社員旅行の打診と、広がる企み
定時を知らせるチャイムが鳴ると同時に、社長から「佐藤くん、ちょっといいか?」と社長室に呼び出された。
(仕事初日から一体なんだろう……)と首をかしげながら向かうと、社長はデスクに肘をついて切り出した。
「今年もサークルで色々やるんだろうけどさ。実はね、昨年の売上が思った以上に伸びてねぇ」
そう言って社長はニンマリと笑った。
「でだ、これを社員に還元したいから『社員旅行』を企画したいんだよ。年度内に使わないと会計的にもアレだしさ。……で、何が言いたいか分かるな? 佐藤くん、計画立てておいて」
「えっ、社員旅行ですか!?」
唐突な大役に目を丸くしつつも、悪い話ではない。「何か行き先や内容の候補はありますか?」と尋ねると、社長はあっけらかんと言い放った。
「ノープランだよ!」
(今年度もあと3ヶ月を切ってるのにノープランかよ!)と心の中でツッコミを入れつつも、せっかくの還元企画だ。腹を括るしかない。
「分かりました。明日から社内で『調整さん』を回して候補日を募りますね。通常業務を止めるわけにはいかないので、土日の週末日程をベースに調整します」
「助かるよ! あ、ちなみに家族の同伴は奥さんとお子さんまでOKね。昨年のイベントで街での会社の知名度が上がって、新規の注文が増えたお陰なんだよなぁ」
そう笑う社長だったが、最後にぽろりと本音を漏らした。
「それにさ……佐藤くんに任せれば、旅先でも絶対に何か面白いイベントとか企画してくれるだろ?」
「あはは、見透かされてますね。じゃあ帰り際、サークルメンバーのところにも話を持っていってみます」
会社を出て鈴木さんの喫茶店に立ち寄ると、店内にはサークルメンバーが奇跡的に全員揃っており、「次はどんなモノづくりやイベントをやろうか」と熱心に相談しているところだった。
そこへ佐藤が「実は社長から社員旅行の相談を受けまして……」と切り出すと、店内が一瞬静まり返った後、一気に歓声が上がった。
「マジで!? 社員旅行に俺たちも乗っかっていいの!?」
「これは最高のきっかけだなぁ! 佐藤くん、社長に『ありがたく参加させていただきます!』って伝えておいてくれ!」
渡辺さんも鈴木さんも目を輝かせ、そこからは「どこへ行くか」「旅先で何を作るか・何をするか」の大議論大会が始まった。
温泉街で工芸体験をするか、ちょっと遠出して名物の食文化を学ぶか、はたまた現地で何か面白いことを企てるか——アイデアは尽きることなく飛び交い、喫茶店の夜は賑やかに更けていくのだった。




