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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第50話:乙女ゲーム世界

王都の空に、亀裂が走っていた。


まるで空そのものが割れているかのように、黒い裂け目がゆっくり広がっていく。


王宮の塔の上で、王子はそれを見上げていた。


兵士たちがざわめく。


「空が……」


「何だあれは……!」


誰も理解できない。


だが王子だけは、うっすらと分かっていた。


視界の端に、まだ残っている。


薄く光る文字。


システム警告


シナリオ逸脱


世界安定度:低下


王子は小さく息を吐いた。


「やっぱりか」


英雄出陣。


魔王討伐。


それを拒否した瞬間、世界が壊れ始めた。


つまりこの世界は、本当に――


「物語で出来ている」


王子はそう呟いた。


教会。


半壊した聖堂の中で、セレフィーナは負傷者の手当てをしていた。


「もう大丈夫ですよ」


布を巻きながら優しく言う。


子供が不安そうに見上げる。


「お姉ちゃん……空、怖い」


セレフィーナは空を見た。


確かに。


王都の空の一部が歪んでいる。


黒い亀裂。


まるで世界の向こう側が見えそうなほど深い裂け目。


その瞬間。


セレフィーナの視界が揺れた。


目の前に、文字が浮かぶ。


ヒロインイベント未達成


王子好感度:不足


ルート進行率:低下


セレフィーナは思わず後ずさる。


「……なに、これ」


子供が不思議そうに見る。


「どうしたの?」


だが子供には見えていない。


セレフィーナだけが見える。


浮かぶ文字。


消えない。


彼女の胸が強く鼓動する。


「ヒロイン……」


あの白い空間。


管理者の声。


「あなたは主人公」


セレフィーナは震える手を握る。


「じゃあ」


「私の人生って……」


言葉にできない。


王都の外。


丘の上。


魔族軍が王都を見下ろしていた。


その中央で、ミリアは空を見上げる。


亀裂。


歪み。


そして見える。


世界の裏側。


ミリアはゆっくり手を上げた。


空へ触れる。


透明な壁。


その向こう。


指を押し込む。


空間が歪む。


そして。


視界が変わった。


暗い空間。


そこに巨大な構造が浮かんでいる。


光の線。


数字。


文字。


まるで世界そのものの設計図。


ミリアは目を細める。


「……すごい」


そこに表示される。


世界管理システム


観測型物語シミュレーション


ミリアはゆっくり読んでいく。


目的。


人間心理観測


社会進化研究


感情データ収集


そのための形式。


乙女ゲーム構造


ミリアは小さく笑う。


「本当に乙女ゲームなんだ」


画面を操作する。


キャラクター分類。


主人公ヒロイン


セレフィーナ


攻略対象


王子

王族

騎士


障害キャラ


貴族

教会


ラスボス


魔王ミリア


ミリアは自分の名前を見て肩をすくめた。


「悪役確定か」


さらに画面を進める。


そこに表示される別の項目。


周期システム


ミリアの表情が少し変わる。


説明が続く。


世界は周期的にリセットされる


1周期:約80年


記録が並ぶ。


過去の世界。


何度も繰り返された歴史。


聖女誕生。


恋愛。


魔王出現。


英雄覚醒。


魔王討伐。


平和。


そして。


リセット


ミリアはゆっくり息を吐いた。


「何百回も……」


世界は同じ物語を繰り返していた。


その時。


画面の一部が赤く光る。


今回のシナリオ異常


原因が表示される。


ヒロイン行動逸脱


詳細。


政治介入。


社会改革。


教会破壊。


ミリアは吹き出す。


「やりすぎだよ、あの子」


だが同時に理解する。


この世界が壊れている理由。


セレフィーナは。


恋愛を選ばなかった。


物語を進めなかった。


その結果。


ゲームが壊れた。


ミリアは画面の奥を見る。


さらに深いデータ。


そこに書かれていた。


システム干渉耐性


対象:


王子

セレフィーナ

ミリア


ミリアの目が細くなる。


「へえ」


つまり。


この三人は。


物語の外に立てる存在。


その瞬間。


空間に声が響いた。


あの声。


管理者。


「シナリオ崩壊率」


「危険域」


ミリアは空を見上げる。


声は続く。


「世界安定度低下」


「最終イベントを開始します」


ミリアが笑う。


「強制か」


その時。


王都の空に、巨大な文字が浮かんだ。


誰の目にも見える。


兵士も。


市民も。


教会の人々も。


全員が見上げる。


空に現れた光の文字。


FINAL EVENT


内容が表示される。


英雄 vs 魔王


王子が塔の上でそれを見る。


ミリアが丘の上でそれを見る。


そして。


教会の前で。


セレフィーナもそれを見上げていた。


沈黙。


街のざわめき。


空の亀裂。


そしてセレフィーナは小さく言う。


「そんなの」


拳を握る。


「させない」


乙女ゲームの世界は。


今。


本当に壊れ始めていた。

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