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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第27話 暗殺者退職希望 ――「別の仕事にしよう」

王都の地下。


石造りの通路の奥に、暗い会議室があった。


壁には古い地図。

机の中央には蝋燭。

その周囲を、黒装束の男たちが囲んでいる。


王国最大の暗殺組織――夜鴉ギルド。


普段なら静かな誇りに満ちた場所だった。


しかし今日は違った。


空気が、重い。


沈黙を破ったのはギルドマスターだった。


「報告を」


副官が書類を開く。


表紙には大きく書かれていた。


ターゲット:セレフィーナ・アストリア令嬢


副官は淡々と言う。


「現在の成功率」


ページをめくる。


「0%です」


沈黙。


誰も驚かなかった。


副官が資料を読み上げる。


「第一計画。毒入り紅茶」


若手暗殺者がうなずく。


「あれは完璧だった」


副官。


「結果」


ページを見る。


「紅茶を冷ましている間に忘れました」


沈黙。


「第二計画。階段事故」


別の暗殺者が言う。


「王道だ」


副官。


「結果」


「階段の木材観察で立ち止まりました」


また沈黙。


「第三計画。森での誘拐」


ベテラン暗殺者が言う。


「俺の作戦だ」


副官。


「結果」


「キノコ採取で予定変更」


ベテラン


「なんでだ」


「第四計画。舞踏会毒針」


「床材観察で位置変更」


「第五計画。魔法事故」


「灰を肥料に使用」


暗殺者Aが呟いた。


「……意味が分からない」


若手が手を挙げた。


「質問いいですか」


ギルドマスター


「言え」


若手は資料を指差した。


「この人」


一拍置く。


「未来見えてません?」


沈黙。


ベテランが腕を組む。


「俺も思った」


別の暗殺者。


「偶然じゃない」


副官は首を振った。


「調査しました」


「すべて偶然です」


全員


「余計怖い」


ギルドマスターが机を叩いた。


「新しい方法を考える」


暗殺者Bが言う。


「毒」


副官


「食べません」


暗殺者C


「落石」


副官


「そこに来ません」


暗殺者D


「狙撃」


副官


「木を観察して止まります」


暗殺者E


「爆破」


副官


「屋台位置変更」


全員


「……」


会議室に絶望が広がった。


副官がさらに資料を出した。


「追加報告があります」


「関連事件」


ページには最近の未遂事件が並んでいる。


王子暗殺未遂

学園爆破未遂

外交陰謀未遂

魔法暴走未遂


原因欄。


すべて同じ。


セレフィーナの行動変更


暗殺者A


「偶然か?」


副官


「全部です」


暗殺者B


「全部?」


副官


「全部」


沈黙。


しばらくして。


ベテラン暗殺者がぽつりと言った。


「……俺」


全員を見る。


「農業やろうかな」


若手がうなずく。


「俺も思ってました」


暗殺者C


「パン屋」


暗殺者D


「花屋」


暗殺者E


「木こり」


ギルドマスターが叫ぶ。


「お前ら暗殺者だぞ!」


ベテランが真顔で答えた。


「でも成功率0%です」


誰も反論できなかった。


副官が最後の資料を出す。


「重要な結論があります」


全員が見る。


「このターゲット」


副官は静かに言った。


「近くにいると」


「事件が消えます」


暗殺者たち


「どういう意味だ」


副官


「分かりません」


長い沈黙。


ギルドマスターがため息をついた。


「結論」


全員を見回す。


そして言った。


「別の仕事にしよう」


暗殺者たち


「賛成」


その頃。


王立学園。


庭園。


セレフィーナはしゃがみ込み、花壇の土を触っていた。


「この土、いいわね」


王子が隣で水をやる。


「そうですね」


風が花を揺らす。


遠くの森。


元暗殺者たちが本を読んでいた。


『初心者のための農業入門』


若手が言う。


「土壌って奥深いですね」


ベテランが頷く。


「だな」


暗殺者だった男が呟いた。


「農業……いいかも」


誰も否定しなかった。

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