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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第15話:ヒロイン発狂

昼休みの中庭。

柔らかな春の光の中で、ミリアは一冊のノートを睨みつけていた。


そこには、びっしりと書き込まれた予定表。


——本来、この世界で起きるはずの出来事。


彼女は震える手でページをめくる。


「……おかしい」


小さく呟く。


階段イベント。

騎士防衛イベント。

魔法事故イベント。

王子接近イベント。


本来なら、すでにいくつも発生しているはずだった。


だが。


ミリアはノートを叩いた。


「一つも起きてないじゃない!」


ここは乙女ゲーム

『ローズガーデン・アカデミア』の世界。


ミリアはそのヒロインであり、

ゲームの知識を持った転生者だった。


だから分かる。


この世界は――


完全におかしい。


「どうしてよ……」


彼女は唇を噛む。


本来、階段で転びそうになった彼女を王子が支えるはずだった。

だがその日、王子は来なかった。


理由。


セレフィーナが階段の手すりを調べていたから。


騎士イベントも同じだ。


騎士レオンが彼女を守る場面のはずだった。


なのに。


「草取りしてたわよね……?」


ミリアの顔が引きつる。


あの光景を思い出す。


令嬢セレフィーナがしゃがみ込み、

黙々と雑草を抜いている。


そして騎士レオンが隣で言った。


「……この根、深いな」


セレフィーナが静かに答えた。


「雑草は生命力が強いのですわ」


——なぜか二人で草取り。


ミリアは頭を抱えた。


「違う違う違う違う!」


そんなイベント、ゲームにない!


さらに魔法事故。


あれは本来、攻略対象の魔法使いが彼女を守る重要イベントだった。


だが実際は。


魔法の暴走で地面が焦げたあと。


セレフィーナが灰をつまんで言った。


「その灰、肥料になるかしら?」


ミリアはベンチから立ち上がる。


「ロマンスはどこ行ったのよ!」


怒りで肩が震える。


恋愛イベントが一つも発生しない。


つまり。


攻略対象との好感度も上がらない。


「このままだと……」


恐ろしい可能性が浮かぶ。


「私、ただの平民のまま?」


乙女ゲームのヒロインが。


ただの学園生で終わる。


そんな結末、聞いたことがない。


ミリアはノートを睨む。


そしてページの端に名前を書く。


セレフィーナ・ローゼンベルク


悪役令嬢。


本来ならヒロインをいじめ、

最後には破滅する存在。


なのに今の彼女は。


・花壇整備

・雑草研究

・土壌改良


完全に


園芸家。


ミリアの額に青筋が浮かぶ。


「悪役令嬢の行動じゃないでしょ……!」


耐えきれず、ミリアは立ち上がる。


「直接見てくる」


向かった先は学園の裏庭。


そして彼女は見た。


花壇の前でしゃがみ込むセレフィーナ。


ドレスの裾をまとめ、

土を触りながら苗を植えている。


完全に


庭師。


その隣には騎士レオン。


レオンは真剣な顔で草を引き抜いていた。


「……この雑草、根が長いな」


セレフィーナは穏やかに答える。


「それは多年草ですわ。来年も生えます」


「なるほど」


なぜか二人とも楽しそうだ。


ミリアの顔がひくひく震える。


「違う!」


小さく呟く。


「こんなの違う!」


ここは乙女ゲームの世界だ。


農業ゲームじゃない。


ミリアはついに叫んだ。


「なんでイベントが起きないのよ!!」


裏庭に声が響く。


だが。


セレフィーナは顔を上げない。


静かに土を触りながら言う。


「今年の土は少し酸性が強いわね」


レオンが首をかしげる。


「土にも性格があるのか?」


「ありますわ」


二人は真剣に土を見ている。


ミリアは呆然と立ち尽くした。


そして拳を握る。


「……わかった」


ゲームが壊れているなら。


修正するしかない。


ミリアの瞳に決意が宿る。


「イベントは……私が起こす」


彼女はセレフィーナを睨んだ。


あの令嬢が原因なら。


どいてもらうしかない。


ミリアは小さく呟く。


「次は絶対、成功させる」


その頃。


セレフィーナは苗を植え終え、満足そうに微笑んだ。


「これで春の花壇は完成ですわ」


レオンが感心したように言う。


「見事だな」


遠くで。


ミリアがまだ震えている。


だが二人は気づかない。


なぜなら。


セレフィーナは今、


土の状態を観察するのに忙しかったからである。

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