開門と、熱気に包まれる会場
12月30日、イベント当日の朝。佐藤が会場の鍵を開けるために会社へ向かうと、門の前にはすでにサークルメンバーの鈴木さん(喫茶店のマスター)、渡辺さん、小林さん、高橋さんをはじめ、市役所や商工会のみんなが勢揃いで待っていた。
別に遅刻したわけではないのだが、その熱量に圧倒されて大急ぎで門扉を開けた。
開場予定の11時まではまだ十分時間がある。さっそく大鍋でお湯を沸かし、蕎麦打ちの準備に取りかかった。並行して出汁から丁寧に蕎麦つゆを作り、ネギなどの薬味を刻む作業を手分けして進めていく。途中で「あ、七味唐辛子忘れた!」と焦って近くのスーパーへダッシュする一幕もあったが、準備は概ね順調そのものだった。
11時が近づき、様子の確認がてら正門へ向かった佐藤は、思わず目を丸くした。なんと、門の外にはすでに60人ほどの行列ができていたのだ。
理由を聞いてみると、「秋の会社見学会の時に来るのが遅くて入れなかったから、今日こそはと思って」「前回はお土産が売り切れてたから早めに来たのよ」とのこと。期待の高さが伺える。
11時ちょうど、大きな歓声とともに開門。
来場客が一斉になだれ込み、キッチンカーや各飲食ブースの前にはあっという間に長い列が伸びていった。
同時に、12時スタート予定の「一芸披露会」の参加受付も始まった。飛び入り参加がメインかと思いきや、地元出身のミュージシャンや本格的なキッズダンスチームなど本格的な参加者も多く、見に行くと1組5分・全20組の枠がすでにほぼ埋まりかけていた。市役所の発信力と企画力には脱帽するしかない。
そこへ、市役所の担当者がマイクを手にしてステージに上がった。
「みなさん、本日はお越しいただきありがとうございます! 主催・協力をいただいた山口製作所さん、商工会さんへの感謝を申し上げます……」
最初は定型的な挨拶だったものの、後半になるにつれて「今日は今年一年の苦労を全部吹き飛ばして、みんなで思いっきり楽しみましょうー!」とノリノリのトークを繰り広げ、会場からは温かい手拍子と笑いが起こった。来場客たちは思い思いに蕎麦や天ぷら、食べ物を買い求め、敷地内に用意されたパイプ椅子やブルーシートに腰掛けて美味しそうに頬張り始めている。
そんな賑わいの中、昨日の準備段階では見かけなかった鮮やかなテントが佐藤の目に留まった。
看板を見ると、なんと「チョコバナナ」。
売り場を覗くと、エプロン姿の山口製作所の同僚が笑顔で手を振っていた。どうやら「自分も手伝う側じゃなくて、出店を売る側で参加したかった!」と個人的に準備して乗り込んできたらしい。
職場の仲間も、地域の人々も、みんながこの場所を全力で楽しもうとしている。
波乱の予感はありつつも、最高のイベントの幕が上がったのだった。




