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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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57/60

第57話:原因判明 ―原因:セレフィーナ―

空が、静まり返っていた。


崩壊の轟音さえ、一瞬だけ止まったように感じられる。


裂けた空の奥から、何かが降りてくる。


光。


無数の線。


組み合わさる多角形。


それは人の形をしていた。


だが、人ではない。


輪郭は不安定で、顔はぼやけている。

声は一つではなく、いくつもの音が重なっていた。


王城の屋上に、ゆっくりと降り立つ。


そして、その存在は言った。


「異常確認」


冷たい声。


「世界崩壊レベル:致命的」


セレフィーナの視界に、新しい表示が浮かぶ。


管理者ログイン完了


ミリアが小さく息を吐いた。


「本当に来た」


王子は剣を抜く。


「貴様が……」


だがミリアが肩をすくめる。


「やめた方がいいよ」


「その剣、たぶん意味ない」


管理者は王子を見ない。


ただ空間を見ている。


世界全体を観測しているようだった。


やがて、ゆっくりと口を開く。


「崩壊原因」


一瞬の沈黙。


空に文字が浮かび上がる。


崩壊原因特定


次の瞬間。


その文字が変わる。


原因:ヒロインキャラクター


セレフィーナ


「……え」


セレフィーナの声がかすれる。


王子が叫んだ。


「ふざけるな!」


剣を向ける。


「彼女が原因だと!?」


管理者は反応しない。


ただ事実を読み上げるように言った。


「本世界」


「恋愛シミュレーションゲーム」


空に次々と情報が表示される。


ゲームタイプ:乙女ゲーム


目的:恋愛エンディング確定


セレフィーナの胸が締め付けられる。


管理者は続ける。


「ヒロインの役割」


「攻略対象との恋愛成立」


「シナリオ進行」


「エンディング確定」


王子が吐き捨てる。


「だから何だ」


管理者は言った。


「物語は」


「完結することで」


「世界が安定する」


空に新しい表示。


世界安定条件


エンディング確定


セレフィーナの指が震える。


「でも……」


管理者の声が落ちる。


「ヒロイン」


「恋愛成立なし」


「シナリオ逸脱」


「NPC自我拡張」


空のエラーが増えていく。


シナリオ破綻


イベント同期失敗


世界構造不安定


ミリアが小さく笑った。


「なるほどね」


腕を組む。


「つまり」


管理者を見る。


「恋愛ゲームなのに」


「ヒロインが恋をしないから壊れた」


管理者は答えた。


「正確」


セレフィーナの呼吸が浅くなる。


王子が前に出る。


「違う」


管理者を睨む。


「彼女は人を救った」


「街を守った」


「戦争も止めた」


声が強くなる。


「それの何が異常だ!」


管理者の返答は、あまりにも淡々としていた。


「シナリオ外」


ただそれだけ。


セレフィーナの視界の画面が揺れる。


データが流れる。


この世界の構造。


設定。


役割。


そして。


彼女の項目。


ヒロイン:セレフィーナ


役割:物語の中心


管理者が言う。


「ヒロインは」


「世界の中心」


「ゆえに」


一瞬の間。


そして。


「世界崩壊の原因」


セレフィーナの足が震えた。


「……私」


頭の中に、人々の顔が浮かぶ。


王都の子供たち。


兵士。


避難民。


魔族の青年。


皆、笑っていた。


泣いていた。


生きていた。


セレフィーナの声が震える。


「じゃあ……」


涙がこぼれる。


「私が……」


「いなければ……」


管理者は答える。


感情もなく。


迷いもなく。


「世界修復可能」


空に文字が浮かび上がる。


修復方法提示


王子が叫ぶ。


「黙れ!」


だが表示は続く。


冷酷に。


ヒロイン削除


世界が、静まり返った。


誰も声を出せない。


王子の剣が震える。


ミリアは空を見つめている。


そして。


セレフィーナは。


ゆっくりと立ち上がった。

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