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佐倉なつき

佐倉なつき。旧姓、○○なつき。


大学進学で上京して出会った佐倉陽介と恋に落ちて、3年の交際期間を経て結婚し、娘の陽菜を設けた。


順風満帆な人生に陰りが刺したのは、義母の静枝の言葉だった。


曰く、産まれた娘は息子に似ていない、なつきが浮気をしたのではないか、と。


静枝に気に入られていない事は察していたが、「いや、どう見てもお兄ちゃん似じゃん」と言う義妹の言葉も無視して、静枝がDNA検査を強行した事で、なつきは、「嗚呼、この人と仲良くするのは無理だな」と思った。


結果は、99.9%の親子関係の証明。


それでも静枝は難癖を付けて、陽菜を孫だと認める事はしなかった。


同居でないだけマシだと割り切って、もしもに備えて在宅ワークが出来る環境を整えた。


陽介は母親である静枝に流されやすい部分があって、陽菜のミルク代やオムツ代、その他陽菜に掛かる費用の全てを出し渋っていた。


複数の検査機関で、そのどれもが陽介と陽菜の親子関係を証明したにも関わらず。


静枝は、陽介の幼馴染でシングルマザーだと言う理沙には惜しみ無く援助を行っていた。


理沙の子は陽菜より3ヶ月早く産まれた男の子だった。


静枝は男の子の孫が欲しかったのだろう。


ただ、静枝の理沙とその息子大輔への入れ込み様は異常だと思った。まるで、理沙の息子が自分の孫だと言わんばかりだった。


娘の現状を聞いた両親は、そんな義両親と煮え切らない男の傍にいても良い影響はない、いつでも帰って来なさい、と言ってくれたが、確信が持てるまでは、と考えた。


陽菜が6歳の頃、静枝は「陽介と別れて欲しいの」と切り出した。


なつきはそれをあっさりと了承した。


「それじゃあ、陽菜は私が連れて行きますね」


陽介だけが、驚いた表情をしていた。自分がとうの昔になつきから幻滅されていた事に微塵も気が付いていない様子だった。


静枝は「えぇ、そうして頂戴」と笑顔で言った。


なつきは荷物を纏めて、何時でも故郷に帰る事が出来る様に支度を整えた。


離婚や親権、移転、転校の手続きが全て終わってから、なつきは陽菜を連れて懐かしい故郷に帰る事になった。


「お父さんとバイバイする事になるけど、陽菜は平気?」


そう聞くと、「お父さん、大輔君の事しか褒めない。きっと、わたしの事キライなの。だから、バイバイしても大丈夫」と言った。


迎えに来た両親は少しだけ年老いていた。


それから故郷の山深い村に帰り、平穏な日常を過ごしていた。


○○家と言えば祖父母の代まで拝み屋だった為に○○家に関われば呪われる、なんて噂が村にはあった。


(意味も無く呪ったりなんかしないのに)


そう思いながら、愛娘の右手を見る。


愛娘は拝み屋としての素質を受け継いだ様で、どうやらなつきの結婚前後に亡くなった祖父母、それよりも前の世代の先祖の霊も視えているらしい。


何(・)の(・)躊(・)躇(・)も(・)な(・)く(・)自(・)分(・)で(・)小(・)指(・)を(・)切(・)り(・)落(・)と(・)し(・)、何年か前に陽介が買った箱にソレをしまって天井に隠した時は肝を冷やした。


「何であんな事をしたの?」


「おじいちゃんが、もう直ぐあの家に大輔君とおばさんが住む様になるからって」


効果が出るのはもっと先だって、と言った次の瞬間には、流行りの少女アニメの玩具をねだって笑うので良く分かってはいないのだろう。


自分達がいなくなれば、理沙とその息子が住む事になるのだろうな、とは何となく分かってはいた。

ただ、愛娘が無自覚で良かれと思って身体を傷付けてまで呪物を造るとは想像していなかった。


両親は、「さすが○○家の子やねぇ」と良く分かっていない様子の陽菜を褒めていた。


―――元義実家から、「帰って来て欲しい」と連絡が入ったのは陽菜が夏休みに入る頃の事だった。

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