12.ヴァルシア怪獣
実家の前にやってくる恭子。
扉を開け、中に入った。
「ただいまー!」
台所で炊事をしていた女性が振り返る。
「アリスじゃない! 帰って来たの?」
「うん、気分的に」
「お母さん、向こうでどうしてるか心配だったのよ」
「心配かけてごめんね。お父さんはどうしてるの?」
「はあ……」
母親は空虚な目をする。
「あなたが宇宙へ旅立ったあと、急死してしまったのよ」
「え?」
「ワイパー型ウィルスにかかちゃってね」
ワイパー型ウィルス。感染したロボット生命体のデータの破壊および削除を行う恐ろしいウィルスだ。
ローカルではかからないが、自身の体をグローバルネットワークに繋いだ時に感染のリスクが高まる。
「生活費はどうしてるの?」
「お父さん、保険に入ってたから、それで今はなんとかやれてるわ」
「そうなんだ。お墓は?」
「せっかくだから、お線香あげておいで」
母親は恭子にお墓までの地図を渡した。
「私のバイク、置いてあるよね?」
「ええ、置いてあるわ。いつ帰って来ても乗れるように。でも、免許証は大丈夫なの。期限とか」
「ああ、それは大丈夫。いつも確認してるから、期限切れる前に更新してるし。ただ不便なのは向こうで戸籍がないから免許が取れなくね。まあ、空飛べるし、空間転移もできるからいらないっちゃいらないんだけど」
「楽しくやってるのね」
「うん。あと、ここに来る時、銀行強盗三人をまとめて片付けた」
「そんな危ないことを」
「大丈夫。だって私、一番強いからね」
恭子はそう言って右手の人差し指を立てた。
「じゃあ、ちょっとお墓行ってくる」
恭子は実家を出ると、お墓までバイクで移動する。
「やっぱりバイクは最高ね」
地球のバイクと違ってヘルメットは必要ない。ヴァルシア人は物理的衝撃には耐性があるので、事故や転倒をしても頭に影響はない。但し、拳銃やライフルなどを喰らうと威力があるのでダメージを受ける。
お墓に着き、父の墓石を探した。
すると、墓荒らしに遭遇した。
墓荒らしは遺体を掘り起こし盗もうとしていた。
「何してるのよ?」
「げっ!」
墓荒らしは逃げようとする。
「待ちなさい!」
墓荒らしを捕まえ、ヴァルシア警察手帳を見せる。
「け、警察!?」
通報を受けた警察が墓荒らしを警察署に遺体掘り起こしの罪で連行する。
「ご協力感謝します」
敬礼して立ち去る警察官。
(遺体なんか盗んでなにしようとしてたのかしら。データ移行で成りすまし?)
「お父さん、どこに寝てるのかなー?」
恭子は父の墓石を探す。
「あ、あった」
恭子は父の墓石にお線香を立てる。
「ただいま、お父さん。もう会えないけど、とりあえず帰って来たよ」
合掌する恭子。
……。
…………。
………………。
「なんか喋ってよ。……って、死人に口無しだよね」
じゃあね、と恭子はバイクに向かって歩き出す。
バイクに乗り、実家に戻る恭子。
「ただいま」
「おかえり」
その時、激しい地響きが起きた。
「地震!?」
棚の荷物が落下する。
やがて地震は治る。
直後、避難警報が発令する。
「アリス、逃げましょう」
「どこに?」
「これ、怪獣の出現よ」
恭子は家を飛びした。
「アリス!?」
街のあちこちを駆け回り、怪獣の元へ向かう恭子。
向かい側からは避難をする群れの波。
怪獣に辿り着いた恭子は、拳銃を取り出す。
現場では他の治安部隊が活動していた。
恭子は怪獣を銃撃する。
「ぎゃおおおお!」
怪獣の咆哮。
背中が赤く光り、ミサイルが飛んでくる。
「うわああああ! マジかあ!」
恭子はミサイルに背を向けて逃げ出した。
ミサイルの雨が恭子を襲う。
「ぎゃああああ!」
恭子は爆発に巻き込まれ、吹っ飛ばされた。
手元にはスティック。
いつもの癖でボタンを押すと、アストライアの姿に変わるが、彼女はその場に片膝をついた。
『おい、貴様。回復していないのに私を呼ぶとは血迷ったか?』
「ごめん。でも力を貸して」
『いいだろう。お前のそういうところ嫌いじゃない』
アストライアは立ち上がり、怪獣の懐に潜り、攻撃をいなしながらカウンターを浴びせて追い詰めていく。
「なんだ、普通に戦えるじゃん」
『かなりきついけどな。動かすのはお前で痛みは全部こっちに来るんだよ』
「ごめんね。すぐ終わらせるから」
アストライアは怪獣の反撃をかわしながら虫の息まで追い込み、トドメのヴァルシアブラストでその巨体を木っ端微塵に吹き飛ばしてみせた。
爆風が吹き荒れ、辺り一面に砂埃が巻き上がる。
地上では戦いの一部始終を見ていた人々が歓喜の声と共にエールを送ってくる。
アストライアは恭子の姿に戻り実家へと帰った。
家に入ると、ニュース速報でアストライアの戦闘が報道されていた。
アストライアについては、恭子は母に話してはいなかった。
「おかえり。見てみて、アリス。巨人よ」
「うん、そうだね」
「怪獣を倒すなんてカッコいいわ」
「うん、そうだね」
「あなた、さっきからそうだけど、まともに聞いてるの?」
「いや、私が行った地球でも怪獣と巨人はいたから、あまり驚かないというか」
「感覚が麻痺してるのね」
「ごめんね」
恭子はソファに腰掛けた。




