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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第49話:王子が真実を知る

王宮の会議室は重苦しい空気に包まれていた。


長い机の周りに、宰相、将軍、貴族たちが並んでいる。

壁際には騎士が立ち、窓の外には煙の残る王都が見える。


宰相が報告書を広げた。


「帝国軍は三日以内に国境を越える見込みです」


将軍が続ける。


「魔族軍も王都周辺に確認されています」


別の貴族が声を上げた。


「つまり挟撃だ」


「王都は危険だ」


「早急に軍を動かすべきだ」


言葉が次々に飛び交う。


だが。


王子は黙っていた。


椅子に座ったまま、ただ話を聞いている。


宰相が言った。


「殿下」


「王国軍を率い、魔族討伐へ出陣していただきたい」


将軍も頷く。


「王都防衛は我々が担当します」


「殿下は英雄として――」


その言葉で。


王子の胸の奥が、妙にざわついた。


英雄。


その言葉が、どこか不自然に響いた。


王子はゆっくり顔を上げる。


「……なぜ」


宰相が首を傾げる。


「殿下?」


王子は静かに言う。


「なぜ、そうなる」


宰相は当然のように答える。


「魔族軍が接近している」


「王国の王子が軍を率いる」


「そして魔王を討つ」


「それが最善の――」


そこまで言った時。


王子はふと気づいた。


その言葉。


どこかで聞いたことがある。


いや。


違う。


決められている。


会議の流れ。


発言の順番。


結論。


すべてが、まるで。


物語のように。


王子は目を細める。


「……変だ」


将軍が眉をひそめる。


「何がです?」


王子は答えない。


ただ、会議室を見渡す。


宰相。


将軍。


貴族。


全員が当然の顔をしている。


まるで疑問を持つ余地などないかのように。


その時。


王子の視界に、何かが浮かんだ。


薄い光。


空中に文字が現れる。


最初は幻かと思った。


だが違う。


はっきり見える。


キャラクター情報


名前:王子


役割:攻略対象/英雄


イベント:魔王討伐


成功率:92%


王子は息を止めた。


「……何だ」


画面は消えない。


むしろさらに文字が増える。


最終シナリオ進行中


イベント発生:英雄出陣


王子の背筋が冷たくなる。


思い出す。


白い空間。


世界管理者。


あの言葉。


「あなたは攻略対象」


「英雄」


王子は拳を握った。


「……そういうことか」


戦争。


政治。


この会議。


全部。


イベント。


物語の一部。


宰相が不思議そうに言う。


「殿下?」


王子はゆっくり立ち上がる。


椅子が小さく音を立てる。


会議室の視線が一斉に集まった。


宰相が言う。


「出陣の準備を――」


王子はその言葉を遮った。


「しない」


静まり返る。


将軍が聞き返す。


「……何を」


王子は答える。


「戦争だ」


部屋の空気が凍った。


貴族の一人が立ち上がる。


「殿下!」


「魔族軍が迫っているのですぞ!」


「今こそ英雄として――」


王子は静かに言う。


「その言葉」


貴族が止まる。


王子の声は低かった。


「誰が決めた」


誰も答えない。


王子は続ける。


「英雄」


「魔王」


「討伐」


一つ一つの言葉をゆっくり言う。


「全部」


王子は天井を見上げる。


そこにまだ薄く浮かんでいる。


システム画面。


王子は呟く。


「物語だ」


宰相が困惑する。


「殿下……?」


王子は窓の外を見る。


燃えた街。


苦しむ民。


泣く子供。


そして言った。


「俺は英雄じゃない」


会議室の空気が張りつめる。


王子は振り返る。


「人間だ」


沈黙。


誰も言葉を出せない。


その瞬間。


王子の視界の画面が赤く点滅した。


警告


シナリオ逸脱


システム安定度:低下


王子は小さく笑った。


「そうか」


「困るのか」


その時。


遠くで雷のような音が響いた。


王宮の窓が震える。


空を見上げた兵士が叫ぶ。


「空が……!」


会議室の全員が窓に駆け寄る。


王子も見る。


王都の空。


そこに。


黒い亀裂が走っていた。


まるで世界そのものが割れ始めているように。


王子は静かに言った。


「いい」


誰にも聞こえない声で。


「壊れるなら」


空を見上げる。


「壊せばいい」


その瞬間。


世界のどこかで。


また一つ。


システムが揺れた。

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