表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/60

第56話:世界消滅危機

空の数字は、容赦なく減り続けていた。


00:08:01


00:08:00


00:07:59


世界の終わりまで、あとわずか。


王都の上空に広がる亀裂は、すでに空の半分を覆っていた。


その向こう側には、青空ではなく。


無数の光。


流れ続ける文字列。


そして、理解できない記号。


まるでこの世界の裏側が、むき出しになっているようだった。


地面が揺れる。


王城の塔の一部が、音もなく崩れた。


石が落ちるはずの場所で、石は途中で消えた。


「……っ」


セレフィーナは息を呑む。


街の一角が、突然ノイズのように歪んだ。


建物が透ける。


人の姿が一瞬、消える。


そして戻る。


世界そのものが、不安定になっていた。


王城の屋上。


ミリアは空を見上げながら言った。


「崩壊が加速してる」


その声は冷静だった。


だが、どこか焦りも混ざっている。


王子が眉をひそめる。


「あとどれくらいだ」


セレフィーナの視界には、まだあの画面が見えていた。


カウントダウン。


残り時間。


彼女は震える声で答える。


「……七分」


王子は黙った。


七分。


それがこの世界の寿命。


その時、遠くの広場から悲鳴が上がる。


「人が……!」


誰かが叫んだ。


三人が振り向く。


広場で、一人の男の体が透けていた。


輪郭が崩れ、粒子のようになっている。


やがて。


その姿は、音もなく消えた。


残ったのは空白だけ。


誰かが震える声で呟く。


「……消えた」


人々の顔が青ざめていく。


セレフィーナの指が震えた。


「……始まってる」


沈黙の中で、ミリアが言った。


「作戦をやるなら」


空を見上げる。


「今しかない」


王子が聞く。


「管理者を引きずり出す方法か」


ミリアは頷く。


「管理者は基本的に」


「この世界に入ってこない」


「観測するだけ」


セレフィーナが聞く。


「じゃあ……どうやって」


ミリアは薄く笑った。


「世界を壊す」


王子が眉を上げる。


ミリアは続ける。


「完全崩壊寸前になると」


「管理者は緊急ログインする」


「復旧のためにね」


セレフィーナの目が揺れる。


「でも……」


「世界を壊したら……」


ミリアは肩をすくめた。


「もう壊れてる」


そして静かに言う。


「何もしなければ」


「全員消える」


王子が前に出た。


「ならやる」


セレフィーナが振り向く。


王子の目は迷っていない。


「この世界は」


街を見る。


瓦礫の中で、人々が助け合っている。


泣く子供を抱く母親。


負傷者を運ぶ兵士。


「もう舞台じゃない」


王子は言う。


「俺たちの世界だ」


その時。


遠くの街から声が上がった。


「聖女様!」


振り向く。


王都の人々が、こちらを見ていた。


誰かが叫ぶ。


「やってくれ!」


別の声。


「俺たちは消えてもいい!」


「でも……!」


老人が言う。


「この世界を残してくれ!」


セレフィーナの胸が締め付けられる。


涙が滲む。


その瞬間。


彼女の視界の画面が変化した。


自律思考率


68%


ミリアが小さく息を吐く。


「……やっぱりね」


セレフィーナが聞く。


「何?」


ミリアは空を指さす。


「NPCが自我を持ちすぎてる」


「それがシステムを壊してる」


空にエラーが走る。


シナリオ衝突


キャラクター行動不一致


イベント同期失敗


世界が大きく揺れた。


地面に亀裂が走る。


空の亀裂がさらに広がる。


ミリアがセレフィーナを見る。


「ヒロイン権限」


「まだ使えるよね」


セレフィーナは頷く。


「少しだけ……」


ミリアは言う。


「イベントを全部起こして」


セレフィーナが目を見開く。


「全部……?」


ミリアは笑った。


「そう」


「王都決戦」


「魔王討伐」


「学園祭」


「聖女覚醒」


「全部同時」


王子が理解する。


「システムをパンクさせるのか」


ミリアは頷く。


「そうすれば」


空を見る。


「管理者が出てくる」


セレフィーナの手が震える。


失敗すれば。


世界は完全崩壊。


だが。


カウントダウンは止まらない。


00:04:12


セレフィーナは目を閉じた。


そして。


涙を拭く。


ゆっくりと空へ手を伸ばす。


光の画面が開く。


ヒロイン権限メニュー。


彼女は言った。


「……やる」


王子が頷く。


ミリアが笑う。


セレフィーナは、コマンドを選んだ。


全イベント強制起動


指が震える。


それでも。


押した。


その瞬間。


世界が爆発した。


空が完全に割れる。


時間が歪む。


街の上に、無数のイベントの光が同時に発生する。


そして。


空に、新しい文字が浮かんだ。


今までとは違う。


明確な、外部の存在。


緊急対応プロトコル起動


管理者ログイン検出


ミリアが空を見上げて笑った。


「来たね」


世界の外から。


ついに。


管理者が侵入した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ