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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第40話:国家会議

王都の夜は、まだ落ち着きを取り戻していなかった。


暗殺者の影。


貴族残党の不穏な動き。


そして、魔族の噂。


それでも城の外交塔では、灯りが消えることはなかった。


書記官たちが机に向かい、羊皮紙へと急いで文字を刻んでいる。


「急報、北方帝国宛て」


「商業都市連合へも」


「神聖教国にも送れ」


王国から各国へ送られる緊急報告。


そこに書かれている内容は、どれも重い。


王都の混乱。


暗殺騒動。


魔族の活動。


そして最後に記された一文。


――魔王復活の可能性。


その言葉は、静かに世界へ広がっていった。


北方帝国。


雪に覆われた巨大な城。


戦略会議室では、軍人たちが地図を囲んでいた。


「魔王復活だと?」


将軍の一人が笑う。


「ならば復活する前に叩けばいい」


別の将軍が頷く。


「王国は弱体化している」


「軍を出せば簡単だ」


だが、玉座に座る皇帝は動かなかった。


ゆっくりと地図を見る。


「王国は崩れかけている」


低い声だった。


「我々が手を出す必要はない」


将軍たちは顔を見合わせる。


皇帝は続けた。


「静観する」


「弱った獲物は、最後に仕留めればいい」


帝国は動かない。


ただ、待つ。


海に囲まれた商業都市連合。


巨大な円卓の周りに、豪華な衣装の商人たちが座っていた。


議長が書状を机に置く。


「王国からの報告だ」


「魔族と聖女?」


商人の一人が肩をすくめる。


「戦争は儲からない」


別の商人が笑う。


「いや、儲かるさ」


指で机を叩く。


「聖女」


「奇跡の少女」


部屋が静かになる。


「巡礼者は金を落とす」


「信仰は市場になる」


議長が言う。


「つまり?」


商人は答えた。


「聖女を押さえろ」


静かな声だった。


「外交でも、商売でも」


神聖教国。


巨大な大聖堂の奥。


神官たちが集まっていた。


報告を読み上げる神官。


「王国に“奇跡の聖女”が現れたとのことです」


ざわめきが起きる。


一人の神官が言う。


「神の御業か」


だが、玉座のような椅子に座る教皇は眉をひそめた。


「本物か?」


神官たちは黙る。


教皇はゆっくり言う。


「聖女は神の象徴」


「勝手に現れるものではない」


つまりそれは――


宗教的な問題でもあった。


教皇は命じる。


「調査団を送れ」


同じ頃。


王宮では、国家会議が開かれていた。


円卓を囲むのは、王子、宰相、騎士団長、神官長、そして外交官たち。


外交官が報告する。


「各国が動いています」


地図が広げられる。


北方帝国。


商業都市連合。


神聖教国。


「帝国は静観」


「商業連合は使者を準備」


「教国は調査団を派遣」


宰相が低く言う。


「つまり」


「王国は今、世界の中心になっています」


騎士団長が腕を組む。


「魔族の脅威に加えて、各国の思惑か」


外交官が頷く。


「そして問題は――」


机に置かれた書類。


そこには一つの名前。


セレフィーナ。


宰相が言う。


「聖女は外交カードです」


「各国に示すべきです」


神官長も続く。


「信仰の象徴として」


「王国の正当性を示すためにも」


つまり。


聖女を、政治に使う。


それが彼らの提案だった。


部屋が静まる。


王子はしばらく黙っていた。


やがて口を開く。


「聖女を政治に使わない」


宰相が顔を上げた。


「殿下?」


王子は続ける。


「彼女は道具ではない」


宰相は首を振る。


「しかし外交では――」


王子は遮った。


「それでもだ」


静かな声だった。


「彼女は人だ」


沈黙。


騎士団長が小さく笑う。


「殿下らしい」


会議は重い空気のまま続いた。


その頃。


王都の港では、見知らぬ船が静かに入港していた。


異国の旗。


黒い外套の男たちが降り立つ。


密偵。


商人。


神官。


それぞれが同じ目的を持っていた。


聖女の確認。


そして――


可能ならば、確保。


王都は静かに、スパイの街へ変わっていく。


夜。


教会の裏庭。


小さな農園。


セレフィーナはジョウロで水を撒いていた。


芽は少しずつ増えている。


子供が言う。


「もうすぐ野菜になる?」


セレフィーナは笑った。


「なるよ」


「きっとね」


子供たちは嬉しそうに笑う。


畑の周囲では、騎士たちが警備をしている。


少し離れた場所から、王子がその光景を見ていた。


騎士団長が隣に立つ。


「世界が動き始めましたね」


王子は頷く。


遠くの地平線を見る。


「国家」


「宗教」


「軍」


「魔族」


すべてが動いている。


それでも。


守るものは一つだった。


王子は静かに言う。


「この国を守る」


風が吹く。


小さな芽が揺れる。


遠くの暗い地平線。


そこには、黒い影が見えていた。


魔王軍。


そして同時に。


各国の軍もまた、ゆっくりと動き始めていた。

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