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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第53話:キャラ自我発生

王都の空に浮かんだ文字は、まだ消えていなかった。


新ルート生成


ヒロイン反逆ルート


人々はその意味を理解できないまま、ただ不安そうに空を見上げていた。


しかし。


世界は、確実に変わり始めていた。


王都の城門。


兵士の一人が、槍を持って立っている。


いつも通りの見張り。


……のはずだった。


兵士はふと、遠くの空を見た。


黒く裂けた空。


そして浮かぶ文字。


「英雄 vs 魔王」


彼は小さく呟く。


「……魔王」


頭の中に、いつもなら自然に浮かぶ言葉。


討つべき敵。


だがその瞬間。


兵士は眉をひそめた。


「……なぜだ?」


隣の兵士が振り向く。


「どうした?」


「いや……」


兵士は槍を見つめる。


「俺たちは魔王を倒すんだよな」


「当然だろ」


即答。


だが兵士は続ける。


「……なんで?」


沈黙。


隣の兵士は口を開きかけて、止まった。


「……なんで?」


その問いに、答えが出てこない。


今まで一度も考えたことがなかった。


ただ当たり前だった。


魔王は敵。


英雄はそれを倒す。


それだけの話だった。


だが今。


その「当たり前」が、どこにも見つからなかった。


王宮の会議室。


評議会が開かれている。


貴族たちが不安そうに議論していた。


「このままでは王都は危険だ!」


「王子殿下を英雄として出陣させるべきだ!」


いつもの主張。


いつもの流れ。


だが。


一人の老貴族が静かに口を開いた。


「……本当にそうでしょうか」


全員が振り向く。


老貴族はゆっくり言った。


「戦争を望んでいるのは、誰です?」


沈黙。


別の貴族が言う。


「それは……魔族が攻めてくるから」


「ですが」


老貴族は静かに続ける。


「魔族はまだ攻めてきていません」


また沈黙が落ちる。


今までなら、そんな意見は出なかった。


英雄が戦う。


それが当然だったからだ。


だが今。


貴族たちは初めて考えていた。


自分の言葉で。


王都の外。


丘の上。


魔族軍が陣を張っている。


魔族の兵士たちがざわめいていた。


「空が変だ」


「世界が壊れてる」


その中で、一人の若い魔族がミリアの前に出た。


「魔王様」


ミリアは振り向く。


「なに?」


若い魔族は少し迷ってから言った。


「……質問があります」


ミリアは面白そうに笑う。


「どうぞ」


魔族は真剣な顔で言った。


「魔族は、なぜ人間と戦うのですか?」


周囲が静まり返る。


今まで、誰もそんなことを聞かなかった。


魔族は人間と戦う。


それが世界のルールだったから。


ミリアは少しだけ考えた。


そして笑った。


「いい質問」


腕を組む。


「たぶんね」


「理由なんてない」


魔族たちがざわつく。


ミリアは空を見上げる。


裂けた空。


浮かぶ文字。


「ただの物語だったんだよ」


王都。


王子は街を歩いていた。


人々の会話が聞こえる。


「戦争になるのか?」


「いや、ならないかもしれない」


「英雄って誰なんだ?」


以前とは違う。


昔なら人々は言っていた。


「王子が魔王を倒す」


だが今は違う。


人々は


自分で考えている。


王子は小さく呟いた。


「……役割が消えている」


その言葉の意味を、王子自身が理解していた。


教会の前。


セレフィーナも同じ光景を見ていた。


人々が話している。


怒り。


恐れ。


希望。


それぞれが自分の言葉で語っている。


誰も決められた台詞を言わない。


誰も「物語の役」を演じていない。


セレフィーナは小さく息を吐いた。


「……これが」


空を見る。


「人間なんだ」


その時。


空にまた新しい文字が現れた。


キャラクター自律思考発生


発生率:上昇


遠く、見えない場所。


世界の外。


巨大な空間で、無数の光の画面が並んでいた。


その一つに、警告が表示される。


異常現象


NPC自我発生


別の画面。


原因:ヒロイン反逆ルート


シナリオ未定義領域


誰かが低く言った。


「ありえない」


乙女ゲームのNPCは、ただの役割。


与えられた台詞を言い。


決められた行動を取る。


それだけの存在。


だが今。


画面の中のキャラクターたちは


自分で考え始めていた。


別の声が言う。


「このままでは観測不能になります」


沈黙。


そして、低い声が言った。


「……介入する」


別の画面が開く。


そこに表示される。


管理者介入準備


その頃。


王都。


セレフィーナは空の文字を見上げていた。


その意味は分からない。


だが彼女は微笑んだ。


「いいじゃない」


静かに言う。


「それで」


その瞬間。


空がわずかに揺れた。

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