膨らむ旅の構想と、贅沢な悩み
週明けの月曜日。出社してすぐ、佐藤は社長室へと向かい、週末に旅行代理店で見つけてきた『星野リゾート 磐梯山温泉ホテル』のプランと見積書を提示した。
「おお、星野リゾートか! 前から一度行ってみたかったんだよ。よくあの大人数で枠が取れたなぁ。予算も全然問題ないよ。よし、確定で代理店に連絡しておいてくれ!」
社長のお墨付きをもらい、午前10時の開店と同時に代理店へ電話を入れた。
「先日の件、3月最初の土日で確定でお願いします!」
無事に手配を完了させ、社内チャットや朝の連絡で「3月頭に星野リゾートで社員旅行が決定しました!」と伝えると、社内は「マジで!?」「最高すぎる!」と大きな歓声に包まれた。
「佐藤くん、現地で何をするかはもう考えてくれてるの?」
通りかかった同僚に聞かれ、「今サークルのみんなと『旅のしおり』を練ってるところだから楽しみに待ってて!」と答える。すると、そこから社員たちの「行きたい場所」に関する雑談が一気に花を開いた。
「会津ならハワイアンズはちょっと遠いけど、温水プールに入るならリステル猪苗代かラビスパ裏磐梯あたりが良いんじゃない?」
「磐梯山の噴火記念館も社会科見学っぽくて面白そうだな」
「そういえば新千円札で話題の野口英世記念館もあるし、近くのビール園や世界ガラス館も捨てがたいよね!」
次々と上がってくる魅力的なスポットの数々に、佐藤は心の中で(あれ……これ、思っていた以上に候補が多すぎるぞ……?)と焦り始めた。
一泊二日の限られた時間でこれらを全部詰め込むのはどう考えても不可能だ。スケジュール調整をしっかりやらないと、後から「あそこに行きたかったのに!」という不満が出かねない。
(まあ、どうしても行きたい特定の場所がある人は、自由行動の時間に個人で行ってもらうのもアリか……)
そう高を括ってみたものの、自分の中でも行ってみたい場所が多すぎて収拾がつかなくなりつつあった。
あらかじめ希望の選択肢を書き出して社内アンケートを取るべきか、それともサークルらしく趣向を凝らした決定版の「しおり」をドカンと発表してサプライズ感を味わってもらうか。
(これは今週末、鈴木さんたちとじっくり知恵を絞らないとダメだな……)
嬉しい悲鳴を上げながら初日の仕事を終え、佐藤は楽しさと頭の痛さが入り混じった心地よい疲労感とともに、実家への帰路に就くのだった。




