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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第47話:ゲーム管理者

世界は、まだ止まっていた。


王都の空に浮かぶ灰。


空中で止まった鳥。


剣を振り上げたままの兵士。


時間は完全に凍っている。


その中で。


王子だけが歩いていた。


「……これは夢か」


誰も答えない。


だがその時、空が歪んだ。


白い光が広がる。


世界が静かに裂けるように。


王子の足元から、空間が溶けていった。


気がつくと。


そこは白い場所だった。


上下も遠近もない。


ただ、どこまでも続く白。


王子は周囲を見る。


「ここは……」


その時。


別の光が現れた。


教会の炎の中から歩いてきたのは、セレフィーナだった。


彼女も周囲を見て驚く。


「王子……?」


「君もか」


二人は互いを見つめる。


だが会話はそこで止まった。


三つ目の影が現れたからだ。


丘の上の風の中から。


黒い衣の少女。


ミリア。


魔王。


彼女は二人を見て、小さく笑った。


「やっぱり」


王子が眉をひそめる。


「やっぱり?」


ミリアは空を指した。


「ここは、そういう場所」


その瞬間。


白い空間の中心に、もう一つの光が現れた。


人の形をしている。


だが輪郭は曖昧。


光そのもののような存在。


それが言った。


「ようこそ」


声は男にも女にも聞こえる。


「選択者たち」


王子が一歩前に出た。


「誰だ」


光は静かに答えた。


「私はこの世界の管理者です」


沈黙が落ちる。


セレフィーナが呟く。


「管理者……?」


ミリアは腕を組む。


「やっと出てきた」


王子は理解できない顔だった。


「説明してもらおう」


光はゆっくり頷いた。


「もちろん」


そして言う。


「この世界は、ゲームです」


その言葉はあまりにも静かだった。


だが。


三人の空気が止まる。


王子が眉をひそめる。


「……何だと」


光は続けた。


「正確には」


「乙女ゲーム型世界シミュレーション」


セレフィーナが首を振る。


「意味が分かりません」


光は空間に手をかざした。


すると。


空中に映像が浮かぶ。


王都。


教会。


王子。


セレフィーナ。


ミリア。


すべてが俯瞰で映る。


「この世界は」


「文明維持と社会観測のために構築されたシステムです」


映像が変わる。


文字が並ぶ。


聖女誕生


王子登場


魔王出現


世界危機


恋愛イベント


魔王討伐


光は言った。


「これが基本シナリオ」


王子が低く言う。


「……ふざけるな」


光は続ける。


「王子」


「あなたは攻略対象」


王子の表情が固まる。


光はセレフィーナを見る。


「セレフィーナ」


「あなたは主人公」


「ヒロイン」


セレフィーナは言葉を失う。


そして。


光はミリアを見た。


「ミリア」


「あなたはラスボス」


「魔王」


ミリアは肩をすくめた。


「知ってた」


王子が振り返る。


「何?」


ミリアは空を見る。


「魔族には古い記録がある」


「世界は何度も同じ戦争を繰り返している」


「だから変だと思ってた」


光が頷く。


「その通り」


「この世界は周期的に同じ物語を繰り返します」


セレフィーナが震える声で言う。


「じゃあ……」


「私たちの人生は」


光が静かに答える。


「シナリオの一部です」


沈黙。


長い沈黙。


王子が拳を握る。


「なら」


「なぜ世界が壊れている」


光は少しだけ間を置いた。


「あなたのせいです」


王子の眉が動く。


だが光が見ていたのは。


セレフィーナだった。


「本来のヒロインは」


「恋愛イベントを進行し」


「攻略対象との関係を築き」


「最終的に魔王討伐へ進みます」


映像が変わる。


恋愛イベント。


舞踏会。


庭園。


笑顔。


だが。


次の映像。


セレフィーナが民衆を助けている。


教会改革。


貧民救済。


政治介入。


光は言った。


「あなたはシナリオを無視しました」


セレフィーナは小さく言う。


「だって」


言葉が詰まる。


「困っている人がいたから」


光は頷いた。


「その結果」


空に巨大な亀裂の映像が映る。


「世界システムが不安定化」


「魔力異常」


「時空歪み」


「世界停止」


王子が呟く。


「……バグか」


光は答えた。


「そうです」


セレフィーナは俯く。


「私のせいで」


だがその時。


王子が言った。


「違う」


セレフィーナが顔を上げる。


王子は管理者を睨んでいた。


「壊れているのは」


「世界の方だ」


光がわずかに揺れる。


王子は続ける。


「人間を物語の駒にする世界が」


「まともなはずがない」


沈黙。


ミリアが笑う。


「いいこと言う」


光がゆっくり言う。


「しかし」


「世界は選択を必要とします」


空間に二つの光が現れる。


「第一の選択」


光が一つを指す。


「世界更新」


「すべてをリセット」


「記憶を消去」


「物語を最初からやり直す」


もう一つの光。


「第二の選択」


「世界終了」


「世界を消去」


セレフィーナの顔が青くなる。


「そんな……」


王子は静かに言った。


「もう一つある」


光が止まる。


「何ですか」


王子は空を見上げた。


「ゲームを壊す」


ミリアの目が細くなる。


セレフィーナが息を飲む。


王子は続けた。


「俺たちは駒じゃない」


「自分で選ぶ」


「自分で生きる」


白い空間に沈黙が広がる。


やがて。


光が言った。


「前例がありません」


ミリアが笑う。


「じゃあ作ればいい」


長い沈黙。


そして管理者は言った。


「ならば」


空間が揺れる。


「最終シナリオを開始します」


王子とミリアを見る。


「英雄と魔王の決戦」


「その結果で」


「世界の未来を決定します」


白い空間が崩れる。


世界が戻る。


止まっていた灰が落ちる。


鳥が羽ばたく。


炎が揺れる。


時間が再び動き始めた。


そして。


最後の物語が始まろうとしていた。

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