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異世界転生救済課─「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」【フォーニーファミーリア】  作者: ねず ただひま
事予則立の章

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36/43

36. トロール

◇紫雲英《げんげ》班・ポイントR◇



 紫雲英《げんげ》班のオフィスでは、繁縷《はこべ》がひとりで留守を預かっていた。バーカウンターで、酒の入った瓶をあおりながら音楽を楽しむ彼の耳に、帰還のサイレンが届く。

 ゆっくり立ち上がり、なおもカリブ海発祥の音楽に身を揺らせながら、帰還地点であるラウンジ奥の扉を開いた。


 部屋の中には、ぐったりと倒れている三人の男がいた。紫雲英《げんげ》、白朮《をけら》、吾亦紅《われもこう》だ。異常な熱気に包まている紫雲英《げんげ》の元へ、繁縷《はこべ》は駆け寄った。


「大丈夫かよ班長!? あ、熱っちぃ!!」


 苦しそうに呼吸をする三人の体からは、もうもうと湯気が立ち上がっている。焦点の定まらない瞳で、意識は朦朧としているように見えた。


「み、水を持ってくる! ちょっと待ってろ!」


 繁縷《はこべ》が部屋から出ようとした時、玄関の扉が開く音がした。大勢の足音は、迷うことなく紫雲英《げんげ》たちの居る部屋に向かってゆく。


「なんだよお前ら!?」


 繁縷《はこべ》が見たのは黒スーツの救済課の者たちだ。彼らは紫雲英《げんげ》たち三人を取り囲んだ。

 遅れて一人、カツカツと高い足音を立て、女が現れた。


 騒ぎに気づいた紫雲英《げんげ》が女に視線を向ける。


「黒百合《くろゆり》か……」


 黒百合《くろゆり》は眼鏡を直して紫雲英《げんげ》を見下した。手には硝子の林檎を持っている。


「おかえりなさいませ、紫雲英《げんげ》班長」


 表情の無い顔でそう言うと、差し出すように林檎を紫雲英《げんげ》に向けた。そこから蒲公英《たんぽぽ》の声が聞こえはじめる。


『荊《うばら》の追跡、ご苦労だったな紫雲英《げんげ》。お前ほどの男でも手に余すとは、随分手強い部下に噛まれたな。まぁ、後のことは英《はなぶさ》たちに任せて、お前はゆっくりと体を休ませろ。その後で話を聞いてやる……おい、運んでやれ』


 蒲公英《たんぽぽ》の指示で倒れている三人は抱え上げられ、オフィスから連れ出された。紫雲英《げんげ》は何も言わず、ただ悔しそうに唇の端を歪めた。


「なぁ? 一体どうなってんだよ!」


 いまだ状況が掴めない繁縷《はこべ》は、去ろうとする黒百合《くろゆり》に尋ねた。


「内密に処理するには、時間をかけすぎたのよ。アナタたちは……」


 振り返らずに、ただ呆れたようにそう答えた黒百合《くろゆり》は部屋を後にした。

 


次回、千代草《ちよぐさ》たちに転機が訪れる!?


『報せ』お楽しみに

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