18. 続、異世界転生救済課だよ! 全員集合!
◆英◆
紫雲英班の四人が、俺たちの前に立ちはだかる。ギザギザの歯を見せて笑う麝香、落ち窪んだ目で俺をじっと見据える緋衣、サングラスを掛け、視線の読めない馬酔木、口ひげ、顎ひげ、ドレッドヘアーの男、繁縷は、首にかけた大きなヘッドフォンからレゲェを音漏れさせている。
……来たのは四人か。
紫雲英班には後、白朮という爺さんと、諜報員の吾亦紅が居るのだが、蒲公英課長の予想通り、その二人は紫雲英と共に一柳ツキが創った砂漠の異世界に潜入しているのだろう。
課長の命令は絶対だ。過去何度も緊急で招集をかけたことがあったが、紫雲英が欠席したことは一度もないそうだ。今、この場に姿を見せないのは、荊相手に手を焼いているからに違いない。
「お疲れ様だぜぇ〜、英班長様ァ」
「お疲れ様です。麝香さん。それに紫雲英班の皆さん。お集まりいただきありがとうございます」
呼びつけておいてなんだが、俺はなるべくコイツらを刺激しないように穏やかな口調で挨拶をした。
「ところで、今日の出席について課長からのメールに返信がなかったと、さっき黒百合から聞きましたが?」
「返信しなきゃならないルールなんてあったか? そもそも俺は代理を頼まれたんだが……俺では不満か? 英班長……」
「いいえ、四人も来ていただいたうえ、その中に馬酔木さんまでいらっしゃるとは、嬉しい限りです」
俺は作り過ぎない程度の笑顔を見せる。馬酔木が少しイラついているのは、荊の件を隠さなければならないからだろう。
「それで……わざわざ救済課にいる全員を集めて、これは一体何の騒ぎか……? 仮面舞踏会に招待された覚えはないのだが……」
馬酔木の一言で、芙蓉と花冠の背中に隠れている千代草の肩がビクッと跳ねた。
「まぁまぁまぁいいじゃん、馬酔木の兄貴。オイラ、こーゆー触れ合いの場ってのは好きだぜぇ。出会いってのは神様が与え給うた運命のプレゼントだと思ってる。 なぁ、そこの姉ちゃん! アンタもそう思わねぇか?」
繁縷が桔梗に視線を向ける。
桔梗は「そ、そうね」と言うと、眉根を寄せて花冠の腕にしがみついた。繁縷が苦手なタイプなのだろう。
……ん? 馬酔木がサングラスの奥で花冠を睨みつけている気がする。花冠からは、警戒するような空気が感じられた。
「それよかさぁ、そっちの二人は英班の新入り様かぁ?」
麝香が筍と、隠れているアイラちゃんを順番に指差した。
「えぇ、そうです」
「筍です! 宜しくお願いします!」
俺が答えると同時に筍は大きな声で挨拶をした。
「いいねぇ! 緊張と不安が混濁したフレッシュな一言だ! 長年の任務で爛れたオイラの心が洗浄されちまうぜぇ!」
繁縷は笑いながら指をパチンと鳴らし、
麝香は花冠の背後に回り込み、アイラちゃんの顔を覗き込んだ。
「ふ〜ん。で、お前様は挨拶してくれねぇのかぁ? んん?」
アイラちゃんはそっぽを向くが、麝香は追いかけて反対側から覗き込む。
まぁ、確実にバレてるよな……面倒ごとにならないよう、麝香に別の話題を振ろうとした時、部屋の隅で集まった人達から、わっと歓声に似た声が耳に届いた。
スラリとした長身とプロポーション、金髪にポニーテール、顔に大きな傷があるが、整った顔立ち……施覆花さんと南天の二人を従え、入室してきたのは九鬼班長だ。緊張で張り詰めていた会場内の空気がガラリと変わった。
九鬼班長は、どの部署からも人気がある。男性職員が色めきだつのは理解できるが、噂では、女性職員達の間でファンクラブが結成されているらしい。彼女はあちこちから上がる黄色い声に、やや困り顔で手を上げて挨拶しながら俺たちへ近づいてきた。
「久しぶりだな……英班長」
久しぶりに会った九鬼班長は、俺を見ると白い歯をのぞかせた。俺の鼓動は一度だけ強く高鳴る。
「お久しぶりです! 九鬼班長ッ!」
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*次回、『全員を納得させて、こっそり特命に道連れ計画』




