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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第41話:世界の異常

その朝、王都の空は静かだった。


いつものように朝日が昇り、城壁の上では兵士が欠伸をしている。


市場では商人が店を開き、子供たちが走り回っていた。


――その瞬間。


空の色が変わった。


ほんの一瞬だけ。


青い空が、紫に染まる。


誰かが立ち止まった。


「……今の、見たか?」


「空が……」


だが次の瞬間には元に戻っていた。


気のせいかもしれない。


そう思われた。


だが、異常はそれだけではなかった。


井戸の水が、突然ぶくぶくと泡立つ。


鳥の群れが一斉に飛び立つ。


犬が吠え続ける。


空気が、妙に重い。


人々はざわめき始めた。


「魔族の呪いだ」


「神の怒りだ」


不安が街を包んでいく。


王宮の魔術研究塔。


魔術師たちが慌ただしく動いていた。


「観測値が異常です!」


「魔力濃度が急上昇!」


水晶球の中で光が暴れている。


魔術長が眉を寄せる。


「そんなはずはない」


書記官が震える声で言う。


「王都全域で魔力が増幅しています」


魔術長は窓の外を見た。


空は普通だ。


だが、空気が違う。


「……これは」


低く呟く。


「自然現象ではない」


その頃。


北方帝国。


雪に覆われた城の上空に、巨大な光が現れていた。


円形の紋様。


巨大な魔法陣。


兵士たちが騒ぐ。


「空に魔法陣が!」


将軍が怒鳴る。


「魔術師を呼べ!」


だが魔術師たちも首を振る。


「我々の魔法ではありません!」


魔法陣は、空そのものに刻まれていた。


海の都市。


商業都市連合。


港の水面が黒く染まり始めていた。


船員が叫ぶ。


「海が……!」


海水が、まるで墨のように暗く変わっていく。


船が揺れる。


商人たちが慌てる。


「港を閉鎖しろ!」


「船を出すな!」


混乱が広がる。


神聖教国。


巨大な大聖堂。


祈りの最中だった。


信者たちが膝をつき、神像を見上げている。


その時。


誰かが声を上げた。


「……神像が」


石の神像の頬に。


透明な雫が流れていた。


涙のように。


神官たちが凍りつく。


「奇跡……?」


だが教皇は静かに言った。


「違う」


「これは――兆しだ」


王宮。


緊急会議が開かれていた。


王子、宰相、騎士団長、魔術長。


魔術長が報告する。


「世界中で異常現象が発生しています」


机の上には古い書物が置かれていた。


黄ばんだページ。


そこに書かれている文字。


世界更新


宰相が眉をひそめる。


「それは神話では?」


魔術長は首を振る。


「神話ではありません」


指で文章をなぞる。


「魔王復活の時」


「世界は強制的に動き出す」


王子が言う。


「強制的?」


魔術長は頷いた。


「歴史イベントです」


誰も言葉を発さない。


魔術長は続ける。


「災厄が発生し」


「英雄が現れ」


「世界が再構成される」


つまり。


人間の意思とは関係なく。


世界そのものが動く。


その瞬間だった。


王宮の窓の外。


空に亀裂が走った。


まるでガラスが割れるように。


黒い線が空を横切る。


騎士団長が立ち上がる。


「……空が」


亀裂が広がる。


空間が歪む。


そして。


そこから黒い影が落ちてきた。


魔物。


巨大な爪を持つ獣。


城壁の外に落下する。


兵士の叫び声が響く。


「魔物だ!」


王都が一瞬で騒然となる。


教会の裏庭。


セレフィーナの農園。


彼女はジョウロを持っていた。


空の異変に気づく。


「……あれ」


その時。


畑が揺れた。


芽が伸びる。


ぐん、と。


もう一度。


ぐん、と。


セレフィーナは目を見開く。


「え?」


芽は止まらない。


草が伸びる。


茎が太くなる。


ほんの数分で。


畑の植物は、腰の高さまで成長していた。


子供たちが叫ぶ。


「すごい!」


神官が震える。


「奇跡……」


セレフィーナは困った顔をする。


「違うと思う」


彼女は空を見た。


亀裂。


黒い光。


胸がざわつく。


王宮の会議室。


沈黙が落ちていた。


魔術長が低く言う。


「イベントが発生しました」


宰相が聞き返す。


「イベント?」


魔術長は頷く。


「世界の強制進行です」


王子は静かに問う。


「これから何が起きる」


魔術長は答えた。


「三つです」


指を立てる。


「魔王の完全復活」


もう一本。


「英雄の誕生」


そして最後。


「世界規模の戦争」


部屋が凍りつく。


夜。


王都の外。


丘の上。


ミリアが立っていた。


彼女の前には、黒い軍勢。


魔王軍。


空の亀裂は、さらに広がっている。


そこから黒い光が漏れていた。


ミリアは王都を見る。


小さな灯り。


教会の農園。


そして静かに呟く。


「始まった」


風が吹く。


遠くで。


セレフィーナが空を見上げていた。


世界はもう。


止まらない。

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