わがままなユイちゃん先生
「ここの提供クレジットがね――」
「あ〜、確かにそれはすっごく分かる♪」
「本当に勿体ないよね☆! あともう少しで神提供クレジットだったのに〜! ムキ〜ッ!」
ま〜た訳の分からないことを言っているわね……。
いつものように提供クレジットで盛り上がる3人を横目に見ていた私はこれまたいつものようにドン引きしていたのでした……。毎回本当に日本語で喋っているのか疑わしいぐらい今でも暗号会話にしか聞こえないんだけど……。ハッ……! もしかしたらモールス信号を使っていたりして……? な〜んて、そんなわけないか♪ テヘッ♪
ちなみに私の方はと言うと、勉強を終えて現在スマホでゲームをしています♪ ニヒッ♪
「「「――♪」」」
ワイワイガヤガヤ……。
「よしっ☆! この調子この調子♪」
「ん? ねぇねぇ、璃緒ちゃん♪」
「どうしたの朱音ちゃん?」
「璃緒ちゃんは今どんなゲームをやってるの? 良かったら教えて♪ すっごく気になる☆!」
「うん、いいよ♪ 教えてあげる♪ フッフ〜ン♪ それはね、ファンタジーミッションをやっているの♪ 今流行りのゲームなんだ♪」
ファンタジーミッション。それは勇者一行が様々なミッションをこなしながら魔王を倒すというRPG型スマホゲームのことなの♪
ただ肝心のミッションにはかなりの特徴があって、クイズだったりパズルだったりミニゲームだったりなどといろんなジャンルが用意されているんだけど、内容が一部明らかに現代のものが交じっているの! その矛盾さが却って逆に面白いと話題になり、本作は瞬く間にバズりにバズって見事大ヒットしたんだよね♪ しかも一部界隈では、主人公は転生者でその主人公を転生させた神が遊び半分のノリで現代でしか知り得ないことをミッションに出していると思われているんだとか♪
「ふみふみ、なるほどね♪ 璃緒ちゃんがやっていたのはファンタジーミッションでしたか♪ あのゲームとっても大人気だよね♪ そういえば本ゲームを作ったギリペゴは以前、クリケット世界大会のメインスポンサーに抜擢されていて、とても素敵な提供クレジットを魅せてくれたんだよね♪ 本当に素晴らしいものだった♪ うんうん♪」
「出たよ! ここでも提供クレジットの話題が!!」
「確かにとても素敵な提供クレジットのオンパレードだったな♪ おかげで常にクリケット世界大会の提供クレジットをすっごく楽しみにしていたぞ♪ きゅんです♪」
「そうそう♪ 見ててとても楽しかったんだよね♪ キャピッ☆!」
「いつも思うけど、楽しむポイント絶対におかしいからね!! むぅ~!」
ゲームの話題から提供クレジットにこじつけるなんてもう何でもアリすぎるよ〜……。ふえ〜ん……。もはや1周回ってある意味天才かも……。あはは……。
「ハッ……! そういえばずっと思っていたことを今から言っていいかな?」
「何か突然の急展開なんだけど!? まあ……、もちろん全然いいですけど……」
「私も賛成だぞ♪ 戸村先生の話凄く気になる☆! ドキドキ♪」
「ハイハ〜イ♪ 私も賛成です♪ ユイちゃん先生がどんな話をするのかとっても楽しみ〜☆! ワクワク♪」
「やった〜、ありがとう♪ それじゃ話すね♪」
ゴクリ……。
戸村先生……、一体何を話すって言うの……? 何だか物凄く嫌な予感しかしないんだけど……。
「ちょっと前から朱音ちゃんと山井さんがお互い名前呼びしてとっても羨ましすぎるんだけど〜☆! むぅ~!」
「「おぉ〜☆!」」
「はっ……?」
しょうもなっ……! あまりにもくだらなすぎて拍子抜けしちゃったんだけど……!
「え〜っと…、それってそんなに気にすることですか……?」
「もちろん気にするに決まってるじゃない☆! グスッ……、グスッ……」
「「きゃわわ〜☆!」」
「えぇ〜……」
大の大人がマジ泣きするぐらい気にしていたなんて……、何かとてもドン引きなんだけど……。それに凄く不憫すぎる……。あと朱音ちゃんと新山さんのズレたリアクションもかなり気になります……。
「うぅ〜……、先生だってみんなのこと名前で呼びたいし、みんなからユイちゃん先生って呼ばれたい〜!! ずっと名字はヤダヤダ〜!! 親しみ込めたい込めたい〜!!」
バタバタバタバタッ!
「「キュンキュン♪」」
「うわ〜……」
何この茶番劇……。大の大人が駄々をこねて手足をバタつかせるの見ていられないんだけど……。戸村先生、どんだけわがままなのよ!?
もしかしたら元カレが戸村先生を振った理由も提供クレジットを見るという謎の趣味だけじゃなく、こんな醜態を晒す一面を知ってしまったのが理由だったりして……。多分絶対有り得るかも……。そりゃ学園のアイドル的な存在の人(仮)がまさかこんな人だと知ったら当然失望しちゃうのも頷けるわね……。あはは……。
「ユイちゃん先生にこんな一面があったなんて全然知らなかった☆! とっても可愛くてキュンキュンしちゃう♪」
「そうだね♪ 私も谷村さんと同じ気持ち♪ きゅんです♪」
「ハッ……、ハハッ……」
まあ2人ならそう言うよね……。予想通りの答えです……。
「これでクラスのみんなが知ったら、ユイちゃん先生の人気は爆速に上がること間違いなしだね♪」
「うんうん♪ それは間違いない♪」
「んなわけないでしょ!? 幻滅するに決まってるわよ!!」
どうしてこの2人は戸村先生のあんな姿を見て人気が上がると思ったのか理解に苦しむんだけど……。ハァ〜……。
それにしても……、朱音ちゃんも新山さんも戸村先生にご執心すぎるでしょ……。ひょっとして……、同じ超マイナーな趣味を持つ者同士が出会ったことによって、感性に狂いが生じたりして……。な〜んて、流石に考えすぎかな♪ エヘヘ〜♪
「呼びたい呼びたい〜!」
「え〜、コホン! ユイちゃん先生♪」
「ふえっ……?」
「ユイちゃん先生のご希望通り、これからお互い名前で呼び合っていきましょ♪ ねっ♪」
戸村先生が未だに手足をバタつかせながら駄々をこねていると、朱音ちゃんが戸村先生の願望を受け入れることを決めたの。
といってもそれしか解決方法がないよね……。あはは……。
「嘘!? ほっ、本当に良いの!?」
「もちろん☆! ユイちゃんの言ってることに一理あるしね♪ ニヒッ♪ それに私もいずれみんなのこと名前で呼び合いたいと思っていたんだ♪ キュンッ♪」
「あっ……、朱音ちゃ〜ん……☆!」
キラキラ〜ン☆!
戸村先生が目をキラキラと輝かせてる……。まあ戸村先生からしたら、今の朱音ちゃんはまるで天使みたいな存在として捉えているかも……。知らんけど……。
「そうだね♪ 実のところを言うと、私もお互い名前で呼び合うことに憧れを抱いていたの♪ だから戸村先生の魂の叫びを聞いて、私すっごく嬉しいよ♪ ニヒヒ〜♪」
「まっ、まあ、さっきはあんなこと言っちゃったけど、今後のことを考えたら名前呼びの方が良いかもしれないわね!」
私ったら何でツンデレっちゃっているのよ!? うぅ〜……、おそらくみんなと一緒に居すぎたせいで絆されてしまったからかも……。ガクン……。
「新山さ〜ん……☆! 山井さ〜ん……☆!」
キラキラ〜ン☆!
うっ……! 戸村先生がまた目をキラキラと輝かせてる……。それに眩しすぎて顔をまともに見られないんだけど……。純粋パワー恐るべし……! グミャッ……!
「うっ……、うっ……、みんな……、本当にありがとうね……♪」
「いえいえ♪ それじゃ早速、みんなのこと改めて下の名前で呼ぶね♪ ユイちゃん先生・璃緒ちゃん・そして萌果ちゃん♪ これからもよろしくね♪ ニヒッ♪」
「「……☆!」」
トゥンク♡。
「なっ!? 今ので何でトゥンクしちゃってるのよ!?」
「次は私のターンね♪ キラ~ン☆! えっと、ユイちゃん先生・朱音ちゃん・璃緒ちゃん♪ これからもよろしくお願いします♪ ニヒヒ〜♪」
「「……☆!」」
トゥンク♡。
「だから何でトゥンクしちゃうのよ!? そんな要素どこにも無いでしょ!!」
「それじゃ、今度は先生がみんなの名前を呼〜ぶ☆! 呼ぶもん☆!」
「「どうぞ♪」」
「ハッ……、ハハッ……」
戸村先生が甘えん坊モードになってる……。この人って本当にいろんな意味でギャップありすぎでしょ!?
「う~んとね♪ まずは朱音ちゃん・それから璃緒ちゃん・萌果ちゃん♪ これからも末永くよろしくね♪ ニコッ♪」
「「きゃわわ〜☆!」」
トゥンク♡。
「本日3度目のトゥンクモードしてる場合か!!」
どうしてこうも揃いに揃ってトゥンクしちゃってるのよ!? 胸キュンポイントがどこにあったのか私にはさっぱり分からなかったんだけど!! むぅ~!
「「「チラッ……♪」」」
「うぐっ……!」
キラキラ〜ン☆!
うぅ〜……、みんな私に対して期待の眼差しを向けているんだけど……。まあそれもそうか……。
「しっ……、仕方ないわね……。みんなに続いて私も下の名前で呼びます……。朱音ちゃん・そしてユイちゃん先生・萌果ちゃん♪ その……、これからもよろしくね……♪」
「「「……☆!」」」
キュンキュンキュンキュンッ♪ トゥンク♡。
「もぅ〜! みんなどんだけトゥンクするのよ!?」
「うわ~ん、もうみんな大好き☆!」
ギュッ♪
「わっ、ちょっ!?」
「エヘヘ〜♪ ユイちゃん先生とハグ出来て幸せなのだ♪」
「私も朱音ちゃんと同じ気持ちだぞ♪ これはマジで尊い☆!」
あはは……、もうどうでもいいや……。
ユイちゃん先生のわがままから始まったこのくそしょうもない茶番劇はこうして無事に幕を閉じたの。今回も今回で何だかドッと疲れた……。ぐで〜ん……。




