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14.探検隊

 6600万年前の白亜紀の地球。

 地上には人類が目にしたこともない珍しい生物が生息していた。

 恭子はアストライアを到達ポイントに待機させて白亜紀の地球を探索する。

 この時代に高度な知的文明を持った生命体はいないため、さほど問題はないと思ってアストライアは放置されていた。

 恭子は生体センサーを作動。探検隊のものと思しき反応を複数個体認識。

「あっちか」

 恭子は反応のあった方へ足を向ける。

 反応までは距離がある。

(少し急ぐか)

 恭子は以前から何度か使っているレイクローディを発動。

 レイクローディとは、戦闘型ロボット生命体が動体視力を上げると同時にタキオン粒子を全身に張り巡らせ、目にも留まらぬほどの高速移動を実現する機能である。

 機能を発動すると、人間を遥かに超える速度で活動でき、その姿は機能を持たぬものには誰にも視認できないのだ。

 そして、調査隊を見つけた恭子はレイクローディ機能を止め、物陰に身を潜めた。

 調査隊のアシュレイが言う。

「この星、生命体はいないのか?」

 メンバーのリゼロッタが「行けども行けども草木ばかりで人っこ一人いないわね」と答える。

 もう一人のメンバーであるアンゼロットは。

「疲れたー。もう歩けなーい」

「じゃあ、休憩するか」

 アシュレイの言葉に二人は賛成し、三人でキャンプの準備をした。

 テントを貼り、薪を用意し、火を炊いて食事をしている。

 その三人の元に、食べ物の匂いに釣られたティラノサウルスが、ゆっくりと迫っていた。

 しかし、誰もその気配には気づいてはいない。

 ティラノサウルが足音と気配を消し近づいてくる。

「よーし、一曲歌うか!」

 と、アシュレイが言い、二人が嫌そうな顔をする。

「やめてよアシュレイ」

「あんたの歌は下手くそだから聞きたくない」

 二人の言葉にアシュレイは。

「なんだってぇ!?」

 アシュレイは歌う準備をする。そして——。

 頭を揺らし、耳をつんざくような酷い騒音が、アシュレイの口から放たれる。

 物陰にいる恭子は耳を押さえつけ、大音量の騒音を遮断すると同時に、三人の背後に近づいて来ていたティラノサウルスが苦痛の悲鳴を上げる。

「ぎゃああああおおおおああああ!」

 悲鳴に気づいた二人は振り返りティラノサウルスの存在に気づいて恐怖を覚える。

 だが、歌っている本人は気にも留めず騒音を撒き散し続けていた。

「ちょっと、アシュレイ!」

「やめなさいよ!」

 二人の言葉に、アシュレイの騒音が止んだ。

「なんだよ。人がせっかく気持ちよく歌ってたのに」

「いやいや、そんなことより、ね?」

 と、リゼロッタがティラノサウルスを指差す。

 アシュレイは振り返ってティラノサウルスを足元から頭部へ徐々に見上げる。

「ぎゃああああおおおおああああ!」

 ティラノサウルスが咆哮。

 恐怖に怯えた三人が足をすくめて体を寄せ合う。

 ティラノサウルスは顔を近づけて、三人の匂いを嗅いでくる。

 よだれを垂らしたティラノサウルスがペロリと舌を鳴らす。

「これって、俺たちを餌だと思ってるのか?」

 と、アシュレイ。

「どうやらそうみたいね」

 アンゼロットが言う。

「私たちを食べても美味しくないのにね」

 と、リゼロッタ。

 三人は顔面を蒼白させながら大量の汗を垂らす。

「ぎゃああああ!」

 ティラノサウルの咆哮。

 アシュレイは懐から救難信号発信装置を取り出してボタンを押した。

 その一部始終を見ていた恭子はレイクローディを発動し、ほぼ止まているような世界で三人を一人ずつ物陰に移動させる。

 恭子がレイクローディの機能を止めると、ティラノサウルスが眼前から忽然と姿を消した三人の様子に驚き戸惑う。

「うが……?」

 疑問符を浮かべるティラノサウルス。

 三人は安堵のため息をつく。

「危ないところだったわね」

 恭子の言葉に三人は振り返った。

「あ、あなたはこの星の人ですか?」

 と、アシュレイが訊ねる。

「ええ、まあ」

「よかった。やっと人に会えた」

「ここにいる生命体は今の巨大生物と昆虫や水棲生物くらいよ」

「あれは一体?」

「ティラノサウルス。肉食恐竜よ」

「俺はアシュレイ。あなたは?」

「アリスでいいわ」

 恭子がそう言うと、残りの二人も名乗る。

「私はリゼロッタ」

「アンゼロットよ」

 恭子はアシュレイに訊ねる。

「あなた方はこの星に何をしに来たの?」

「実は俺たち、母星を出発してすぐ、ワームホールに飲み込まれたんだ」

 その後、ワームホールに飲み込まれた探検隊の宇宙船は瞬間的に地球へと辿り着いたのである。

「それで、助けを求めようと思ってこの星に。でも——」

 探検隊はティラノサウルスに食われると思い、カメラ機能つき救難信号送信端末でSOSを送ったところで、恭子に助けられたというわけだ。

「実は私、6600万年後の未来からあなたたちを救出しにきたのよ」

「え? なんでそんなはるばる遠いところから?」

「あなたたちの母星の軍の人たちとたまたま会ってね。それでよ」

「だとしたら、軍の人たちは6600万年かけてここに来たってことになる。そんなに長い間、宇宙を航行していたら、彼らも他界してるんでは?」

「それがそうでもないのよ。彼らは光速航行をしたからね」

「光速航行でなんでそんなに時間がかかるの? もっと早く着くんじゃない?」

「それが逆なんだ。光速で動くものは時間が遅くなり、外の世界はとてつもない早さで進むのよ。つまり、速く移動すれば移動するほど周りに抜かれるってことだね」

「そういうことか」

 アシュレイの言葉の後、恭子は空を見上げる。

 だいぶ日が落ちている。

 間もなく夜になりそうだ。

「うん?」

 夕空に巨大な接近物が見える。

 どうやら、白亜紀を終わらせた隕石のようだ。

 このままの目標だと地球にぶつかるのは免れようがない。

(地球が……命が終わる!)

 恭子は通報装置を取り出した。

「時空を超えて届くかしら?」

 恭子はスイッチを押す。

 と、デビルキングが現れる。

「こんな時代まで遡らせるとはお前もなかなかのものだな。どうした?」

「あれを見て」

 デビルキングを夕空を見上げる。

「白亜紀を終わらせた隕石か?」

「恐らくね」

「それで? どうしたいんだ? 我々をただ呼んだってわけではなかろう?」

「この星の地下深くに全恐竜を避難させるシェルターを作りたい」

「シェルターだと? 正気か?」

「やらねば恐竜が滅びる。私は助けられる命があるなば救いたい」

「いいだろう。我々が総力をあげて協力しよう。艦隊を宇宙空間に停留させてある。ちょっと待っていてくれ。アストライアを忘れるなよ」

「待って。行くならこの三人を艦隊で保護して」

「わかった」

 デビルキングは三人を連れて艦隊へ移動していった。

 恭子はアストライアを召喚した。

 アストライアは接近する巨大隕石に向かって飛び立つ。

(もう時間がない。急がねば)

 アストライアは隕石の近くまでいき、ヴァルシアブラストを打ちかます。

 隕石は必殺の光線で砕け散る。

 しかし、それでもかけらが地球に墜落すれば、灰が空を覆い、太陽は隠され、気温は低下して氷河期に突入するだろう。

 そうすれば、地球に生息する恐竜が絶滅するのは必至である。

 一方でデビルキングたちポリシア警察は全員の知識や能力をフル活用して、地球内部に空洞を作り上げてシェルター化をさせた。

 その後、皆で恐竜たちを誘導し、シェルターへと避難をさせる。

 やがて、隕石のかけらは地球に降り注ぎ、灰が世界を覆い尽くした。

 アストライアは艦隊に移動すると、保護した三人を連れて現代にある宇宙船へとタイムスリップをした。

 三人を足元に置き、恭子の体を床に移動させ、その体に意識を送り込む。

「それじゃあ、仲間の元に行きましょう」

 恭子は三人を連れてノワールの艦隊に転移する。

 かくして、探検隊の三人はノワールの者たちと再会することができたのであった。


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