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異世界転生救済課─「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」【フォーニーファミーリア】  作者: ねず ただひま
事予則立の章

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29. 蟻さんに囲まれる

千代草ちよぐさ



「あ、蟻ッ!?」


 黒光りする集団はたちまち私たちを取り囲んだ。赤い目でこちらをずっと見据え、ハサミの口をカチカチと鳴らして威嚇する。


「へぇ〜、コイツら、天敵のアリジゴクが死んだ途端にワラワラと集まりやがって、凄い嗅覚じゃねぇかよ」


 この後に及んでまだ楽しそうな顔をする麝香じゃこうさんに嫌気が差した。この数を相手に戦うつもりなのだろう。


麝香じゃこうさん! 一旦休戦しましょう! まずはここから逃げ……!」


 自分でそう言って途中で気づいた。たかむな君は!? 彼を見捨て逃げられない!


「逃げんのかよ? あのガキ様をここに置いて」


 くっ! ……仕方ない!


「シロ! 出ておいで!」

 斜め掛けの白いポシェットの蓋をめくると、小さな開口部から、ぬっと真っ白なドラゴンが飛び出す。幼体だけど小型のダンプカーほどの大きさだ。

 シロはグルルと喉を鳴らして蟻の群れを一通り睨んで威嚇すると、次に麝香じゃこうさんを睨んだ。両の前足を地面につけて身を屈め、いつでも彼女へ向かって飛び掛かれる姿勢になった。


「違う! そっちじゃない! シロ! たかむな君の匂いを探して!」


 私の口から流れてる血が、麝香じゃこうさんの攻撃によるものだと気づいているんだ。


「おいおい〜、コイツ様は躾がなってねぇなぁ、誰様を睨んでんだよ?」

 麝香じゃこうさんがまたチェーンを振り回しはじめた。


「お願い! やめて!」

 牙を剥き出しにして唸るシロにしがみつく。なにひとつ自分の思い通りにならなくて、悔しくて泣きそうになった。こんな時、はなぶささんなら、九鬼くき班長ならどうするのだろう……そう思っていた時、蟻の群れの一角が崩れた。


 ドドーーン!


 突然、洞窟奥からアリジゴクが現れたのだ。


「なんだぁ!? さっき死んだヤツのつがいかぁ?」


 二匹目のアリジゴクは蟻達を角で次々と蹴散らしていく。思わぬ天敵の登場に、蟻たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。アリジゴクはそれを追って洞窟の暗闇へと消えた。


 取り残された私たちは、呆然とその姿を見て立ちすくむ。

 

 ………助かった? でも、どこから現れたの?



「みなさん、だ、大丈夫ですか?」


 声のする方を見ると、砂にまみれたたかむな君が立っていた。


たかむな君! 大丈夫!?」

 私は慌てて彼に駆け寄り、体についた砂を手でパシパシと払った。


「痛むところはない!? 怪我は!?」


「僕は大丈夫です、それより、無事でよかった」

 彼は胸に手を当て、文字通り胸を撫で下ろした。


「さっきのアリジゴク様はぁ、ありゃお前様の能力か? 魔力っぽい匂いがしたぜぇ」

 麝香じゃこうさんがそう言った。たしかに、この場に魔力の残滓が感じられる。


「そうです、僕の棒人間ドゥードゥルで、そこのアリジゴクをコピーして発動させました」


「凄い……」

 思わずそう呟いていた。

「ありがとう! たかむな君! キミ、凄いよ!」

 私は彼の両肩を正面から掴んで喜んだ。たかむな君は恥ずかしそうに頬を指で掻く。


「んで? コイツはどーすんだよ? 千代草ちよぐさ様ァ」

 麝香じゃこうさんは自分に向かって唸り続けるシロを指差している。私は一度、ゆっくり深呼吸する……

 

 そしてもう一度、今度は両腕を広げて深呼吸した。


「……ごめんなさい、麝香じゃこうさん。やっぱり私は貴女とは合わないし、貴女の事が嫌いです。しかも大ッ嫌いです」


「おぉ、言うじゃねーか?」

 彼女は腕組みをして、私を見据えている。


「それでも! ……この任務には貴女の力が必要不可欠なんです! だから、一旦私たちと手を組んで下さい……お願いします!」

 頭を下げて手を差し出した。すると、シロが唸るのをやめ、静かになる。


 ……「チッ」

 舌打ちが聞こえ、ドキっとした。また殴られたらどうしようと考えて、空いている方の腕でお腹を守る。


 パン!


 差し出していた手が軽快な音を鳴らした。彼女に軽く叩かれたんだ。


「今回だけ……だぜぇ」

 顔を上げて目を合わせると、彼女はプイっと背中を向けた。ちゃんと気持ちを伝えれば、分かってくれる人なのかな? それに……もしかして、この人、ちょっと照れてる?


 そう思った時、麝香じゃこうさんが耳に手を当てた。


「アタイ様だぁ、どした? 馬酔木あしび様ぁ?」


 あ、なんだ、通信か……そうだ! 他のメンバーに連絡しなきゃ!


 私は耳に装着している通信機を使い、はなぶさ班長へ繋いだ。しかし、返事はなかった。耳の中は無音の状態。まるで電源が入っていないかのようだった。


「あれ? こんな時に故障したの!? たかむな君! 通信機、使える?」


 たかむな君は耳に手を当てて通信機を触ったけれど、不安げな顔で首を横に振った。




 ──「わかった……後で」


 麝香じゃこうさんが通信を終え、彼女は振り返ると私にこう告げた。


花冠かかん様がうばら様に撃たれて死にそうだ。あいつら様と合流するぞ」


 それを聞いて私の鼓動が大きく跳ねた。




 次話からははなぶさパートです。滝壺に落ちてしまったはなぶさ九鬼くき。二人の運命は……?


*次回、『ハートブレイク滝の裏』


 ★とかブクマとかリアクションが欲しいお年頃です。

 ♪( ´▽`)


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