ドキドキ!お部屋に突入!ポロリもあるよ!
朝食を終えた後、アイリスは与えられた部屋で考え事をする。
それは鎧についてだ。
アルいわく、鎧は魂を定着させたリビングアーマーであるという。
だが、所詮はただの鎧、と思っていたら鎧はダークマター製と言う。
そもそも、ダークマターと言っても未解明物質の総称がダークマターなので具体的にどんな物質なのかはわからないそうだ。
だが、それがただの金属ではないことは明らかである。
強度だけを見てもそうだが、あのスノー・リリィを埋め尽くすほどの鎧の化物。あれは明らかに異常だ。金属が増殖するとかなんの冗談だと思う。
鎧は自身の体から削りだした鎧の化物を使って世界と戦うだろう。
一人が無数の群勢となる、単一の意志に統率されたそれは意志の疎通などを必要としない。まさに化物。
だが、鎧とて無敵ではないだろう。なにか弱点があるはずだ。それを探ることができるのは最も身近にいる自分に以外にはいないだろう。
「よし、考えるよりも行動しなきゃ!」
「そうだね!」
「ん?」
一人で部屋にいるはずだったのに他に人間の声が聞えた。後ろを振り返るとベッドになにかが潜り込んでいた。というか声からして鎧だった。鎧死ね。マジ死ね。
「鎧死ね、マジ死ね、砕けろ」
「感情のこもった言葉だ…」
「いいからでてこいこの変態金属生命体め!」
毛布をはぎ取る。そこには小さい鎧がいた。
「なんで縮んでるんだ…?」
「縮んだんじゃない。俺がのぞ…偵察用に作った奴だ」
「おまえいまのぞきって言おうとしたよな」
「馬鹿野郎!俺は覗くときはのぞきますよー!って叫ぶからのぞきじゃない!」
「私は罵倒され損じゃないか!?」
「それにしてもお前はおっぱいでかいな…」
「死ね!」
鎧をベッドから蹴り落とす。ドンガラガッシャンと鎧は口で言いながらバラバラになる。その後は全てのパーツから蜘蛛のような足が生えてきて移動、元通りの小さい鎧となる。
「さて、お前のベッドも堪能したし、匂いも堪能したし、深呼吸もしたしもう満足だ」
「もう、お前がただの変態にしか見えないんだが…」
化物じみた鎧と、ふざけている鎧。この鎧が同一の物と認識するにはずれが大き過ぎる。アイリスは思わず訊ねてしまう。
「なあ、いまのお前と戦ってる時のお前。本当のお前はどっちだ?」
どうせふざけてちゃんと答えないと思ったら、鎧は以外にもまともな答えを返してきた。
「人には多面性というものがある。それはどんな奴にもある。敵を蹴散らす勇猛な男でも、家庭では優しい父であろうとするだろう。逆にどんなに普段優しい者でも、いざ戦いとなったら愛する人を護る為に命をかけて闘う戦士となる。それが果たしてどちらが本当の姿か、答えはどちらも本物だ」
「どちらもお前で偽物もないということか」
「そう、おまえの左右の胸、どちらも本物のように、俺のふざけている時も闘っている時の非道さも俺だといことだ」
「胸のくだりで台無しだよ!」
折角いい話で締まりそうだったのにもう台無しだった。
だらけた雰囲気を吹き飛ばす為に窓を開ける。緑の香りのする風はふざけた雰囲気を少しだけかき消してくれた。
アイリスが一息ついた時、鎧が口を開いた。口が何処にあるのか知らないが。(食事はとっていたが虚空に消えていた。謎である)
「そうだ、お前の名前を聞いていなかったな」
「誰がお前に教えるか」
「分かった、おっぱい姫だな。アルにもそう教えておく」
「アイリスだ!」
不名誉な名前で呼ばれるのだけは嫌だ。アルにそんなことを教えられたら怨嗟の込められた声で呼ばれそうだ。
「アイリス、お前はアルの名前を世界に知らしめるその時まで人質だ。覚えておけ」
「ふん、その前に助けが来る」
「あいつかー、なんか俺と戦う前にお前に求婚するって言ってたからなあ…」
「え!?やだ!」
「お前その反応は酷いな」
「え?あ、いや、そういう対象としてみてたわけじゃないし!」
「あー、腕は立つし、有能だけど男としては嫌いなタイプか…」
鎧はテリウスのことを少し不憫に思った。
「それは置いといて…」
「置いとかれるのか…ますます不憫だ…」
「ほっとけ!…ゴホン!それで、お前の名前は?」
「ん?」
「お前の名前を聞いてない。いつまでも鎧じゃ呼びにくいだろう?」
「ああ、俺の名前か…」
そうすると鎧の雰囲気が少し変わる。
それは哀愁というか、寂しそうというか。なぜそう思ったのかは分からないが、アイリスはそんな風に感じ取れた。
鎧は窓の外を、無貌の顔で、瞳のない空虚な穴で見つめる。どれだけそうしていただろうか、アイリスは鎧に急かすこともせずただ待っていた。
「Zzz…」
「寝てるのか!!」
「え?寝てないよ?寝てない寝てない。もうすぐ肉が食べれそうだったのに肉は何処に消えたか知らない?」
「寝ぼけてるじゃないか!」
アイリスは誤魔化されたのだろうなと分かった。だが、あえておふざけに乗ったのは鎧にも鎧なりになにかあるのだろうと感じたからだ。
この友人の仇であり、世界の敵である化物にも何かあったのだ。だが、敵であろうと、それは無闇に踏み込んではいけない領域にあるものだ。アイリスはそう考えた。
「ゼノン」
だから、鎧が答えてくれるとは思わなかったのだ。
「え?」
「ゼノンだ」
そんな真面目な話をしていたころ。
「む!どこかで私を差し置いてヒロインの座を奪おうとしている気配がしている!」
「そんなこと言ってないでキュウリ食べなよ」
「ぐぬぬ…」
アル(メインヒロイン笑)は嫌いなキュウリを食べるまでアスタちゃんに見張られていたのだった。




