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僕が逃げた利器と得た安住  作者: 藤一


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旅行代理店と、星野リゾートへの期待

週末、佐藤はサークルの面々と待ち合わせ、街の旅行代理店へと向かった。大人数ということもあり、店内奥にある団体専用窓口へ案内される。

「ご相談ですね。全体でどれくらいの人数になりそうでしょうか?」

「会社の社員が約60人で、ご家族やサークルの仲間を合わせると、大人が約100人、子どもが30人ほどになります」

佐藤が人数を伝えると、カウンターの担当者は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにプロの顔に戻って手際よくPCを操作し始めた。

社長からは「売上還元だから予算はある程度出せる。いいところを探してきてくれ」と言われているため、費用の心配はあまりない。問題は行き先とプランだ。

「一泊二日の日程で、東北の冬というのを考えると……やっぱり海より山ですかね。冬の海も風情がありますけど、普通にめちゃくちゃ寒いですし」

「そうだねぇ。ただ山と言っても、スキーみたいな雪山スポーツをメインにするか、旅館やホテルの中でカラオケなんかのアクティビティを楽しむか、迷うところだな」

サークルメンバーと意見を交わしながら条件を絞り込んでいく。ただし、「温泉があること」と「子どもたちも喜ぶバイキング形式の食事」の2点だけは全員一致で確定した。

代理店の店員さんが「大人数の団体様で今から予約可能、かつご要望に沿えるエリアですと、山形、福島、宮城、新潟、栃木、群馬あたりがおすすめです」と、テキパキと空き状況を調べてくれる。非常に頼もしい対応だ。

新潟の『ホテルグリーンプラザ』や福島の『リステル猪苗代』といった魅力的な大型リゾートホテルが候補に挙がる中、店員さんの画面にある名前が浮かび上がった。

「……あ、ここ空いてますよ。『星野リゾート 磐梯山温泉ホテル』です」

「星野リゾート!?」

一度は泊まってみたい憧れのブランドだ。佐藤は思わず目を輝かせ、「みんな、ここどうですか?」とサークルメンバーに相談してみた。

「すごく魅力的だけど……それだとスキーメインになっちゃわないか? スキーをやらない層や小さな子どもたちが退屈しないかな」

渡辺さんが少し懸念を示した瞬間、店員さんがすかさずフォローを入れてくれた。

「それでしたらご安心ください! 周辺には会津若松の城下町散策や鶴ヶ城、猪苗代湖の遊覧船など観光スポットが豊富です。さらにホテル内でも、夜に焚き火を囲みながらお酒や温かいスープを楽しめるイベントなどが用意されていますよ」

その説明を聞き、全員の顔がパッと明るくなった。反対意見が出なかったため、佐藤は具体的に話を進めた。

「じゃあ、2月下旬から3月中旬までの土日、一泊二日で予約を入れたいです」

「かしこまりました。……あ、3月最初の土日でしたら、ちょうどご希望の人数で枠が押さえられます!」

見事なタイミングだった。佐藤は概算の見積書を作成してもらい、「月曜日に社内で確認して正式回答します」と告げて代理店を後にした。

喫茶店へと戻る道中、すでにみんなの頭の中は旅の構想でいっぱいだった。

「温泉とバイキングを軸にして、スキーを滑りたいグループと、会津若松の観光に行くグループで自由に分かれられるようにしようか!」

「夜の焚き火スペースで、サークルらしく何か一つ面白い企画を持ち込んでも楽しそうだな」

自由度が高く、大人から子どもまで全員が満足できるプランが見えてきた。

(これは……過去最高に分厚くてワクワクする『旅のしおり』ができそうだな!)

膨らんでいくアイデアに胸を躍らせながら、佐藤たちは企み顔で喫茶店のドアを押し開けるのだった。

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