表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/49

第48話:ヒロイン覚醒

世界は、再び動き始めていた。


空中に止まっていた灰が落ちる。


鳥が羽ばたく。


炎が揺れる。


止まっていた時間が、何事もなかったかのように流れ出す。


だが。


それを知っている者が三人いた。


王宮。


王子は廊下を歩いていた。


兵士たちは慌ただしく走っている。


誰も異変に気づいていない。


時間が止まっていたことも。


世界がゲームだということも。


宰相が振り返る。


「殿下!」


「ご無事でしたか!」


王子は静かに頷く。


「……ああ」


宰相が続ける。


「王都の混乱はまだ続いております」


「帝国軍も接近」


「魔族の動きも――」


王子は窓の外を見る。


燃えかけた街。


混乱。


怒号。


そして小さく言った。


「止める」


宰相が聞き返す。


「何を?」


王子は答えなかった。


教会。


壊れた聖堂の中で、セレフィーナは立っていた。


人々はまだ混乱している。


神官が走る。


負傷者の声。


煙。


だが彼女の頭の中には、別の声が残っていた。


「あなたはヒロイン」


世界管理者の言葉。


彼女は拳を握る。


「そんなの……」


ヒロイン。


恋愛。


魔王討伐。


そのための物語。


だが。


セレフィーナは外を見る。


傷ついた人。


泣く子供。


助けを求める声。


彼女は静かに言う。


「関係ない」


ヒロインでも。


ゲームでも。


彼女のやることは変わらない。


「助ける」


それだけだった。


王都の外。


丘の上。


ミリアは静かに空を見ていた。


魔族軍は後ろで待機している。


兵たちは王都の混乱を見てざわめいていた。


だがミリアの意識は別のところにあった。


世界が再び動いた瞬間。


彼女は感じた。


薄い膜のようなもの。


この世界の裏側。


ミリアは空へ手を伸ばす。


何もない。


はずだった。


だが。


指先に、何かが触れた。


透明な壁。


ミリアは目を細める。


「……ここか」


さらに押す。


空間がわずかに歪む。


その瞬間。


彼女の視界が変わった。


黒い空間。


そこに文字が浮かんでいた。


光る文字。


不思議な記号。


だが意味は理解できる。


シナリオ進行率:82%


最終イベント:開始


ミリアは眉を上げた。


「本当にあるんだ」


画面のようなものが並ぶ。


キャラクターデータ


イベントフラグ


好感度情報


ミリアは笑った。


「ゲームだね」


指を動かす。


画面が変わる。


キャラクター一覧。


そこに名前があった。


主人公:セレフィーナ


ミリアがタップする。


データが開く。


だが。


警告が赤く光っていた。


ヒロイン行動逸脱


項目が並ぶ。


政治介入


社会改革


教会権力破壊


ミリアが吹き出す。


「やりすぎ」


さらに下を見る。


システムログ。


そこに表示されている。


シナリオ崩壊率:上昇


世界安定度:低下


ミリアは腕を組む。


「なるほど」


そして画面をさらに探る。


その時。


一つの項目が目に入った。


エンディング条件


ミリアの目が細くなる。


「……へえ」


そこには三つの選択肢があった。


通常エンド:魔王討伐


恋愛エンド:王子ルート


そして。


三つ目。


真エンド


ミリアはその内容を読む。


一行の文章。


ヒロインが世界システムを理解し、物語を拒否する。


ミリアは数秒黙った。


それから。


ゆっくり笑う。


「なるほど」


この世界は。


ただの乙女ゲームではない。


最後のルートは。


ゲームそのものを壊すこと。


彼女は空から手を下ろす。


システム画面が消える。


丘の上の風が戻る。


魔族軍のざわめき。


遠くの王都。


炎の街。


ミリアはその方向を見る。


そして呟いた。


「ヒロインはあんた」


遠くの教会。


セレフィーナがふと空を見上げる。


胸の奥で。


何かが、静かに動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ