帯を見つめる。

 そして笑った。

「過去は過去、今は今だ」


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