残された片付けと、三日目の乾杯
1月3日。朝9時過ぎに目を覚ますと、猛烈な胃のムカムカ感に襲われた。昨夜寝る前に胃薬を飲んだはずなのだが、完全に飲み過ぎの二日酔いだ。
重い足取りで居間へ向かうと、両親は息子の姿を一目見るなりすべてを察したようで、母親が何も言わずに温かくあっさりとしたお吸い物を出してくれた。
(うぅ……身体に染み渡る……)
お出しの優しさに救われつつ、昼頃に会社で集合予定だったことを思い出す。もう一度胃薬を服用し、ゆっくりと歯磨きや着替えを済ませて準備を整えた。出がけに両親が「手伝いに行こうか?」と気遣ってくれたが、今日は大きな備品の洗い物と商工会への返却がメインだ。それに会社の若手社員も手伝いに来ることになっている。
「今日は大物の返却が中心だし大丈夫。二人はゆっくり正月を楽しんでてよ」
感謝を伝えて家を出て、12時少し前に会社へ到着すると、すでに若手社員数人と商工会の人々が待っていた。その後、サークルメンバーたちも徐々に集まってきたが、見事に全員がどんよりとした二日酔い顔だ。
「佐藤くん……おはよう……」
「みんな、休みなのに集まってくれてありがとう! 無理のないペースでやろう」
別に仕事でもないのに駆けつけてくれた全員に感謝を伝え、さっそく片付け作業を開始した。
そこでふと、佐藤はある違和感に気づく。
(……あれ? 昨日の激しい餅つきのわりに、筋肉痛になってないぞ?)
一瞬喜びかけたものの、すぐにひとつの恐ろしい可能性が頭をよぎった。
(あ、これ……歳を取って運動の翌々日に来るやつだ。明日が怖すぎる……)
未来の激痛に怯えつつも手際よく作業を進め、テーブルやパイプ椅子を畳み、特大の鍋や臼、杵などを綺麗に洗って商工会のトラックへ積み込んでいく。15時を回る頃には、広大な敷地は何事もなかったかのようにすっかり片付いていた。
その頃になると、二日酔い組の体内からアルコールが抜け始め、みんなの動きが見違えるように軽くなってきた。
「なんか……急にお腹が空いて元気になってきたな」
「こうなったら、片付け完了の打ち上げでもやるか!」
誰かが言い出した提案に、向かい酒は身体に良くないと分かりつつも、佐藤は思わず大賛成した。
「じゃあ、17時過ぎに街の焼き鳥屋へ行こう!」
実家の両親へ「今夜も遅くなる」と電話を入れ、時間まで鈴木さんの喫茶店で一休みすることにした。
「いやぁ、年末の蕎麦打ちから昨日の餅つきまで、本当に盛り上がったね」
「佐久間さんも手伝ってくれて、佐藤くんもいい正月になったろ?」
たわいもない思い出話や冷やかしに花を咲かせながらゆったりとした時間を過ごし、佐藤たちは開店時間に合わせて、香ばしい煙の匂いが漂う街の焼き鳥屋へと向かうのだった。




