おとなになったら
さくらちゃんはおとなになったら女児向けアニメの主人公みたいに、困っている人を助ける人になりたい、って言った。
僕は、たぶん家の仕事の手伝いをするんだろうなあって言った。
おじいちゃんもおばあちゃんも、そろそろ田んぼの手入れをするの大変そうだなあって思うから、中学生になったら今よりもっと手伝いを頑張ろうかな、と思っている。
「――くんは、偉いねえ」
僕も、さくらちゃんくらいの時は、日曜日の朝のヒーローみたいになりたかったけど。僕は誰かを助ける為に行動が出来るタイプじゃない。
そういうのは、従兄弟の潤也くんみたいな人じゃないと無理だ。
「おばさんは、――くんは立派なヒーローだと思うけどね」
川遊びをしている僕達のところに、さくらちゃんのお母さんが来てそう言った。
「陽菜の為に、一緒に登下校してくれているでしょう?ウチが村で良く思われていない事を承知の上で。クラスの皆もそう」
噂に流されない事も、立派なヒーローの条件よ、とさくらちゃんのお母さんは言った。
「おばさんは、子供の時は何になりたかったん?」
「おばあちゃんみたいな、皆に頼りにされる人、かな。おばさんには、家の仕事を継ぐ才能は無かったから、家業以外で村の為に出来る事は何かないかなと思って、いっぱい勉強したのよ」
さくらちゃんのお母さんは都会の大学で教育と民俗学についてたくさん勉強したのだと言った。
ほんとうなら、さくらちゃんのお父さんも一緒に村に戻って来て生活するつもりだったけれど、色々あってさくらちゃんと2人で村に来たんだと言っていた。
「さくらちゃんは、お父さんに会いたかったりせんの?寂しくないん?」
さくらちゃんはふるふると首を横に振って、「此処には、わたしの事をちゃんと見てくれるおじいちゃん達も、お母さんも友達もいっぱいいるから。だから、お父さんが遠くに住んでいてもさみしくない」と言った。
言いながら、さくらちゃんは右手のミトンを触っている。
右手のミトンを触っている時のさくらちゃんは小学一年生とは思えない、―――オトナのコトバで言うところの、色っぽさ、とか、艶めかしさ、とか、…そう言うものがある様な気がする。
右手のミトンは、夏らしく水色の生地にスイカ柄になっている。
きっと、オトナが言う様な恐ろしさとさくらちゃんは無縁なんだろうな、と僕は思っている。




