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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第33話:反乱計画

王宮の奥深く。

厚い石壁に囲まれた秘密の会議室で、数人の貴族が沈黙していた。


机の上には地図が広げられている。

王都の地図。

王宮。

兵舎。

城門。


そして、それぞれに小さな駒が置かれていた。


その中央に立つのは——ヴァルドレイン侯爵。


彼はゆっくりと地図を見下ろし、低く言った。


「……また失敗だ」


誰も答えない。


王宮晩餐会の暗殺計画は、完全に崩壊した。


毒は使われなかった。

シャンデリアは落ちない。

刺客は標的を失った。


完璧だった計画が、理由も分からないまま空振りしたのだ。


侯爵は指で机を叩く。


「説明しろ」


伯爵の一人が震える声で言う。


「王子が席を外したのです」


「なぜだ」


「……令嬢と話していたそうです」


「令嬢?」


部屋の空気が重くなる。


その名前は、もう何度も聞いていた。


セレフィーナ・アストリア。


誰かが小さく呟いた。


「偶然ではありません」


侯爵の目が鋭くなる。


「どういう意味だ」


「暗殺、事故、誘拐……すべて、あの令嬢の周囲で崩壊しています」


別の貴族も頷く。


「未来を知っているという噂もあります」


沈黙。


侯爵は冷たく言った。


「馬鹿馬鹿しい」


未来予知など、あり得ない。


だが——


失敗の説明がつかないのも事実だった。


侯爵はゆっくりと立ち上がる。


「暗殺では遅い」


そして地図の中央に駒を置いた。


王宮。


「反乱を起こす。」


部屋がざわめく。


だが誰も反対しなかった。


計画は単純だった。


地方貴族の軍を動員する。


騎士団の一部は既に買収済み。


城門を押さえ、王宮を包囲する。


王族を拘束し、王子を退位させる。


三日で終わる。


侯爵は言った。


「王国は貴族が支配するべきだ」


その声は冷たかった。


その頃、王宮執務室。


宰相は机の前で腕を組んでいた。


報告書を何枚も読み返す。


地方騎士団の移動。

兵糧の増加。

貴族の突然の帰郷。


すべてが妙だった。


宰相は呟く。


「……これは」


王子アルヴィンが静かに言う。


「反乱ですか」


宰相は頷いた。


「可能性が高い」


だが、まだ証拠がない。


王子は少し考える。


そして言った。


「学園の警備を強化しましょう」


宰相は眉をひそめる。


「なぜ学園を」


王子は真顔で答える。


「セレフィーナがいますから」


宰相は沈黙した。


胃が痛くなる予感しかしない。


一方。


王立アストリア学園。


昼下がりの庭園で、セレフィーナはしゃがみ込んでいた。


手袋を外し、土を触る。


指で少しすくう。


じっと観察する。


メイドが困った顔で言った。


「お嬢様、またですか」


セレフィーナは真剣だった。


「この土、排水が悪いの」


「はあ……」


「掘り返しましょう」


メイドは空を見上げた。


また庭園工事が始まるのだ。


セレフィーナはふと考える。


「そろそろだったかしら」


「何がです?」


「イベント」


メイドの動きが止まる。


「……イベント?」


セレフィーナは首を傾げた。


「確か、この辺りの時期だったと思うの」


少し思い出す。


「反乱イベントだったかしら」


メイドは完全に凍りついた。


だがセレフィーナは気にしていない。


「まあいいわ」


スコップを取る。


「土の方が大事よ」


庭師たちが集まり、作業が始まった。


花壇の拡張。


排水工事。


そして——


地面を掘り進めていく。


ガツン。


スコップが固いものに当たった。


庭師が顔を上げる。


「石?」


土を払う。


そこには——


古い石の扉が埋まっていた。


庭師たちがざわめく。


「地下構造だ」


「こんな場所に?」


メイドが慌てて言う。


「お嬢様、危険です!」


だがセレフィーナは興味深そうに見ていた。


「まあ」


しゃがみ込む。


石の模様を指でなぞる。


「古いわね」


庭師が言う。


「開けますか?」


セレフィーナは少し考える。


そして言った。


「開けましょう」


理由は単純だった。


「地下の構造、知りたいもの」


その夜。


王都の外では、軍が動き始めていた。


貴族の旗。

鎧の騎士。

集結する兵。


反乱軍。


ヴァルドレイン侯爵は丘の上から王都を見下ろしていた。


「明日、王国は変わる」


彼は確信していた。


王宮は落ちる。


王子は終わる。


そして新しい時代が始まる。


その頃。


学園の庭園では。


石の扉がゆっくり開いた。


暗い地下通路が現れる。


奥へと続く長い石の道。


メイドが震える声で言う。


「お嬢様……どこへ繋がっているのでしょう」


セレフィーナは中を覗き込み、楽しそうに言った。


「さあ?」


そして微笑む。


「面白そうね」


その通路の先が——


王宮へ繋がっていることを


彼女はまだ知らなかった。

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