表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生救済課─「お前を、この異世界から排除《ドレイン》する……」【フォーニーファミーリア】  作者: ねず ただひま
事予則立の章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/27

26 花冠《かかん》と馬酔木《あしび》

花冠かかん馬酔木あしび・岩場◇



 雲一つ無い乾いた青空の下、黄金色の砂の大地からは、突き出した赤茶色の岩盤が無数にそびえ立っている。その連なりは、まるで迷路のように入り組んでいた。


 花冠かかんは岩場の陰で息を潜め、様子を窺うように頭を出す。襲われているのだ……先ほどまで仲間だった馬酔木あしびに。

 出発地点で一緒に居たはなぶさ達の姿はここには無い。他の仲間たちとは別の地点へ到着してしまったようだ。



 ────「どうした、花冠かかん……お前はかくれんぼが趣味だったか?……」


 馬酔木あしびの声が反響しながら耳に届いたが、花冠かかんからはその姿が見えない。

 この異世界に転送され、はなぶさ達と離れ離れとなった瞬間、馬酔木あしびに腕を斬りつけられた。その傷がズキズキと痛む。

 腕をハンカチで抑えているが、乾いた大地に血が落ちていた。


馬酔木あしび! 今ここで俺たちが争うことに何の意味がある!? 紫雲英げんげさん達を助ける気はないのか!?」

 花冠かかんの声は、入り組んだ岩場で幾重に重なった。


「もちろんそれが最優先だが……お前をテストしてやる……使えるなら生かす……使えないなら、今ここで殺す……」

 

 馬酔木あしびの声も反響していたが、最後の方の台詞が、岩に反射する前に花冠かかんの耳に直接届いた。


 馬酔木あしびはすぐ近くにいる!

 花冠かかんは直感した。うしろだ。


 咄嗟に身を屈める。さっきまで背中をつけていた岩盤から、ガキン! と音が聞こえると、岩が一直線に切り裂かれた。

 花冠かかんは振り向き、馬酔木あしびを視認すると、背中を向けて逃げ出した。


「日和ったか! 花冠かかん!」


 馬酔木あしびがバッと両手を広げると、岩盤と砂の地面に、幾つもの線状の裂け目がつけられた。土埃が舞う中、花冠かかんは必死に逃げたが、足を傷つけられてしまい、思わずその場に倒れ込む。


「ぐっ!」


「お前……ふざけているのか? なぜ戦わない?」

 馬酔木あしびが倒れた花冠かかんへゆっくり歩み寄る。


「仲間割れしてる場合じゃない……お前だって理解してるだろ?」

 花冠かかんはそう答えて睨みつける。


「お前はもう俺の相棒ではない……はなぶさ班のメンバーだ……つまり、仲間じゃない」


「子供のような屁理屈だ……作戦中の()()仲間だろ!」


 馬酔木あしびは大きなため息をついた。

「やれやれ……面白い返しもできなくなっちまったか……冷めるぜ……英達ガキどものお守りなんかやっているせいか? あんな奴らと一緒にいて一体何が楽しいんだか……」


「楽しいさ。お前には分からんだろうが、追跡者トラッカーを生み出さない彼のやり方は素晴らしい。救出対象者ドリーマーの精神的負担を減らし、俺たち実動員が戦うこともない。それに、他の部署の迷惑にもならないんだ。俺の仲間の……はなぶさ班のこと悪く言うな!」


 花冠かかんは歯を食いしばる。


追跡者トラッカーを生み出さないやり方が楽しいのか? 追跡者トラッカー救出対象者ドリーマーの目の前で蹂躙し、異世界転生した事を後悔させて楽しんでいたお前の口から、まさかそんな温い言葉が聞けるとは……」


 馬酔木あしび花冠かかんを見下ろし、懐からタバコを取り出すとオイルライターで火を付けた。


「目を覚ませ……花冠かかん。お前が居るべき場所は紫雲英げんげ班だ……この件が終われば、俺から紫雲英げんげ班長に話を通してやる……帰ってこい」


「お断りだ」


「ああ、そうか……」


 馬酔木あしびがタバコを咥え、煙を深く吸い込んだ瞬間だった。花冠かかんの視界の端、岩盤の僅かな隙間から見える砂丘の奥で、何かが小さく光った。花冠かかんの背中に寒気が走る。


「危ないッ!!」


 そう叫ぶと、花冠かかん馬酔木あしびに飛び付いた。一筋の閃光が、花冠かかんの体を貫き、二人は砂の地面に倒れ込む。


「何だッ!?」


 馬酔木あしびは自分に覆い被さった花冠かかんの体をどけると、手には生暖かく、赤い血がべっとり付いていた。

 花冠かかんの体をよく見ると、腹部からの出血があった。


 馬酔木あしびは理解した。


「……! うばらかッ!?」


 瞬時に花冠かかんの服を掴み、砂の上を引きずって岩場の陰に隠れる。

「がはっ!」花冠かかんが血を吐いた。


「馬鹿がッ! 誰を庇ってやがる!!」


 馬酔木あしびの怒声に花冠かかんが答える。

「俺はもう……戦わない、ただ守る為に救済課にもどったんだ……」


「クソッ!」


 馬酔木あしびは耳に装着してある通信機で千代草ちよぐさを呼び出す。


「おいッ! 千代草ちよぐさぁ! 聞こえるか!? 花冠かかんが撃たれた! お前の出番だぞ!」


 馬酔木あしびは怒鳴るように伝えたが、千代草ちよぐさ側からは何の応答も無かった。コチラの通信を傍受した感触が無い。


「チッ! 故障か!?」

 馬酔木あしびが舌打ちすると、花冠かかんに飛びつかれた時に落としたタバコが、バシュンと弾け散った。うばら放った二発目だ。


「おい……マジかよ? ここから宮殿まで六キロメートル以上あるぜ……」


 この時から、馬酔木あしび花冠かかんは、この岩場から動くことが出来なくなってしまったのだ。

 


 いつも読んでいただきありがとうございます♪

 今回の任務も一筋縄ではいかないようです。


*次回、『千代草ちよぐさ麝香じゃこう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ