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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第29話:世界の違和感 王子が世界の不自然さに気づく

王城の執務室は、昼下がりの光に満ちていた。

窓から差し込む春の陽は穏やかで、外では庭師が薔薇の剪定をしている。


だが、その穏やかさとは裏腹に、王子の机の上には異様な量の報告書が積み上がっていた。


王子は一枚の書類を読み終えると、静かに机へ置いた。


「……またか」


侍従が不安げに顔を上げる。


「何か問題が?」


王子は答えず、別の報告書を手に取る。


闇魔法暴走事件。

隣国外交官の不審行動。

暗殺者ギルドの撤退申請。

学園内での攻略対象たちの活動停止。


どれも、普通ではない。


いや——


「普通ではない、というより……」


王子は窓の外を見た。


「不自然に連鎖している。」


侍従は首をかしげた。


「連鎖、ですか?」


王子は頷く。


「事件そのものではない。

 事件が起きる“順番”だ。」


机の上の書類を並べ替える。


闇魔法事件。

外交問題。

暗殺者ギルド。

学園騒動。


王子は低く呟いた。


「まるで……」


その言葉は途中で止まる。


彼自身、その考えを口にするのが奇妙だと理解していたからだ。


「まるで?」


侍従が促す。


王子は小さく笑った。


「いや。馬鹿げた考えだ」


だが、手は止まらない。


彼はさらに資料を引き寄せた。


過去の学園事件。

婚約破棄騒動。

平民少女ミリアの行動。


そして——


セレフィーナ。


王子の指が止まる。


「……彼女だ」


侍従が息を呑む。


「公爵令嬢が?」


王子は否定も肯定もしない。


ただ、静かに言う。


「彼女は、事件の中心にいない」


紙を指で叩く。


「だが、必ず近くにいる。」


闇魔法事件。

セレフィーナが土壌を調査していた。


外交官問題。

彼女は学園の外に出ていた。


暗殺者ギルド。

彼女はギルドと接触していた。


侍従が小さく言う。


「偶然では……?」


王子は即答した。


「偶然ではない」


その声は確信に満ちていた。


「彼女は未来を知っているのではないか」


部屋の空気が止まる。


侍従は言葉を失った。


「……未来?」


王子は机に肘をつく。


「闇魔法の暴走を予測し、

外交官の動きを察知し、

暗殺者の撤退を促した」


一つずつ指を折る。


「説明できる仮説は一つしかない。」


侍従は小声で言った。


「……それは、あり得ないのでは」


王子は微笑んだ。


「普通ならな」


窓の外を見つめる。


庭師が薔薇を切り落としている。


だが、その動きが妙にゆっくり見えた。


世界が少しだけ、ずれているように感じる。


王子は静かに呟く。


「最近、思うんだ」


侍従が顔を上げる。


「この世界は、時々……」


彼は言葉を選んだ。


「誰かの筋書きのように動く。」


侍従の背筋が凍る。


王子は机の書類を閉じた。


「そして」


セレフィーナの名前を見つめる。


「彼女だけが——」


指で紙を軽く叩く。


「その筋書きを知っているように見える。」


静寂。


遠くで鐘が鳴った。


王子は立ち上がる。


「調べろ」


侍従が姿勢を正す。


「何を?」


王子は短く言った。


「セレフィーナだ」


そして、ゆっくり続ける。


「彼女が何を知っているのか」


窓の外で風が吹く。


薔薇の花びらが舞い上がった。


王子はそれを見ながら、確信していた。


この世界には——


何かがおかしい。


そしてその答えを、


あの公爵令嬢は知っている。

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