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神木さんちのお兄ちゃん! ~美人すぎる兄は、双子の妹弟を溺愛してる~  作者: 雪桜
最終章 愛と泡沫のアヴニール

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第591話 お祝いと神木家


「飛鳥兄ぃ、もう準備できてるよー」


 飛鳥とあかりが神木家に戻ると、華が満面の笑みで出迎えてくれた。


 どうやら、パーティーの準備が整ったらしく、リビングの中は、とても陽気な空気に満ちていた。


 ローテーブルの上にホットプレートを置き、その周りには、食材やジュースが並んでいる。


 それを見れば、飛鳥の指示通りに、双子やエレナ、そして大人たちが準備してくれたのだとわかった。


「飛鳥兄ぃは、あかりさんの隣ね!」


 そして、華が当然とばかりにそういって、飛鳥は『まぁ、そうなるか』と素直に納得すると、隣にいるあかりに話しかけた。


「どこに座る? あかりが聞き取りやすい場所を選べばいいよ」


 そういって笑う飛鳥は、あかりの意志を尊重しようとしていて、そのささやかな気遣いに、あかりの胸は、ほんのり温かくなった。


 座る位置によって、聞き取り方が大きく変わってくる。


 右耳が聞こえないあかりは、右側にいる人の声が聞き取れない。


 だから、自分の右端に人が来ないよう、できるだけ右端に座るよう意識していた。


 でも、端の席というのは、誰もが陣取りたくなる場所でもあるため、常に右端にいけるわけではなく、学校でグループ学習をする時などは、右端の席に座れず、話し合いに全く参加出来ないこともあった。


 だからか、聞こえやすい位置にいられるように、こうして聞いてくれたのが、とても嬉しかった。


「ありがとうございます。じゃぁ、一番右端でもいですか?」


「いいよ。じゃぁ、俺はその隣ね」


 そう言って飛鳥が移動すると、あかりをテーブルの右端に座らせた後、その左隣に腰掛けた。


 そして、その瞬間、あかりは思う。


 ──彼は、いつも私の左側にいてくれる。


 前に公園のベンチで、二人だけで話をした時


『どっちだっけ、聞こえる方?』


 そう言って確認されたあとから、飛鳥は常にあかりの左側にいるようになった。


 あかりが、聞き取りやすいように

 あかりが、困ることがないように


 だからか、あかりにとって飛鳥の隣は、とても安心する、居心地のよい場所だった。


 まるで、守られているような

 愛されているような


 そんな感覚を実感できるから──…


(聞こえないのは不便だけど、聞こえないからこそ、気づけたこともたくさんある)


 障がいは、マイナスな面ばかりが浮き彫になるため、生きづらさの象徴とも言える。


 でも、生きづらいからこそ、気づけたこともたくさんある。


 心無い言葉を言われた。


 障がい者に対する世間の目が、厳しいことも知った。


 きっと、この世界から偏見が消えることはない。


 でも、それと同じくらい、人の優しさに触れる機会も、たくさんあった。


 優しくされた。

 面倒くさがらずに、傍にいてくれた。


 認めてくれて、受け入れてくれて、共に生きようといってくれる人たちがいる。


 心無い言葉をかけれ人たちもいたけど、優しい言葉をかけてくれ人だって、たくさんいた。


 何より、こんなにも人が温かいことに気づけたのは


 一側性難聴という障がいがあったおかげだ。


(心無い人たちの言葉に惑わされないで、私たちのことを、大切に思ってくれる人たちの言葉を信じよう)


 棘のある言葉は、心の奥深くに突き刺さって、なかなか抜けなかった。


 だからか、それが世界の総意のように感じて、優しい人たちの声を聞き逃していた。


 でも、一番大切にしなくてはならないのは、傍にいて、支えてくれる優しい人たちの声。


 私のことを、大切に思ってくれる、大切な人たちの言葉。


 なにより、もう迷う必要はないと思った。


 この人たちを、悲しませちゃいけない。


 批判的な言葉を鵜呑みにして、未来を諦めてはいけない。


 だからこそ、しっかり返していきたいと思った。


 やってもらって、配慮してもらえる。

 それは、決して当たり前のことじゃない。


 寄り添ってもらえるのは、とても幸せなことで、だからこそ、優しくされた分、しっかり返していきたいと思った。


 幸せを願われた分、みんなにも、幸せを返していきたい。


 たとえ、障がいがあったとしても、きっと、できることは、たくさんあるはずだから。


 ベートーヴェンが、難聴になったあとも、音楽を作り続けたように──…


 なにより、その想いに、障がいの有無は関係ないのかもしれない。


 誰かのために、何かをしたい。


 その想いは、自然と湧き上がってくるものだから──…



「あかりさん。ジュースは何がいいですか?」


「──!」


 瞬間、蓮が話しかけてきた。


 あかりが、テーブルの上を見れば、オレンジジュースやコーラ、アイスティーなどのペットボトルが並んでいて、あかりは、その中の一つから


「じゃぁ、オレンジジュースで」


「はーい。エレナちゃんは?」


「私も、あかりお姉ちゃんと一緒でいい!」


「了解! あ、隆臣さんは、お酒の方がいいよね?」


「え? 俺は……」


 すると、蓮に話をふられ、隆臣は黙り込んだ。


 別にどっちでもいいのだが、ここで自分が飲むと、飛鳥も飲むことになるのでは?


 すると、隆臣が迷っているのに飛鳥は気づいたらしい。飲みたいのに我慢していると思ったか、飛鳥が気を利かせて


「隆ちゃん、遠慮しなくていいよ? ビール? それともカクテル? 隆ちゃんが飲むなら、俺も付き合うし」


「「飛鳥兄ぃ(兄貴)は、ダメだよ!!」」


 だが、飛鳥が隆臣にお酒をすすめだした瞬間、双子が大声で遮った。


(あかりさんの前で、お酒を飲むなんて!)


(あの醜態を、ここで晒す気かよ!?)


 ダメだ! 絶対にダメだ!


 せっかく両思いになれたのに、酒癖が悪いことがバレたら、婚約破棄をされてしまうかもしれない!!


「飛鳥兄ぃは、ジュースで!」


「え、なんで?」


「なんででも! エレナちゃんもいるんだから、お酒は控えてよ!」


「そうだよ、兄貴は飲まずに、あかりさんに集中!」


「集中って……っ」


 双子の言葉に、飛鳥が恥じらいながらも困惑する。すると、隆臣が


「じゃあ、俺もジュースで」

 

「あ、隆臣さんは遠慮しなくていいよ! あとミサさんも!」


「……私もいいわ。あまりお酒は得意ではないし、この後、家にも帰らなきゃいけないし」


「はっ、そうか! 酔っ払ったミサさんを、一人で帰すなんて絶対にダメですね! そうだ、ミサさんも泊まって行きます?」


「気にしないで。明日も仕事だから、家でゆっくり休むわ」


「そうですか……じゃぁ、お父さん! ちゃんと送り届けてあげてね!」


「分かってるよ。元からそのつもりだよ」


「べ、別に送ってくれなくてもいいわ! 夜道を歩くのは慣れてるし」


「そうは言ってもなー。こういう時に限って、変態が現れたりするんだぞ」


「大丈夫よ。変態を撃退する催涙スプレーだって持ち歩いているし、護身術も身に付けてるから、男一人くらいなら、ねじ伏せられるわよ」


(うそ! ミサさん、護身術も使えるの! かっこいい!)


(やっぱ、兄貴の母親だな。変質者に対する面構えが違う)


 美人で仕事もできるママなのに、さらに護身術まで身につけているなんて、凄すぎる!


 そして、ここまで綺麗だと、やっぱり護身術は必須なんですね!


 そんなことを双子が考えていると、あかりが、感心しながら。


「ミサさん、すごいですね。私、ミサさんから、護身術を教わってもいいのかも?」


「ダメだよ。きっと仕事で忙しいから(というか、俺が教えたいから、あっちには行かないでほしい)」


 まさか恋人との時間を、ミサに奪われそうになるとは!?


 飛鳥は、行かせまいと、仕事が忙しいことにした。


 そして、こうして見ると、ミサもすっかり神木家に馴染んだようで、少し前の関係性が、嘘みたいだと思った。


「はーい! じゃぁ、お肉を焼きながら、乾杯といきましょう!!」


 すると、わちゃわちゃと会話を弾ませているうちに、みんなが席についたらしい。

 

 神木家の盛り上げ役である華が、コップを持って祝杯の用意を始める。


 すると、そこに──


「あの……その前に、一ついいですか?」


 そう言って、遠慮がちに話しかけてきたのは、あかりだった。


 あかりは、テーブルを囲む、みんなの顔を見つめながら


「皆さん、私のために、お手紙を書いてくださって、ありがとうございました。皆さんの言葉の一つ一つに救われて、涙が止まらなくなって……こんな私を受け入れてくれて……本当に…ありがとうございました…っ」


 手紙の内容を思い出したのか、あかりの声は次第に震え始め、いつしか涙が溢れていた。


 そして、泣きながらお礼を言うあかりをみて、皆は微笑ましげに目を細めた。


 たくさん悩んで、言葉を選びながら書いた手紙だった。


 だからこそ、あかりさんに伝わってよかったと思う。


 そして、ホッとするみんなを見つめながら、飛鳥が、あかりと同じように頭を下げる。


「俺からも、礼を言います。俺の想いを聞いてくれて、あかりとの未来を認めてくれて、ありがとうございました」


 二人並んで感謝を伝えると、そんな飛鳥とあかりの姿を見て、皆は目を合わせて微笑みあう。


 若い二人の門出だ。


 それは、ちょっと寂しくもあり、誇らしくもあった。


 でも、大切な家族が、この一家を守り続けてきた大好き兄が、ついに巣立ちの時を迎えるのだ。


 そして、それは、最高に幸せなことだと思った。


「飛鳥」


 すると、父の侑斗が、飛鳥に声をかけ


「これは、一度失敗してる先輩からの助言だけど、お前が選んだ人は、お前にとっての華と蓮と同じで、あかりちゃんの両親が、大切にたいせつに育ててきた人だ。だから、お前もそれを忘れず、あかりちゃんを大切にしなさい。それと、あかりちゃん」


「はい」


「うちはさ、普通の家庭とはちょっと違ってて、あまり平凡な日常を送ってきたとはいえない。それでも、たくさんの試練を乗り越えてきたからこそ、家族の絆は、どの家庭よりも強いと思ってる。だから、困ったことがあったら、いつでも相談しにきなさい。家族みんなで考えて、一緒に乗り越えていこう。歓迎するよ、あかりちゃん」


 そう言った侑斗は、より一層、優しい目をして


「──ようこそ、神木家へ」


「……ッ」


 その柔らかな言葉に、あかりの瞳からは、また涙が溢れた。


 家族の一員として、認められたのだと思った。


 一人よりも二人、二人よりもみんなで、支え合い、励まし合える人がいる。


 それは、なんて心強くて

 なんて、幸せなことだろう。


「はい……ありがとう、ございます…っ」


 泣きながら、あかりがふわりと微笑めば、その瞬間、喜びが伝播するように、神木家には、笑顔の花が咲き誇った。

 

「よーし! じゃあ、みんなで乾杯だー!」


 そして、華が再び号令をかけると、蓮が母であるゆりの写真をテーブルの上に置き、侑斗がその前に置かれた小さなコップに、お酒をそそぐ。


 そして、全員に飲み物が行き渡ると、華と蓮がコップを掲げながら


「それでは、皆さん! お兄ちゃんとあかりさんの婚約と!」


「神木家、紺野家、橘家の更なる発展と幸福を願って!」


「「「カンパーイ!!」」」


 爽やかな掛け声にあわせて、グラスの音が軽やかな音を響かせる。


 それぞれに未来に、希望の種を芽吹かせながら──


 


 人生は、山あり谷あり。


 決して、平坦な道はなく、時には苦しいことも悲しいことも、起こってしまうでしょう。


 それでも、神木さんちは

 決して笑顔を忘れことなく


 明日も、来年も、20年後も

 賑やかで楽しい日常を送り続けることでしょう。


 温かくて

 優しい家族に囲まれながら



 ずっと、ずっと、永遠に──…




   *


 .・



 *

   

   *


     *


  .・




   *



 ・

    .



ここまで、お付き合いくださり、ありがとうございました。


これにて最終章「愛と泡沫のアヴニール」編・完結となります。


長い長い最終章でしたが、最後までお付き合いくださったこと、心より感謝いたします。


また、次回からはエピローグに入ります。


残り9話。飛鳥とあかりが付き合った後のお話が、もう少しだけ続きますので、最後までお付き合いくださると嬉しいです。


 雪桜


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― 新着の感想 ―
完結おめでとうございます 長い間の更新お疲れさまでした お話がとても面白くて更新が楽しみのひとつでした 残り9話とあと少しみたいですが頑張ってください!
2026/03/19 01:09 ナツシール
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