プランの精査と、バス旅行のスケジューリング
週末、鈴木さんの喫茶店に顔を出すと、テーブルの上には『るるぶ』や『まっぷる』といった旅行情報誌がずらりと並べられていた。
ページをパラパラと捲りながら、渡辺さんや小林さんたちと掲載されているモデルコースを眺めてみる。どれも王道の観光スポットを効率よく巡る良質なプランだが、どこか既視感があった。
「うーん……こういうのって、確かに無難で間違いはないんだけどさ。そのままなぞるだけじゃ、俺たちサークルに旅行の企画が任された意味がないよな」
「そうなんだよね。せっかくだから、みんなの記憶に残る一工夫が欲しいところだ」
まずは選択肢を整理するため、実現不可能なものの洗い出しから始めた。冬の磐梯エリアということもあり、登山口が閉鎖されている山への登山や、雪で閉鎖される観光ラインなどは真っ先に除外する。
続いて「冬ならでは」のアクティビティを模索する中で、高橋さんが「スキーやスノボ以外だと、桧原湖のワカサギ釣りなんてどうだ?」と提案してくれた。
「ワカサギ釣り! 面白そうだけど、素人の大人数で一斉にやるのはハードルが高いかなぁ……でも、やりたい人向けのオプショナルツアー候補としてはアリかも」
そんな議論を重ねる中で、佐藤はある基本的な疑問に思い当たった。
(……待てよ? 今回の行程って、朝何時にどこを出発するスケジュールなんだろう?)
移動手段が貸切バスになるため、集合時間や現地での滞在時間を正確に把握しておかないと、具体的なタイムスケジュールが組めない。
佐藤はすぐに旅行代理店の担当者へ電話をかけた。
「あ、佐藤です。確認なんですが、当日のバスの出発・到着時間ってどれくらいで調整可能ですか?」
『お電話ありがとうございます! 早い出発でしたら朝8時にこちらを出発して、10時過ぎには現地(磐梯エリア)に到着できますよ。帰りも遅めの設定にすれば、現地を17時に出て19時過ぎに帰着というスケジュールが可能です』
「なるほど、ありがとうございます!」
電話を切ってメンバーに伝えると、「思っていたより現地での時間がたっぷりあるな!」と歓声が上がった。だが同時に、新たな課題も浮上する。
「移動時間で往復4時間か。となると……バスの中で何をして過ごすかも考えなきゃな。ただDVD流して終わりじゃもったいない」
「ビンゴ大会とか、会社とサークルにちなんだクイズ大会とかやるか!」
次々とアイデアが溢れ出し、気づけば時計の針は16時を回っていた。とても今日一日で全てを決め切れる量ではない。
「よし、今日ここで決めるのは無理そうだから、明日もう一度集まって煮詰めよう」
佐藤の提案にみんなも頷き、一旦企画会議を切り上げた。
マスターの鈴木さんに温かいコーヒーを注文し、その後は「最近の街の様子」や「春からのサークル活動」について、のんびりと雑談を交わして心地よい時間を過ごした。
外がすっかり暗くなった19時過ぎ、佐藤は明日への構想を頭の中で巡らせながら、実家へと足早に帰宅するのだった。




