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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第28話 王子の確信 ――「彼女は未来を知っている?」

王城の執務室。


窓から差し込む午後の光の中、王子アルヴィンは一枚の報告書を見つめていた。


机の上には書類の山。


そのすべてに共通している言葉がある。


未遂。


アルヴィンはゆっくりページをめくった。


「学園爆破未遂」


「王子暗殺未遂」


「外交官暗殺未遂」


「魔法暴走未遂」


彼はため息をつく。


「最近、“未遂”が多すぎないか?」


向かいに立つ宰相が静かに答える。


「はい」


そして、少し言いづらそうに続けた。


「原因が判明しています」


アルヴィンは顔を上げた。


「言え」


宰相は資料を差し出した。


そこには一人の名前が書かれている。


セレフィーナ・アストリア


王子はしばらく黙っていた。


やがて、静かに言う。


「……またか」


宰相が新しい資料を広げる。


タイトル。


セレフィーナ令嬢関連事象


ページには行動記録が並んでいた。


花壇作り

土壌調査

キノコ採取

屋台配置変更

床材観察


アルヴィンは眉をひそめた。


「園芸記録か?」


宰相


「いいえ」


ページをめくる。


そこには事件の一覧。


爆破未遂

暗殺未遂

誘拐未遂

外交陰謀


そしてその横に書かれている。


発生前行動:セレフィーナ令嬢


アルヴィンは椅子に深くもたれた。


「……偶然か」


宰相は即答した。


「そのようです」


「すべて偶然です」


アルヴィンは静かに笑った。


「偶然が多すぎる」


王子は机の上に地図を広げた。


学園の敷地図。


事件地点に印をつけていく。


爆破予定地点。


花壇。


暗殺予定地点。


苗植え。


誘拐予定地点。


キノコ採取。


魔法暴走地点。


土壌採取。


アルヴィンはしばらく地図を見つめていた。


そして呟く。


「全部」


指で印をなぞる。


「回避している」


宰相が言う。


「しかし本人は」


「無自覚です」


アルヴィン


「それが問題だ」


しばらく沈黙が続いた。


やがて王子は指を三本立てた。


「可能性は三つ」


宰相が耳を傾ける。


「第一」


「偶然の天才」


宰相


「ありえます」


王子


「第二」


「誰かから情報を得ている」


宰相


「可能性はあります」


王子


「第三」


アルヴィンは少しだけ声を落とした。


「未来を知っている」


宰相は即座に否定した。


「ありえません」


アルヴィンも頷く。


「私もそう思う」


沈黙。


しかし王子はゆっくり続けた。


「……だが」


「第一もありえない」


宰相が新しい書類を出した。


「もう一つ報告があります」


アルヴィン


「なんだ」


宰相


「暗殺者ギルドです」


王子は眉を上げた。


「捕まえたのか?」


宰相


「いいえ」


「撤退しました」


「理由は」


一拍置く。


「成功率0%」


アルヴィンは静かに目を閉じた。


「……つまり」


「敵も」


「味方も」


「彼女の行動を読めない」


宰相


「はい」


その日の午後。


アルヴィンは学園を訪れた。


庭園へ向かう。


そこには見慣れた光景があった。


セレフィーナがしゃがみ込み、花壇を整えている。


侍女が水を運ぶ。


アルヴィンが声をかけた。


「何をしているんです?」


セレフィーナは顔を上げた。


「花壇です」


当然のように答える。


王子は周囲を見渡した。


ここは――


爆破予定地点だった場所。


アルヴィンは静かに聞く。


「なぜここに?」


セレフィーナは少し考えた。


「日当たりがいいので」


それだけだった。


アルヴィンは少し迷ってから言った。


「仮の話ですが」


セレフィーナ


「はい?」


王子


「もし未来が分かるとしたら」


セレフィーナはきょとんとした。


「未来?」


王子


「例えばです」


セレフィーナは少し考え込む。


やがて言った。


「未来が分かるなら」


王子


「はい」


セレフィーナ


「花は枯れないかもしれませんね」


王子


「……」


セレフィーナはそれだけ言うと、また花壇に向き直った。


夕方。


庭園を出た王子は立ち止まった。


風が花の香りを運んでくる。


アルヴィンは小さく呟いた。


「ありえない」


「だが」


「説明がつく」


彼は空を見上げる。


そして静かに言った。


「彼女は」


少しだけ迷い。


「未来を知っている?」


その頃。


庭園の奥。


セレフィーナは地面にしゃがみ込んでいた。


小さなキノコを見つけたのだ。


「このキノコ」


指でつつく。


「食べられるかしら」


彼女は真剣だった。


学園は今日も平和だった。


そしてその平和が、また一つ。


誰かの陰謀を消していた。

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