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悪役令嬢セレフィーナ 乙女ゲームが始まらない  作者: 南蛇井


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第11話:攻略対象会議

王立アストリア学園。

貴族生徒用サロン。


午後の紅茶が並び、窓から柔らかな光が差し込んでいる。


そこに四人の男が集まっていた。


第一王子、アルヴィン。

王国騎士団候補、レオン。

宮廷魔法研究家の息子、ルーカス。

大商会の後継ぎ、カイル。


本来ならば華やかな社交の場になるはずだったが。


今この場に漂っているのは——


奇妙な沈黙だった。


カイルが紅茶を一口飲み、ため息をつく。


「……なあ」


誰にともなく言う。


「一つ聞いていいか?」


アルヴィンが顔を上げた。


「何だ」


カイルは少し考えたあと、言った。


「セレフィーナ嬢って」


間。


「何をしているんだ?」


沈黙が落ちた。


レオンが腕を組む。


「……庭だ」


カイルが首を傾げる。


「庭?」


アルヴィンが補足する。


「庭を調べている」


カイルはさらに困惑する。


「調べる?」


レオンが真顔で言う。


「雑草を抜いている」


カイルの手が止まった。


「雑草?」


今度はルーカスが口を開く。


「魔法事故の時」


三人が彼を見る。


「彼女は灰を見て言った」


ルーカスは真面目な顔で再現した。


「『その灰、肥料になるかしら?』」


沈黙。


カイルは紅茶を飲みかけて止まった。


アルヴィンは遠くを見る。


レオンは額を押さえた。


誰も意味が分からなかった。


カイルがゆっくり言う。


「……話が繋がらない」


アルヴィンが静かに頷く。


「私もそう思う」


レオンが咳払いをした。


「俺の話をしていいか」


三人が彼を見る。


「騎士として」


「彼女を守る機会があった」


カイルが身を乗り出す。


「それで?」


レオンは真顔で言った。


「草取りをした」


沈黙。


カイルがゆっくり瞬きをする。


「……え?」


「雑草だ」


レオンは言う。


「彼女が抜いていた」


「だから」


「手伝った」


長い沈黙が落ちた。


カイルは両手で顔を覆った。


「ちょっと待て」


「話が理解できない」


ルーカスが腕を組む。


「理論的に考えると」


三人が彼を見る。


「彼女は植物に強い関心を持っている」


「それは分かる」


カイルが言う。


「だが侯爵令嬢だぞ」


「雑草だぞ」


ルーカスは黙った。


アルヴィンが静かに言う。


「私は何度か彼女を観察した」


三人が顔を上げる。


「彼女は誰とも争わない」


「誰も挑発しない」


「ただ」


少し間を置く。


「忙しそうだ」


カイルが聞く。


「何で」


アルヴィンは真面目に答えた。


「雑草だ」


沈黙。


再び沈黙。


さらに沈黙。


カイルが椅子に沈み込む。


「……どういう状況だ」


その時、思い出したように言う。


「そういえば」


「ヒロインのミリア」


アルヴィンが反応する。


「どうした」


「最近様子がおかしい」


「理由は」


カイルは首をかしげた。


「イベントが起きないって」


沈黙。


レオンが言う。


「イベント?」


ルーカスが言う。


「何の話だ」


カイルは肩をすくめた。


「知らない」


沈黙。


その時アルヴィンがぽつりと言った。


「そういえば」


三人が彼を見る。


「暗殺未遂があったらしい」


レオンが頷く。


「聞いた」


カイルが驚く。


「結果は」


レオンは真顔で答えた。


「虫を観察したらしい」


沈黙。


カイルはゆっくり言った。


「……もう一回言ってくれ」


「虫だ」


レオンは言う。


「珍しい虫だったらしい」


長い沈黙が落ちた。


誰も紅茶を飲まない。


誰も動かない。


やがてカイルが呟いた。


「……なあ」


三人を見る。


「結論いいか?」


アルヴィンが頷く。


「言え」


カイルは真顔で言った。


「……あの人」


三人が息を呑む。


カイルは静かに言った。


「何をしているんだ?」


誰も答えられなかった。


その頃。


学園の庭。


セレフィーナはしゃがんでいた。


小さな草を抜く。


根を観察する。


「やっぱり」


満足そうに頷く。


「この土」


「少し酸性ね」


新しい雑草を見つける。


嬉しそうに微笑む。


遠くのサロンで。


王子と騎士と魔法使いと商人が。


自分の話で頭を抱えていることなど。


セレフィーナは。


まったく知らなかった。

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