unexpectedな出会いと、温かな閉幕
13時半を回るとピークもようやく落ち着き、サークルメンバーで交代で遅めの昼食をとることにした。
佐藤は敷地内のキッチンカーや出店を巡り、香ばしい匂いを漂わせる焼き鳥と肉巻きおにぎり、そしてキンキンに冷えた缶ビールを買い求めた。青空の下で食べ歩きを楽しんでいると、ふいに後ろから「佐藤さんですか?」と声をかけられた。
振り返ると、そこには昨夜叔母から写真を見せられたあの女性が立っていた。写真で見た印象よりもずっと落ち着いた雰囲気を纏っており、佐藤は思わず目を丸くした。
「あ……はい! あの、叔母がしつこく誘ってしまって、本当にすみません……」
申し訳なさからとっさに頭を下げた佐藤に、彼女はくすりと微笑んだ。
「いえ、叔母様に無理やり来させられたわけじゃないんです。佐藤さんたちが街で色々と面白いイベントをやっているとお聞きして、すごく楽しそうだなって思って自分から来ちゃいました」
真っ直ぐな言葉に少し照れつつも、「ありがとうございます。あ、すみません! そろそろ店番の交代時間なので、また後で!」と挨拶を交わし、佐藤は大慌てで蕎麦ブースへ戻った。
サークルメンバーと交代して佐藤が再び蕎麦を打ち始めると、先ほどの女性がトコトコとブースまでやってきて、「近くで見学してもいいですか?」と尋ねてきた。
「あ、どうぞ! 打ち立ての二八蕎麦なんですけどね……」
佐藤は照れくささを隠しながら、手順や打ち方のコツを説明しつつ手際よく生地を伸ばしていった。すると彼女は説明を熱心に聞くだけでなく、気がつけば配膳や列の整理といった店番まで自然な手つきで手伝い始めてくれたのだった。
「すみません、手伝わせてしまって……助かります!」
「いえ! すごく楽しいです!」
そうこうしているうちに14時半を回り、予定していた一芸披露会の演目がすべて終了した。しかし、まだ閉会まで少し時間があったため、市役所の担当者がマイクを握って「飛び入り参加者」を緊急募集し始めた。
申し込みが間に合わなかった地元のフラダンスサークルや、即席の漫才コンビなどが次々と登壇し、会場のボルテージは15時の終了時刻まで上がりっぱなしとなった。
15時、大きな拍手の中で市役所の担当者が閉会の挨拶に立った。
「本日は予想を超える大盛況となり、本当にありがとうございました! 来年もまたこの街で楽しいことを企画しますのでご期待ください! それでは最後に、会場を提供してくださった山口製作所の社長から一言いただきます!」
突然マイクを向けられた社長は、少し照れくさそうに頭をかきながらマイクの前に立った。
「えー……自分の会社の敷地で、こんなにたくさんの笑顔が見られるなんて夢にも思いませんでした。来てくれた皆さん、本当にありがとう!……あ、それと! 最後にひとつだけ! 片付けを少し手伝っていってくれると、とっても助かります!」
社長のチャーミングなお願いに会場からはどっと笑いが起こり、来場者や市役所、商工会、そしてサークルのメンバーが一緒になって手際よく撤収作業を始めた。
全員で協力したおかげで17時にはすっかり片付き、元の静かな敷地へと戻った。
「よし! 無事に終わったな!」
「佐藤くん、マスターのお店に戻って一休みしようか!」
達成感に満ちた笑顔で顔を見合わせ、佐藤たちは鈴木さんの喫茶店へと向かうのだった。




