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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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仕事始めと、街に広がる小さな変化

1月6日、今年最初の出勤日を迎えた。

サークルメンバーや社員たちとは2日の餅つきでも顔を合わせているが、初出勤の朝ということで全員が朝礼に集まった。社長が前に立ち、年頭の挨拶を述べる。

「あけましておめでとう! 今年も本業の仕事はもちろんしっかりと頑張りつつ、イベントなんかで地域のみんなと楽しく過ごせる一年にしたいね」

山口製作所には、やるべき仕事はきっちりとこなし、遊ぶ時やイベントの時は一気に頭を切り替えて全力で楽しむという最高の風土が定着していた。

「ただまあ……AIをどう活用していくかは相変わらず悩みどころだな。社会の流れに取り残されないよう、適度な距離感で付き合っていくしかないかねぇ」

社長の相変わらずの呟きに社員一同からドッと笑いが起き、和やかな雰囲気の中で今年の業務がスタートした。

佐藤の担当は事務職だが、3月の年度末に向けて計画的に処理しなければならない案件が山積みだった。さっそく同僚たちと会議室に集まり、業務の優先順位や役割分担、進め方の方針をテキパキと決めていく。遊ぶ時はとことん遊び、仕事の時はプロとして完璧にこなす——自画自賛になるが、本当に素晴らしいチームだと佐藤は誇らしく感じていた。

やがてお昼休みになり、昼食を買いにコンビニへ向かった。

その道中、近所の定食屋の前に「お弁当始めました」という新しいノボリがはためいているのが目に入った。気になって店内を覗いてみると、手作りの美味しそうなお弁当がずらりと並んでいる。

「いらっしゃい! 実はね、佐藤さんたちがやってるイベントの活気を見てたら『自分もやりたかったことに挑戦してみよう!』って刺激を受けちゃってね。今日からテイクアウトを始めてみたんだよ」

店主が嬉しそうに語ってくれた。自分たちの活動が、こうして街の人々の背中を押すきっかけになっていたことを知り、佐藤の胸は熱くなった。

並んでいるメニューの中に大好物の「麻婆豆腐弁当」を見つけ、即決で購入した。

ウキウキとした足取りで会社へ戻り、自分のデスクでパカリとフタを開ける。一口頬張ると、花椒の香りと深いコクが口いっぱいに広がり、思わず目を見張った。ピリリと辛い大人向けの本格的な味付けで、文句なしにリピート確定の美味しさだった。

「おっ佐藤くん、それコンビニの弁当じゃないな? 旨そうじゃないか」

一人で美味しさに舌鼓を打っていると、通りかかった社長が興味津々で覗き込んできた。

購入した定食屋の経緯とお弁当の美味しさを説明すると、社長は「へぇ! あの定食屋さんがねぇ。よし、今度うちの家族の分もまとめて買いに行ってみよう!」と楽しそうに目を輝かせた。

自分たちの活動がきっかけとなり、街の中に新しい変化の芽が芽生えていく。

大きな都市のような派手さはないけれど、こうした温かい変化を間近で実感できることが、今の佐藤にとって何より誇らしく、嬉しい出来事だった。

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